BRUDER 1周年記念 GOLF is the LIFE! リシャールミルジャパン代表取締役 川﨑圭太×戸賀敬城 対談「2度のホールインワンを経験して」

最初はイヤイヤだったゴルフ

戸賀敬城(以下、戸賀):久しぶりでもなく、年がら年中ご一緒しているゴルフですが、今日はお疲れ様でした。ふたりとも午後は……(笑)。

川﨑圭太(以下、川﨑):ひどかったですね(笑)。本当にお疲れ様でした。

戸賀:先々週は宮古島でご一緒して、少し悔しい負け方はしましたが、内容は今日ほど悪くなかったですね。2月はハワイでもプレイしましたね。 

川﨑:ハワイでも女子に負けて、大人気なくムキになりましたね。

戸賀:実は僕が仕事でゴルフをいちばん御一緒しているのが川﨑さんなんです。

川﨑:そうなんですか?

戸賀:今年はあまりプレイできていなくて、15ラウンドくらいなんですが、川﨑さんとは6ラウンドくらいしていますよね。今日はゴルフのお話に加えて、ファッション、時計、そしてクルマの話もできたらと思っています。まずはゴルフなんですが、ゴルフ歴は30年くらいですか? なぜ、始めることになったのでしょうか。

川﨑:当時は会社員だったんですが、まだバブル時代の前ということもあって、仕事の取引先とのコンペも多かったんです。ゴルフはやらなければダメという流れでした。でも、最初は苦痛でしたねぇ……。とにかくわけが分からないまま、ゴルフ場に行っている状態でした。はっきりは覚えていませんが、最初の1年くらいは無理やり2カ月に1回のペースで行っていました。それにドライバーを使わせてもらえないんですよ。5番アイアン、7番アイアン、ピッチング、パターだけでいいからって。全然面白くなかったですね(笑)。

戸賀:それが今は大好きじゃないですか。どこからハマったんですか?

川﨑:仕事がらみでやらされていたのが、友達と行くようになってからですね。友達同士で失敗を笑いあったりしているうちに、「面白いなぁ……」と思うようになってきました。すると不思議といいスコアが出せたりするんですよね。2年目くらいから、自分で予約して行くようになりました。

戸賀:そこから現在に至るまでですか?

川﨑:いやいや。戸賀さんもご存じだと思うんですけど、当時はプレイするだけで高かったじゃないですか。やりたくてもできないって感じでした。2万数千円もかかるものに、サラリーマンが月イチでは行けないですよね。「行きたいなぁ……」と思いながら、安いゴルフ場を探していました。

戸賀:道具にもハマったりしましたか?

川﨑:道具は先輩から譲ってもらいました。道具にこだわるようになるのは、もっと後のことです。当時はパーシモンとかでしょうか。ゴルフ関係の仕事もやっていたので、色々と借りたりもしていましたよ。

戸賀:恵まれた環境だったんですね。

川﨑:そうですね。でも、取引先関係のクラブしか使えなかったので、あまりクラブにはこだわってきたほうでないかもしれません。

宮里優作選手から頂いたパター

戸賀:川﨑さんはすごいパターを持っていますよね。

川﨑:そうなんですよ。最近の話なんですが、弊社が宮里優作選手をスポンサードしていることもあって、スコッティ・キャメロンのパターをプレゼントしてくれたんです。これがまたいいんですよ。彼と一緒に回っていた時、「川﨑さんの打ち方ならば、これがいい」と、特注で作ってくれて……。僕の名前入りです。

戸賀:それでパターが得意なんですね。

川﨑:いやいやいや(笑)。下手だけど、パターを打つのは好きですね。宮里選手からもらったパターを使うのは、外れることがあっても、すごく楽しいです。

戸賀:宮里選手も、リシャール・ミルもイケイケですから、縁起のいいパターですよね。

川﨑:あれは神がかった感じでした。昨年、逆転で賞金王を獲りましたから。

戸賀:あれはリシャール・ミル ファン全員が感動しましたよ。

川﨑:リシャール・ミル ファンのみならず、ゴルファーならば、誰もが感動したでしょう。

戸賀:(宮里)藍ちゃんも、すごく喜んでいましたよね。

川﨑:あの兄妹は本当に素晴らしいんですよ。僕も大好きです。本当に勝てて良かったです。それもリシャール・ミルをつけて獲りましたから。

戸賀:赤いリシャール・ミルから始まって……。

川﨑:いや、白からなんです。白から赤へいって、緑です。宮里選手は奥様に「緑を付けた時にまだ優勝がないから、最終戦でこいつに優勝させてやりたい」と言って優勝したらしいです。本当に鳥肌が立ちました。

