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原爆の本当の恐怖とは 戦後80年で「黒い雨」と向き合う

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 「文喫 六本木」副店長の小粥莉子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「黒い雨」/井伏鱒二

ことし8月は終戦から80年の節目にあたります。過去を見つめ直す一冊に、井伏鱒二の『黒い雨』をご紹介します。

物語は実在の被爆者の手記がもとになっています。舞台は原爆投下から数年後の広島。主人公・閑間重松と暮らす姪の矢須子は、「原爆病」という噂のせいで縁談を断られてしまいます。矢須子が爆心地にいなかったことを証明するべく、重松は当時の日記を清書することに。爆風と炎に包まれた街、逃げ惑う人々、静かに進行する体の異変といった事実を記していきます。

本作の核心は、被爆後に続く人々の生活にあります。後遺症の恐怖、社会からの偏見、将来への不安…。生き延びた人々が苦しみを抱えたまま生きる姿がありありと描かれます。

戦争の被害や恐怖を記録として残す、読み継がれるべき一冊です。

「黒い雨」井伏鱒二(新潮文庫)/¥880(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 副店長 小粥莉子

2024年日本出版販売入社。現在文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Hiroto Goda

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