米国のゴルフの始祖が“Apple Tree Gang(アップルツリーギャング)”と呼ばれていたという時代から130年あまりを経た今、新たにギャングを名乗る男たちがいる。大阪のセレクトショップ「CLUBHAUS(クラブハウス)」の代表・松本抵三氏と、ゴルフアパレル「HEAD TO TOE(ヘッドトゥトウ)」のディレクター・平野淳氏だ。
ともにゴルフアパレルを生業とし、ブランドコラボレーション商品の展開や、オリジナルアパレルを製作。SNSでコアなファンを獲得し、新鋭ブランドでありながら、発売商品が瞬く間に完売するなど、ゴルフアパレル市場に新たなストリートカルチャーの風を吹き込ませている。
そんな彼らが、ゴルフへのリスペクトと自分たちのライフスタイルを融合した新しいゴルフを追求するために立ち上がった。二人が中心となって刊行した「Apple Tree Gang」はゴルフを愛し、さまざまな分野で活躍するヒーローたちにフォーカスし、ゴルフの楽しみ方や、メッセージを伝えているフリーペーパー。
第3号リリースと同時に宮崎県の青島で開催した初のリアルイベントには、全国から約60名のメンバーが集まった。前夜祭にサーフィン、スクランブルゴルフで交流を図り、期間中にはポップアップショップもオープン。インタビュー後編ではこの度開催した初のリアルイベントに至る経緯と、今後の展望を語ってもらった。(敬称略)
―7月末に「Apple Tree Gang」第3号が刊行されました。リアルイベントも開催したと聞いています。
松本:いろいろな垣根を越えて仲間たちとつながれて、ゴルフの楽しさを伝えるというのを、ある程度達成したフェーズに入ってきたと思うんです。いよいよ満を持して、次はリアルイベントの実施だろうと考えました。ただ人気の服を着てゴルフをするのではなく、人と人が集まって、自分の人生と向き合うきっかけになるのがゴルフだって気づいてもらえればいいんです。「嘘をつかない生き方が、楽しくて強い」ということを仲間から教わったので、みんなにも学んでほしいと思ったんですよね。
平野:いままでとは違うゴルフの楽しみ方が増えたな、って思ってもらえたら本当にうれしい。長年ゴルフをしてきた人が、さらに楽しむことができて、その時間を共有できる場を提供したいと考えました。最高の人たちと、最高の場所で集まる。リアルなことの方が大事な気がしたんです。人づてに伝わってちょっとしたムーブメントになるんじゃないかなって。
仕事でいろんなことがあっても、ゴルフをしているときは、そんなことが関係なくなる。この年になっても童心に返って楽しめるって大事だと思うんですよ。だから本当にいいスポーツに出会ったなって思いますね。
―今回、宮崎で行われたイベントには全国から60人以上が参加したそうですね。「宮崎・青島」「サーフィン」にフォーカスした理由を教えてください。
平野:サーフィンをする人って、その人らしいスタイルがある。ゴルフも、サーフィンも“リラックス”って大事じゃないですか。自然と対峙するスポーツであり、その中で遊ばせてもらっているというところが、ゴルフと似ているような気がしますね。
松本:今回の開催地である宮崎県の青島はサーフィンの聖地。『Course // Coast(コース トゥ コースト=ゴルフコースから海岸へ)』をテーマとしました。サーフィンってゴルフより先んじて広まったスポーツであり、ライフスタイルに密接で、人生にも影響を及ぼすスポーツだと常々思っていました。そういう方たちは生き方が上手だから、先輩たちに学びたい、という気持ちもありましたね。ゴルフもそういうスポーツとして広がっていったらいいなと思います。
―初のイベントには、どんなメンバーが集まったのですか?
平野:最初のきっかけはファッションだったけど、そこはもう関係ないというか、ゴルフしちゃえばお互いが「好きじゃん!」みたいなね。参加したメンバーは、それぞれのスタイルがある人たちばかり。同じ感覚を持った人たちが集まるような場所ができたら一番いいなと。
全国にはいろんなヒーローがいるわけで、そんなメンバーと出会えたら楽しいにきまってる。カメラマン、ファッション関係、伝説の工事屋さん(笑)、農家を営む方、俳優、飲食業。そういう垣根はすべて取っ払っていい。
松本:ファッション関係、インフルエンサーが集まって、言葉は悪いけど、スカしてゴルフをしようというグループではないんです。そんなことはやりたくない。
平野:僕は過去に一度だけ自分企画のコンペを開催しました。みんなを喜ばせたい、自分のできる最大限をやりたい、という思いだけでね。「初めまして」の方も多くて、難しさや、至らなかったことを自分なりに振り返って、学んで、「次はこうしたい」みたいなことを考えていた時に、この企画を抵さん(松本)がくれたんです。「一緒にやろう」って。
―参加する方たちは正直“ファッション集団”のイメージがありました。
松本:お洒落とか、トレンドとか関係なく、みんなそれぞれ自分のスタイルを持っているメンバーばかりです。思い思いのスタイルで、胸張って服を着ているよね。
平野:ゴルフはコスプレですから(笑)。ラウンドの日の朝、自分が持っているウェアの中で、一番自分に似合うウェア、自分らしくいられるウェアを着て集まってくる。「この服を着てゴルフをするのが好きだから」だけですね。腕前だって上手かろうが、下手だろうが関係ない。
松本:僕らはそういう人たちと知り合いたくて、これを始めたわけで。芯のある生き方ができている人たちは世の中にたくさんいます。そういう人たちと出会って自分の人生を豊かにしたいし、相手の人生にも少なからず影響を与えられたらうれしいしね。みんなの人生を上向きにするきっかけになると僕は信じているので。ゴルフにはその力があると思っています。
―フリーペーパーの刊行、リアルイベントの実施…その先に描いている構想はありますか?
平野:少しずつ大きなコミュニティになっていくんじゃないかなぁ。
松本:僕がイメージするのは“ゴルフ倶楽部”のようなイメージ。同じ志を持ったメンバーが集まって、こんな姿勢でゴルフを楽しみましょうという仲間が集まる「Apple Tree Gang」っていうね。いつかはこの倶楽部でハンデも発行できるといいよね!
平野:イベントも国内に限らず海外でも、2回、3回…と続けていきたいですね。どこにでも行くよ、ではなくて、そこには同じ志を持ったメンバーがいてくれる場所でね。
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- eikihosomi、Takao Ikemoto
- Edit & Text
- Junko Itoi