この時期が来ると思い出すことがある。
作家の伊集院静さんと4年にもわたる
世界のゴルフコースを巡る旅を終えたのが
5月のロイヤル・ドーノックであった。
ちょうどコースには
ハリエニシダの黄色い花が咲き誇っていた。
ペブルビーチから始まった旅は、
読者の人にも夢叶うよう
パブリックアクセスが可能なコースを選んだ。
そしてなぜ最後がドーノックであったのか。
スコットランドの北の果ての
ひなびた町にポツンとあるコース。
1887年にオールド・トムモリスが設計し
その時に手伝ったのが
地元出身で当時15歳のドナルド・ロスだった。
彼はその後アメリカに渡り
素晴らしいコースを造り続けた。
人から人へ。
今でも残るロスの生家を訪ねたあと
街の小さなバーに立ち寄った。
知らず知らずのうちにグラスを合わせた。
「旅も終わりだな」
伊集院さんが寂しそうにつぶやいた。
「人生は哀しいものだから。
その哀しいものをゴルフは救ってくれているのかも」
今年もドーノックは黄色い花に包まれているのだろうか。
宮本 卓Taku Miyamoto
1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。