ランボルギーニは2023年、創業60周年を迎えた。アニバーサリーを祝うためのイベントが年明けにイタリア本国で、2月23日には日本の鈴鹿サーキットで盛大に開催された。
鈴鹿サーキットには、新旧280台以上のランボルギーニが祝福のために集められ、駐車場は華やかな雰囲気に包まれた。また、パドックにはランボルギーニのクラシックカー部門であるポロストリコがレストアした歴史的名車が並び、イベントをさらに格調高いものにした。
オーナーたちの愛車など見て歩くだけでも十分満足だったが、ランボルギーニはメインイベントを用意していた。それはギネス記録へのチャレンジだ。「Largest parade of Lamborghini cars」(ランボルギーニ車による最大のパレード)と銘打った挑戦は、次のようなレギュレーションで行われた。
(1)参加台数が100台以上であること
(2)全車が3.2km以上走行すること
(3)パレード時の車間距離は車両2台分以内に収めることと
スタート時間が迫るとホームストレートには続々とランボルギーニが並んだ。そこには1960年代の名車「ミウラ」、1970年代のスーパーカーブームを牽引した「カウンタック」の姿もあった。
参加した251台のランボルギーニはきれいな隊列を組んでサーキットを一周し、ランボルギーニ車による最大のパレードのギネス記録を更新したのだ。そして、アウトモビリ・ランボルギーニのチェアマン兼CEOであるステファン・ヴィンケルマン氏がギネス記録の認定証を受け取った。
パレードに参加したランボルギーニのうちの約50台は、3日かけて鈴鹿サーキットから京都、奈良へとツーリングをする「Lamborghini GIRO 2023」にも参加した。「GIRO」とは、イタリア語で“旅”を意味する。イベントを通じて感じたのは、日本人はランボルギーニが大好き、ということだ。それはオーナーだけに限らない。たとえば京都の平安神宮の前では、観光客たちが笑顔でスマートフォンを向けていた。
日本におけるランボルギーニ人気は販売台数にも表れている。2022年は1位アメリカ、2位中国(香港とマカオを含む)、3位ドイツ、4位イギリスに次いで、日本は世界第5位の“ランボルギーニ大国”となった。しかも4位イギリスとの差はわずか100台程度で、日本市場は対前年比プラス22%という高い伸び率を示していることから、近い将来に逆転の可能性もあるだろう。
そして60周年の記念イベントを、母国イタリアの次に日本で開催したことからもわかるように、ランボルギーニも日本市場をとても大切にしている。ランボルギーニと日本のクルマ好きは、幸福な関係を築いているといえるだろう 。
日本人がランボルギーニを愛する理由については諸説ある。スーパーカーブームの影響が大きいという説もあるし、エンツォ・フェラーリに冷たくあしらわれたフェルッチオ・ランボルギーニが立ち上げたブランドだという経緯が、判官(ほうがん)びいきを好む日本人の琴線に触れたという説もある。
正解はわからないけれど、パレードやGIROの様子を見て、ひとつ気づいたことがある。日本では、「外車を乗り回す」という表現があるように、成功して高級車を乗り回す人を妬む傾向がある。けれども、ランボルギーニに対しては、そういうネガティブな感情がないように思えるのだ。
おそらく、成層圏まで飛んで行きそうなカッティングエッジなスタイリングや、鼓膜を震わす美しい爆音があまりにも突き抜けているため、妬むことさえ馬鹿らしくなるのではないだろうか。オーナーでなくても、見ているだけで幸せな気持ちになるクルマ、それがランボルギーニである。
Text : Takeshi Sato