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「海外小説は苦手…」な人へ 異文化に触れる“翻訳文学”という表現

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 「文喫 六本木」副店長の小粥莉子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「水曜生まれの子」/イーユン・リー

ある言語で書かれた文章を、別の言葉に移し替える翻訳。ただ意味が合うだけでなく、行間の揺らぎや、漂う空気まで表現することで、数多くの名作が誕生してきました。今回は『水曜生まれの子』という作品をご紹介します。

著者は中国系アメリカ人のイーユン・リー。彼女は北京出身ながら、執筆には英語を用います。本作の日本語訳を手がけた篠森ゆりこ氏は、複雑な文化的レイヤーを持つリーの作品を多く翻訳してきました。英語で書かれた東アジア的な文化感覚や心理描写を、日本語で豊かに表現しています。

リーにとって13年ぶり3冊目の短編集となった本作。収録された11の物語は、14年の歳月をかけて執筆されました。その間、リーは友人、恩師、父、そして息子を失っています。表題作『水曜生まれの子』では、自死した娘を持つ母親の旅が描かれ、喪失感や悲しみ、孤独といった重いテーマをユーモアも交えて描いています。

著者の感性や異文化の“肌触り”が、翻訳というフィルターを通して生き生きと伝わります。「日本の作品は読むけど、海外文学はあまり…」という方にもおすすめしたい一冊です。

「水曜生まれの子」イーユン・リー(河出書房新社)/¥2,695(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 副店長 小粥莉子

2024年日本出版販売入社。現在文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Hiroto Goda

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