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4世代目でも相変わらずの硬派 MINI「ジョンクーパーワークス」

21世紀の幕開けとともに誕生したBMWプロデュースのMINI。2001年のデビューから20年以上を経て、2023年に4世代目へと進化した。もともとクラシック・ミニ時代から「クーパー」や「カントリーマン」といった派生モデルが存在していたが、現代のMINIはその幅をさらに広げ、ファミリーとしての存在感を増している。なかでも“JCW”のイニシャルで知られる「ジョンクーパーワークス」は、最も熱い魂を宿すモデルだ。

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JCWとは、’60年代にモンテカルロラリーを制した「クーパーS」に連なる、レーシングスピリットの継承者。BMWのMモデル以上に“硬派”と呼びたくなる、走りにこだわった一台である。初代JCWのドライブフィールを一言で表すなら「ゴーカート」。その軽快さとダイレクトな操作感が、世界中のファンを虜にしてきた。

そして4世代目は、これまでで最も多彩なラインアップとなった。ガソリンモデルでは3ドアハッチバックに加えてコンバーチブルが設定され、さらにEV仕様の「ジョンクーパーワークスE」、クロスオーバーの「ジョンクーパーワークス エースマンE」も登場している。ついにJCWにもBEVが──。そんな時代の流れに驚きを覚えつつも、ガソリンモデルがまだ現役であることに、むしろ安堵すら覚える。

今回試乗したのは、3ドアハッチバックのガソリン仕様。濃いめのボディカラーに赤いルーフ。ひと目でJCWとわかるその姿に近づくと、40扁平のタイヤや専用リアディフューザーが静かに闘志を放っている。

ダッシュ中央のスタートスイッチを回すと、ブフォンッという乾いたサウンドとともに2.0リッター、直列4気筒ターボが目を覚ます。アクセルをわずかに踏み込むだけで、エンジンは軽やかに回転を上げ、低速からターボのトルクがしっかりと立ち上がる。その瞬間、足まわりが路面を掴み、ハンドルから路面の情報が細やかに伝わってくる。

これまでのJCWといえば“信じられないほどのアシの硬さ”で知られていたが、先代からはその硬さの質が変わった。ボディ剛性が向上したことで、単なるガチガチの乗り味ではなく、足とボディが一体となって路面をいなすような感覚へと進化している。硬さは健在だが、不快ではない。むしろ、芯の通ったテンションが心地よい。

ギアボックスは8段ATから7速DCTへと変更され、変速のスピードも一段と鋭くなった。パドルを引いた瞬間にギアが切り替わり、エンジンの回転とリズムがピタリと合う。ワインディングでは、思わずもう一度踏み込みたくなる。タイトなコーナーに飛び込んでも、フロントが正確にノーズを向け、リアが自然に追従してくる。231psという出力は過剰ではないが、限界の手前でクルマを自在に操れる楽しさがある。まさに“意のままに動くゴーカート”。

実用性を求める人には“JCW一台で日常すべてを賄うのは厳しい”と思われるかもしれない。しかし、一度ステアリングを握ればその考えは変わるはずだ。高速の帰路ではACC(アダプティブクルーズコントロール)が滑らかに追従。BMW譲りの電子制御が、硬派な足まわりと見事に調和している。

見た目はMINIらしいチャーミングさを残しながらも、走りの芯はやはり硬派そのもの。4世代目は、快適性と俊敏さを高い次元で両立させた“最も完成度の高いゴーカート”と言えるだろう。もしかすると、これが最後のガソリンモデルになるかもしれない。ならば、そのハンドルを握り、エンジンの鼓動と路面の感触を五感で楽しめるうちに体験しておきたい。

MINI ジョンクーパーワークス  車両本体価格: 536万円(税込)

    • ボディサイズ | 全長 3880 X 全幅 1745 X 全高 1455 mm
    • ホイールベース | 2495 mm
    • 排気量 | 1998 cc
    • エンジン | 直列4気筒 ターボ(ガソリン)
    • 最高出力 | 231 PS(170 kW)
    • 最高トルク | 380 N・m
    • トランスミッション | 7速 DCT

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Text : Takuo Yoshida

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