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年末読書に『ガリバー旅行記』をえらぶ知的好奇心

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

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「ガリバー旅行記」/ジョナサン・スウィフト

ブラックジョークはお好きですか? 今回は、風刺作品の歴史的名著をご紹介します。

「ガリバー旅行記」と聞くと、子ども向けの童話をイメージする人が多いかもしれません。主人公ガリバーが旅するのは、小人の国、巨人の国、空飛ぶ島国ラピュタ、馬の国…で、ファンタジックで奇想天外な冒険譚として、編集された物語が数多く存在します。しかし、子ども向け作品に使われているのはごく一部で、本当は痛烈な社会批判が物語の主軸となっています。

例えば馬の国では、人間は獣の中で最も汚らしい家畜として描かれています。馬たちには、自分の国の人間には理性があると言いながら、そこに弱者を虐げる法律や侵略戦争が存在していることが信じられず、ガリバーは人間よりも嘘や傲慢さのない馬たちの方がずっと素晴らしいと思うようになります。

市民に寄り添わない政治や裁判などについての具体的な批判も並んでいて、発禁を逃れるために工夫を重ねて出版された作品ですが、「誰かにとって不名誉になりそうな言葉は避けたし、深読みして怒り出しそうな人間はけっして刺激しないように心がけた」なんてしれっと主人公に言わせています。

著者のジョナサン・スウィフトはアイルランド出身で、ブラックユーモアの先駆け的かつ代表的な作家です。彼の政治的経験を反映したこの作品は、18世紀に出版された物語とは思えないほど、現代を生きる私たちにも我が身と社会を振り返る視点を与えてくれます。

「ガリバ-旅行記」ジョナサン・スウィフト(角川書店)/¥704(税込)

COOPERATION

文喫 六本木 副店長/ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2022年4月より文喫 六本木副店長兼ブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Junko Itoi

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