太平洋クラブ御殿場コースを
リニューアルするにあたり、
社長の韓さんには一つの想いがあった。
「5番ティの後ろにシンボリックな
桜の木を一本植えたい」
そして訪れたのが桜の大家として有名な
京都の第十六代・佐野藤右衛門さんのご自宅。
是非とも庭にあるしだれ桜を
分けて欲しいと懇願した。
韓社長の熱意に押され、
佐藤さんも京都から御殿場までわざわざ
5番ホールの植え替えを見守った。
「あのナ、最初の年は咲くけどな、
そのあと2年は咲かへんで。
木の中の水が京都から御殿場に変わるんや」
私はそれから3年待った。
メンバーの人たち、
いや世界中のゴルフを愛する人たちが、
このホールを一度は見てみたいと思う瞬間を
撮るために。
佐藤さんの著書にある一行に釘付けになった。
「桜はナ、朝しかものいわへんのや」
なぜここに、桜を植えたかったか。
その日、富士山と桜が見つめ合い、頬を染めた。
宮本 卓Taku Miyamoto
1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Clubほか、国内数々のオフィシャルフォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。