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ノンアルなのに酔える 甘く、刺激的な“読むカクテル”

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

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「うたかたの日々」/ボリス・ヴィアン

年末年始、大切な家族や仲間たちとお酒を飲む機会も多かったのではないでしょうか。今回は、印象的なお酒が登場する小説をご紹介します。

著者のボリス・ヴィアンは、第2次世界大戦直後に作家、画家、俳優、ジャズトランペッターなど20以上もの分野で活躍したマルチアーティストで、幻想的な物語をいくつも残しています。活動の多彩さにも由来するような、読者の五感すべてを刺激する文章は、サルトルやコクトーといった作家たちに支持され、夭逝後の60年代にフランスで大ブームを巻き起こしました。

この作品の主役は、夢見がちな青年コランと美しい少女クロエ。恋に落ち、結婚した二人は幸福な時を過ごしますが、それも束の間。クロエが肺の中に睡蓮の花が育つ奇病に倒れてしまい、生活は一変します。この純粋で悲しい愛の物語は、美しく奇抜な(時に不気味な)アイテムや現象に彩られています。

シナモンシュガー味の小さなバラ色の雲に乗る散歩デート、心臓抜き、萎れていく部屋、そして弾いた曲のハーモニーに合わせた味わいが生まれる素敵な発明品“ピアノカクテル”。理解が追いつかない部分もあるのですが、まるで音楽に包まれ、ほろ酔いで白昼夢を見ているような、クセになる読み心地です。甘く、刺激的で、繊細な読むカクテル。あなたも味わってみませんか。

「うたかたの日々」ボリス・ヴィアン、伊東守男訳(早川書房)/¥704

COOPERATION

文喫 六本木 副店長/ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2022年4月より文喫 六本木副店長兼ブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Junko Itoi

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