
時代やトレンドに左右されることなく、長年愛用できるアイテムには格別な存在感がある。手にするだけで、これまで以上の満足感を得られ、自分自身もさらに磨かれていく。BRUDER編集部が選んだそんな『大人名品』と呼ぶにふさわしいアイテムを毎月紹介します。
大人名品vol.8
Champion(チャンピオン)『リバースウィーブ(R)』

綿(コットン)をメリヤス編みにしたニット生地のスウェット。快適な着心地と手に取りやすい価格ゆえに、いつしか日常のワードローブに溶け込み、誰もが一枚は持っている定番アイテムとなった。その中にひとつだけ、「ザ・キング・オブ・スウェットシャツ」と呼ぶに相応しい“一張羅”が存在する。アメリカンカジュアルを象徴してきた「Champion(チャンピオン)」が誇る『リバースウィーブ(R)』だ。
実用性が生んだ革命―スウェットの誕生
1920年代のアメリカ。フットボールやアスレチック競技のユニフォームといえばウールが主流だった。保温性はあるが、汗を吸えば重くなり、ケアも容易ではない。何より肌触りも決して快適とは言えなかった。
この不便を解消すべく登場したのが、綿製のスウェット生地だ。軽くて吸汗性があり、洗濯してもすぐ乾く。その実用性は学生アスリートの心をつかみ、練習着として一気に普及していった。
やがてスウェットは、スポーツシーンを超えてキャンパスの外へ。大学生たちが寮で、街で、さらには音楽やカルチャーの場に広がり、瞬く間に“日常服”として広がっていった。スウェットの歴史は、アメリカ青春文化の歴史そのものと言っても過言ではない。
チャンピオンの歴史―軍と大学、そしてカルチャーへ

チャンピオンが誕生したのは1919年。ニューヨーク州ロチェスターの小さな工場から始まった。1926年にミズーリ州レキシントンのウェントワース陸軍士官学校と提携。もとは制服を販売していたが、その品質に感銘を受けた生徒たちが競技用ユニフォームの制作も依頼した。これが今日の教育機関とのビジネスを開始する契機となった。
大学との結びつきも深かった。ミシガン大をはじめとする全米の大学に公式アスレチックウェアを供給し、カレッジスタイルの礎を築く。1970年代前半には運動部やミリタリーアカデミーへ一括納品していた時期があり、その際にはサイズごとに色分けされたタグが付けられていたという。
その後、カレッジファッションは学生の間から街へと広がり、ファッショントレンドを作りあげた。ヒップホップやスケートボード、音楽やカルチャーまで幅広いジャンルで浸透し、アスリートのための実用品は、時代のシンボルへと昇華していった。
縮みへの逆転発想が生んだ唯一無二のスウェットへ

1938年、チャンピオンはスウェット史に残る大発明で特許を取得する。その名も『リバースウィーブ(R)』。発端は「洗濯すると丈が縮んでしまう」という顧客からの声で、1934年に開発されたものだった。
この不満を解決すべく立ち上がったのが、当時セールスマンだったサム・フリードランドだ。彼は1934年に解決策を考案。老舗紳士服店に勤務していた前職での経験から、服作りの構造や生地の特性に精通しており、「どうすれば縮みを軽減できるか」が瞬時に見えていた。従来は縦方向に使用する生地を90度回転させ、横方向に使用する、つまり“逆編み”という発想だった。これにより縮みは横に分散し、丈の変化を防ぐことに成功した。
1952年にはさらなる進化を遂げる。脇に「エクスパンションガゼット」を採用し、スポーツ時の可動域を確保しながら縮みに対応する構造を実現。袖口や裾のリブ、二本針ステッチなどのディテールと相まって、“動くために作られた服”として完成度を高めた。
いまだ色褪せぬ理由―丈夫さと普遍性

発売から80年以上が経ち、リバースウィーブが“キング”と呼ばれ続ける理由は2つあると考える。
ひとつは、耐久性。古着市場を覗けば、70~80年代のリバースウィーブがいまなお現役で取引されている。多少の色褪せやダメージは“味”となり、むしろ価値を高めている。この耐久性がヴィンテージ文化を生み、世代を超えて着続けられているのだ。
ふたつ目に、デザインの普遍性。シルエットの微差こそあるが、どの時代のトレンドにも寄り添うシンプルさを尊重している。それが長年愛されている理由と言えるだろう。
主張しすぎないデザインはさまざまな着こなしと相性が良く、スラックスに合わせれば大人の余裕を漂わせ、デニムに合わせれば王道のアメカジに。ジャケットの下に忍ばせても街着として遜色ない。どのスタイルにも馴染み、主役にもなれる。これほど万能な服は、そう多くない。
小さなタグに宿る物語

リバースウィーブの魅力を語る上で外せないのが、タグの遍歴だ。大学納品時代にはサイズごとに色分けされ、80年代に一般販売が始まると胸に小さな“C”ロゴが刺繍されるようになった。90年代には赤タグから青タグへ。わずかな文字の違いや印字の色の変化にファンが熱狂する――そんなディテールの積み重ねこそ、単なるスウェット以上の存在である証だろう。
新しい一枚に歴史を刻む

現在も、発売当時のモデルを手に入れることができるのをご存知だろうか。復刻商品『リバースウィーブ(R) 1stパテントモデル』として販売されているこのアイテムは、肩に縫い目のない一枚布で作ったシームレスショルダーや、筒状のスウェットからパターンを起こすという当時の製法を忠実に再現したものだ。これを手にすることで、“新しいヴィンテージ”を自分なりに育てるという、大人ならではの楽しみ方を味わうことができる。
一張羅としてのスウェット
スウェットと聞けばカジュアルな印象を抱くかもしれない。だが、リバースウィーブだけは別格だ。1世紀以上の歴史に裏打ちされた信頼感、普遍性と革新が同居する稀有な存在感。まさに“ザ・キング・オブ・スウェットシャツ”の名にふさわしい。ただのスウェットではなく、一張羅として誇らしく着られる。そんな一枚を持つことこそ、大人の余裕の証と言えそうだ。
お問い合わせ先
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ヘインズブランズ ジャパン株式会社 TEL:0120-456-042
https://championstore.jp/c/truetoarchives
Text : Yumi Takahashi
Edit : Junko Itoi








