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“人間の闇”をのぞく勇気はありますか? 実在の殺人犯をモデルにしたサスペンス

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「羊たちの沈黙」/トマス・ハリス 高見浩 訳

今回のテーマは、ハラハラドキドキのサスペンスです。『羊たちの沈黙』は、サスペンスやホラーに興味がなくてもタイトルは聞いたことがある、または青白い女性の口元にドクロを背負った蛾が止まっている映画ポスターを目にしたことがある、という方が多いのではないでしょうか。

物語でFBIが追っているのは、若い女性をさらっては皮膚を剥ぐ残忍な連続殺人犯です。主人公の若き訓練生クラリス・スターリングは捜査への助言を得るため、多数の患者を殺害し、料理して食べ、精神異常犯罪者用病院に拘禁されている医学博士ハンニバル・レクターと対話することを指示されます。新たな事件までのタイムリミットが迫る中、すべてを見透かし他者の苦痛を楽しんでいるようなレクター博士の謎めいた言葉に、主人公は翻弄されて…

――本に従えば、彼はサディストです――

――本で定義するには、人生は複雑すぎるのだ、クラリス――

――本文より

普通の人間には想像もつかない連続殺人犯の動機、捜査関係者の個人的な欲望なども邪魔をして難航する捜査の状況が、緊迫感をもって描かれます。なにより恐ろしいのは、物語に登場する連続殺人犯たちに実在のモデルが存在すること。物語より恐ろしい人間の闇をのぞく勇気のある方、どうか覚悟して読んでください。

「羊たちの沈黙上/下」/トマス・ハリス 高見浩 訳(新潮社)/¥781/¥825(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2021年4月より文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Hiroto Goda

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