シトロエンやプジョー、ルノーに代表される現代のフランス車の多くには、いくぶん“カジュアル”なイメージが付きまとう。その中にあって、DSオートモビルは一頭地を抜くプレミアムブランドだ。今からちょうど10年前、シトロエンから独立する形で登場した。トヨタからレクサスが派生したような感じと言ったら、分かりやすいかもしれない。
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現在のDSブランドには、最小の「DS3」からフラッグシップサルーンの「DS9」まで錚々(そうそう)たるラインアップがそろう。今回試乗した5ドアハッチのクロスオーバーボディの「DS4」は比較的コンパクトなモデルだが、このブランドの何たるかを体現する一台として主役を張っていると言える。
現行のDS4は2022年に上陸した2代目。全長4415㎜のボディは普段使いに最適なサイズだ。エッジの効いたボディは一見厚みがあるようだが、全高は1495mmでクロスオーバー以上SUV未満といった立ち位置になる。
試乗車は「DS4エスプリドヴォヤージュE-TENSE」という特別仕様の上級モデルで、E-TENSEは1.6リッター、ガソリンターボエンジンにモーターを追加したPHEV(プラグインハイブリット)であることを示している。ほかに1.5リッターのディーゼル、1.2リッターのガソリンモデルが用意されている。
実車を目の当たりにして感じたのは「賑々(にぎにぎ)しい」ということだ。大きな六角形を描くフロントグリルから鋭いプレスラインが伸びるフロントマスクの主張は非常に強く、ボディ全体に程よい装飾が施されている。19インチのタイヤとホイールはボディに対して大きめで、独特の高級感が漂う。
インテリアは外観以上にプレミアム感が満ちる。シートには上質なレザーを使用。フロントドアの内張りからダッシュボートにかけて水平基調のラインが連続しており、優雅な雰囲気をまとう。ドイツ車とも日本車とも違うフランスらしさ。シンプルでありながら、いくぶん華やかな感じ。これこそDSブランドの狙いなのだと思わせる。
ドライブフィールの部分にも“らしさ”を感じられる。発進時はモーターによって静かに滑り出す。足回りはほどよく引き締められているが、サスペンションがストロークし始めるとしっとりとしている。若干重めのボディは振動を吸収しつつ、ゆったりとした乗り味を生み出す。クルマはボディが大きいほど長距離移動のストレスが少なく快適に過ごしやすいが、動的質感はまさにそれで、サイズを超越している。
PHEVモデルだがドライブしていてあまり積極的に回生(減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに換えて、駆動用バッテリーに戻して再利用する)して電力をため込む性格ではない。あくまで自宅でバッテリーを満たし、その電力によって近場ではEV(電気自動車、WLTCモードで56kmのEV走行が可能)として活用、長距離ドライブはエンジン+モーター+8速ATでパワフルに走り回る、という使い方になるようだ。他と違う個性的な見た目に加え、走りとサイズに高い実用性を求める人に最適な一台と言えるだろう。
DSオートモビル DS4 エスプリデボヤージュ E-TENSE 車両本体価格: 695.6万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4415 X 全幅 1830 X 全高 1495 mm
- ホイールベース | 2680 mm
- 車両重量 | 1760 kg
- エンジン | 直列4気筒 ターボ
- 排気量 | 1598 cc
- 最高出力 | 180 ps(132 kW) / 6000 rpm
- 最大トルク | 250 N・m / 1750 rpm
- モーター出力 | 110 ps(81 kW)
- モータートルク | 320 N・m
- 変速機 | 8速AT
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Text : Takuo Yoshida