BMWの新型「5シリーズ」が登場すると、ひときわ注目を浴びるのはそのハイパフォーマンスモデル「M5」ではないだろうか。8世代目となる現行5シリーズのトピックは、BMWが掲げる「テクノロジー・オープンネス」を象徴する多様なパワートレインだった。エントリーモデルの「523i」は2リッター直4ガソリンターボ、「523d」はそのディーゼルで、いずれもMHEV(マイルドハイブリッド)。そして最上級の「i5」はBEV(電気自動車)という構成だ。
当然、M5のパワートレインにも期待が寄せられた中で、その答えは4.4リッター、V8ガソリンツインターボにプラグインハイブリッド(PHEV)を組み合わせた構成だった。エンジン単体での最高出力は585ps、さらにモーターも197psを発揮し、システム合計で727ps、最大トルクは1000N・mに達する。
現行5シリーズのボディサイドはすっきりしているが、新型M5は前後フェンダーが拡幅され、筋肉質なフォルムは一目でそれとわかる存在感を放っている。インテリアにはMモデル専用装備である赤いモード切替ボタン付きステアリングやホールド性の高い専用シートが採用され、標準モデルとの差別化が明確だった。
外部充電が可能で、満充電時には約70kmのEV走行が可能だが、新型M5の本領はガソリンと電気をフル活用したパフォーマンスにある。スロットルを踏み込むと、まるでカタパルトで発射されるような加速感を体験できた。四輪に均等にトラクションが伝わり、スピーカーからはフル加速を演出する効果音が響き渡る。その結果、乗員は圧倒的な加速力と迫力に包まれる。
その加速フィールは、以前試乗したPHEVのBMW XMと共通点を感じた。XMも4.4リッター、V8モーター搭載で、2.7トンの車重が半分に感じられる軽快な走りだった。車重2.4トンと決して軽くない新型M5でも同様の軽快感があり、加速性能だけでなくハンドリングも印象的だった。
以前、BEVモデルの「i5 M60」に試乗した際、電気自動車ならではの優れた加速性能に驚嘆したが、その先を行く走りを実現していた。圧倒的な動力性能を秘めながらも、5シリーズらしい上質な乗り心地を維持しているのが特筆すべき点だ。走行モードを最もハードな「スポーツプラス」にしても、弟分のM3やM4コンペティションのような粗さを感じさせない点には脱帽する。
試乗を終えたとき、1998万円という価格がむしろリーズナブルに思えるほどだった。もちろん高額だが、「i5 M60」の1548万円という価格差を考慮すると、外観とパフォーマンスに明確な違いを持つM5の方が魅力的に映る。 新型M5は、現時点で史上最高のゴルファーズエクスプレスと言えるだろう。ただ、唯一気になるのは先日、日本導入が発表された「M5ツーリング」(ステーションワゴン)だ。このモデルは727psの出力を維持しつつ、実用性の高い荷室を備えている。クールな雰囲気で実用性を重視するなら、ツーリングの方が最適解となるかもしれない。ともあれ、新型M5は2025年最初に注目すべきクルマであることは間違いないだろう。
BMW M5 車両本体価格: 1998万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 5095 X 全幅 2156 X 全高 1510 mm
- ホイールベース | 3006 mm
- 車両重量 | 2400 kg
- エンジン | V型8気筒 ツインターボ(PHEV)
- 排気量 | 4395 cc
- 最高出力 | 585 ps(430 kW) / 5600 - 6500 rpm
- 最大トルク | 750 N・m / 1800 - 5400 rpm
- モーター出力 | 197 ps(145 kW)
- モータートルク | 280 N・m
- システムトータル最高出力 | 727 ps(535 kW)
- システムトータル最大トルク | 1000 N・m
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Text : Takuo Yoshida