旅する写心~Smoky Scotch

リンクスを味わったゴルファーと
味わったことがないゴルファーとの間には
言葉では表せない隔たりが在る。

全英オープンもしかり。
テレビで観るのとは違い
実際の現場で風と気温を肌で感じなければ
真の難しさは理解しがたい。

1989年、そんな思いを抱えて
僕は初めて全英オープンに行った。
もちろん、カメラだけではなく
ゴルフクラブも忘れなかった。

全英オープンでは初めての
4ホールのプレーオフも味わった。
王者グレッグ・ノーマンが
コースに打ちのめされる姿も
この目で見た。

試合が終わってからは
第1回の全英オープンが開催された
プレストウィックを堪能した。
もう虜になってしまい、3日間通った。
クラブを担いでひたすら歩いた。

脳裏をよぎったのは
サントリー創業者・鳥井信治郎の名文句。

「やってみなはれ。やらな、わからしまへんで」

この言葉と出会ってなかったら
旅には出ていなかっただろうな。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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