伝説の2週連続ホールインワン

戸賀:契約プロもいらっしゃいますし、川﨑さんはゴルフ界でもお顔の広い人です。色々なゴルフ場に行っていると思いますが、大好きなコースはありますか?

川﨑:けして高級なコースではないかもしれませんが、宮﨑に青島ゴルフ倶楽部というところがあります。僕は妙にここが好きでね。遠くに海が綺麗に見えて、高台にあるゴルフ場です。海沿いのリンクスとはちょっと雰囲気が違います。そうそう、宮﨑のシーガイアも見えるコースですね。グリーンの形もいいし、アップダウンも適度にあって、適度に広々としています。宮﨑なので暖かいし、食べ物も美味しいので妙に気に入っています。

戸賀:よく行かれるんですか?

川﨑:宮﨑なので年に1~2回なんですけどね。

戸賀:よく行かれるゴルフ場でお気に入りはありますか?

川﨑:やはりここ、成田ゴルフ倶楽部です。ここは自分がメンバーになっていることもあります。今日も叩きましたが(笑)、好きですねぇ。

戸賀:いいコースですよね。特に思い出があったり、好きなホールは? やはり川﨑さんといえば、2週連続ホールインワンという伝説もありますから……。

川﨑:ここでは出していないんですよ。好きなホールは12番のショートです。

戸賀:あの谷の向こうの……。

川﨑:好きなのに、左の谷に落っことして大叩きもしているんですけどね。フックを打つので、あえていつも右を向くんです。右に斜面があるので、キックしてからグリーンオンすることが多い(笑)。

戸賀:せっかくなので、メディアでも有名になった2週連続ホールインワンについて聞かせてください。

川﨑:1回目は季美の森ゴルフ倶楽部。8番、168ヤードでした。

戸賀:入る瞬間は見えましたか?

川﨑:ピンが立っていて、少し上がっているので見えにくかったんです。自分はフックがかかりますし、右側に池があるので、普段はまっすぐ狙うんですが、その時は池を狙って撃ちました。6番アイアンでまっすぐ当たって、フックがかかって、「戻ってる、戻ってる」という感じです。そのままト〜ンとグリーンにのったんです。自分から見ていると、グリーンにのって横にス〜と流れて、ピンに入りました。その瞬間、スコンと音がしましたよ。2回目は次の週の木曜日か金曜日。ある雑誌の編集長とグレートアイランド倶楽部ゴルフでラウンドした時です。120~130ヤードくらいで、若干の打ち下ろしの池越えでした。それがピッチングでトップしちゃったんです(笑)。

戸賀:トップですか?

川﨑:トップってボールが伸びるじゃないですか。池に入るか入らないかで、池の淵で落ちて、す〜っと走って、ピンに向かってコロコロと。で、スコン。

戸賀:音は聞こえましたか?

川﨑:聞こえましたし、はっきり見えていました。実はその前の週にホールインワンした時、保険に入っていませんでした。その日の午前中に回った人がゴルフ関係者だったので、ホールインワン保険の手続きを、その日のホールアウトしてから行うことになっていたんです(笑)。

戸賀:それは、お疲れ様です(笑)。

川﨑:参りましたよ。

戸賀:業界中にニュースが走り回ったことを覚えています。当時はまだお会いしたことがなかったんですよね。

川﨑:2度目のホールインワンはフックとトップでした。季美の森はその後も何度か行っていますけど、あまり好きなコースではないんです。それにナイスショットをして獲れたホールインワンでもありませんし……。あの後、ショートホールに行くたびに「また入るんじゃないか」って思ってましたからね(笑)。いとも簡単に入るような気がしちゃって。

