「限界を突破する」アディダスTOUR360の挑戦

アディダスのゴルフシューズ「TOUR360」の最新バージョンが3月8日(金)に発売される。2005年の登場以来、世界で戦うトッププレーヤーたちのパフォーマンスを支えてきたフラッグシップモデルだ。

近年、製品開発にAI技術を採用するメーカーが増えてはいるものの、アディダスのモノづくりはある意味“アナログ”といっていい。スケッチからレンダリング(2D画像化)し、より緻密に仕上げるために、グラビティスケッチ(VR上で3D画像に変換する)という過程をたどる。立体構造化されたものを工場に送って、サンプルモデルへと仕上げていく。


この工程を繰り返すことで、完成に至る期間に新しい技術や素材、構造を試す、より多くの機会を得る。1足のシューズを誕生させるための開発期間は約2年で、携わるプロダクトチームはおよそ50人にも及ぶ。

試作を数回繰り返したのち、プロダクトチームには“インスピレーショントリップ”という合宿が組まれる。単に今作の仕上がりだけを考えるのではなく、未来のシューズの在り方を、ひとつのプロダクトに込めて発信するというミッションが課され、次回作まで見据えた研究の一部という目的もある。


その時々の最高レベルの技術を限界値まで注いできた歴代製品のデザインに共通するのは、誰が見てアディダスだと認識できるオーセンティックな3ストライプスだろう。

グローバルアンバサダーを務めるコリン・モリカワは「僕が考える3ストライプスは、スポーツで最高レベルのパフォーマンスを発揮してくれるという信頼の象徴だ」と語る。今季開幕戦「ザ・セントリー」で最新モデルを試着。ツアーの中でも傾斜が多いハワイ・カパルアのプランテーションコースは、シューズのテストに最適だといい、これまで使っていた「ZG23」から「TOUR360」へのスイッチを決めた。


4日間のプレーで疲労や痛みが出ないことを大前提としつつ、重要視する点で意外だったのは“見た目”だ。

ファッション視点でのデザイン性と、横から見たときのシルエット、アドレスした時の見え方に強いこだわりがある。結びひもの先端にある縫い目さえも「向きや長さにこだわった。理由は、構えた時に見えるパーツだから。過剰なノイズが入ってしまうと、クラブをスクエアに構えられなかったり、パットがしづらくなったりするなど影響がある」といい、開発時のヒアリングから指摘してきた。

見た目も機能性も進化したBOAモデル

最新バージョンにはシューレースとBOAの2モデルがあるが、モリカワはレースを選択した。「正直に言うとスタビリティはBOAの方が高いと感じた。なぜレースを選ぶかというと、単純に靴ひもが好きだから」と笑った。


一方、デザイナーのヴァレリー・クリーゲル氏は、BOAモデルの進化を強調する。開発過程で最も印象に残っているのは、ニューヨークでの“インスピレーショントリップ”だという。「フットウェアチームでニューヨークにいる時、2回目のBOAモデルのサンプルが届きました。ストラップをラッピングする部分が思ったようにできておらず、チーム全員でホテルのロビーに集まり、深夜まで意見交換や議論を重ねて、ファスナークロージャー構造というアイデアにたどり着いたんです。BOAモデルのデザインでは、これがもっとも大きな決断でしたね」。

完成した製品はBOAの糸部分を覆い、すっきりした見た目に仕上げられた。このファスナーは3ストライプスと連動しており、締めたり緩めたりすることでフィット感を調整できる。レースタイプも同様、3ストライプスはデザイン上のアクセントに終わらず、足回りのサポート力を最適化するという大きな役割を担うことになったのだ。


世界アマチュアランキング1位に輝き、2023年にプロ転向して欧米で勝利を重ねたルドビグ・オーベリ(スウェーデン)は今年、アディダスファミリーに加わった。ウェアもシューズもベーシックでソリッドなスタイルを好む。ウェアはホワイトやブラックを好んでいて、シューズは合わせやすいホワイトを選ぶことが多いとか。「TOUR360は幼い頃からトッププレーヤーが履いているのを見ていて、憧れていた。3ストライプスで、一目でそれと分かる。そのくらいインパクトのあるシューズだと思う」。

「アディダスの製品はパフォーマンス性、ファッション性のどちらも兼ね備えている。それって普通のことのようだけど、僕にとってはとても大事なこと。ファッションとしても格好いいものが、ゴルフをプレーする自信にもつながるんだ」。

3ストライプスに込めた“挑戦”の意思


説明不要なブランドのロゴがあるとするなら、アディダスの3ストライプスはその筆頭だろう。どの国の人が見てもアディダスだと分かるし、モリカワの言葉を借りるなら品質を保証する信頼の象徴でもある。

「パフォーマンス面でもこんなアプローチをできる、こんな見た目も実現できる、というのが今回のTOUR360だ」と語るのはアディダスゴルフ社長のジェフ・ラインハート氏だ。「これまでの固定概念を覆すような挑戦を続けていきたい」という思いを強くした。そして求められる要素のすべてを限界値まで引き上げた製品が今作だ。

長年アスリートたちを支えてきた実績と、最新技術を持つアディダスだからできる新たな挑戦の意思を3ストライプスに込めた。「ツアーレベルのパフォーマンスになし得る、全ての限界に挑戦した。私たちの技術をぜひ体感してもらいたい」。

この言葉を受けて、モリカワは言う。「ゴルフだけではなく人生において、リミットを突破していくことは誰の人生においても大事だからね」。

<関連記事>アディダスと「MALBON GOLF」が初コラボ 数量・店舗限定で発売

お問い合わせ先

STAFFスタッフ
Photo
Katsumi Aida(adidas golf)
Edit & Text
Junko Itoi
閉じる