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甘いチョコレートと味わう濃厚でビターな余韻

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

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「24・7」/山田詠美

大切な人に愛や感謝を伝えるバレンタインデーが近づいてきました。最近ドキドキしていないなという人にも、今まさに恋愛に夢中な方にも是非読んでいただきたい小説をご紹介します。

本作品は、濃密で繊細な心理描写を得意とする作家・山田詠美による、不慮の事故のような大人の恋愛を描いた短編集です。ある一編では、多くの貧しい若者と付き合い、彼らを洗練された男性に変身させることを楽しんできたセレブ女性が、ひとりの青年に本気で惹かれていることに気付き、戸惑います。料理嫌いの自分を上の空にさせ、オーブンで火傷(やけど)してしまうほどに。自分の感情が理性を超えてしまうようなアクシデントに見舞われる登場人物たち。じっとりとした不幸ときらめく幸福の振れ幅、その表現の的確さに心が揺さぶられます。

――恋は、おいしいお酒や洒落た会話などから生まれるのでは決してないのだ。いつも、それは、うっかりしていたら、何かが心に引っ掛かってしまった、というような偶然から端を発するのだ―

――本文より

恋愛が与える自由と不自由、その力強さを存分に味わえる一冊です。甘いチョコレートにブラックコーヒーが合うように、愛の季節にぴったりのビターな物語を読んでみてはいかがでしょう。

「24・7」山田詠美(幻冬舎)/¥461(税込)

COOPERATION

文喫 六本木 副店長/ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2022年4月より文喫 六本木副店長兼ブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Junko Itoi

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