戸賀:僕も太平洋クラブ御殿場の17番、逆さ富士でホールインワンを経験しました。僕は目が悪いので見えなかったんですが、周囲が入った「入った!」と、大騒ぎです。その半年後にも行ったんですが、僕もなぜか入る気がしました(笑)。それだけ、舞い上がってしまうんですよね。

川﨑:あそこは失敗すると、池に落っこちてしまいますよね。太平洋クラブ御殿場も綺麗ですし、好きなコースです。

リシャール・ミルとマクラーレンのコラボ

戸賀:BRUDERはゴルフ以外に、クルマも一生懸命取り上げています。川﨑さん、いやリシャール・ミルと言えば、やはりマクラーレンです。先日、僕も「マクラーレン570スパイダー」を試乗したんですが、川﨑さんは「570S」をお持ちなんですよね。

川﨑:昨年買いました。リシャール・ミル本社がマクラーレン・オートモーティブとコラボレーションをしたこともあって、全世界にいる4名の社長に対して「それぞれ買いなさい」という流れがあったんです。それで一番安いモデルを買いました。他の社長はみんな「720」なんですが、僕だけ「570S」です(笑)。あまり乗れていないんですが……。

戸賀:ジュネーブ・ショーでも「セナ」と一緒にリシャール・ミルの時計が発表されていましたね。

川﨑:単なるコラボレーションというよりも、我々の場合はマクラーレンとの共同開発。素材から一緒に共同で開発しています。価格もクルマよりも高いモデルがあるほどです。いい関係を築きながら、自分もマクラーレンのクルマに乗らせてもらっています。

戸賀:川﨑さんは移動が多いと思うんですが、マクラーレンはどんな時に乗っていますか?

川﨑:ほとんど乗れていないので、基本的は移動用のトヨタ アルファードです(笑)。それに家ではコンパクトなBMWに乗っています。

戸賀:どういった時にマクラーレンの鍵を持つんでしょうか。

川﨑:バッテリーが上がっちゃうと思う時かな(笑)。

戸賀:僕もよくマクラーレンに乗るんですが、意外に乗りやすい。一方でまるでチューニングカーのように、かなりけたたましいサウンドもありますよね。

川﨑:普通になんの違和感もなく街乗りができます。全高がかなり低いだけで、とても運転しやすい。以前から戸賀さんに「乗りやすいクルマだ」と教えてもらっていたんですが、実際に乗ってみたら、本当に乗りやすかった。

戸賀:残念ながら、あまり乗れていないようなので、飽きた時に僕が下取りでお待ちしています。一生懸命働いて、貯金しておくので……。なので、あまりエンジンはかけなくてもいいですからね(笑)。

川﨑:僕の570Sは、実は世界に1台しかない特注のカラーなんです。ブラックにオレンジメタリックを合わせたフルカーボン仕様。リシャール・ミルと同じで、値段は下がらないと思いますよ(笑)。

F1マシンをその腕に

戸賀:今日は時計の話もたっぷりと伺いたいんですが、川﨑さんも何本かお持ちですよね。今日はどんなリシャール・ミルを?

川﨑:付けてきたのは「RM003デュアルタイム トゥールビヨン」です。これはリシャール・ミル本人と私が、初めて出会った時に付けていた最初のプロトタイプにほぼ近いモデル。12~13年前のオリジナルモデルですね。

戸賀:改めて、今見ても渋いですよね。

川﨑:これを初めて見た時、私もびっくりして……。ここで仕事をしたいと思いました。本当に古くならないんですよ。時計には昔ながらの伝統もあって、丸型が多い。その中で機械の磨き方や、技術を凝縮しているところに価値がある。我々はグラマラスという言葉を使いますが、リシャール・ミルはさらにスタイリングも美しい。もちろん衝撃にも強いです。キャッチフレーズが「Racing Machine on the wrist(レーシングマシーンをその腕に)」。F1マシンを腕につけているイメージで開発されています。私としては、何よりもスタイリング、このフォルムが好きですね。

戸賀:この「RM003」が発売された当時、現在のリシャール・ミルがこれだけの存在になっているとは、失礼ですが思ってもいませんでした。

川﨑:誰も、それこそ私だって思っていなかったですね。

戸賀:川﨑さんが何度か付けているのを見ていますが、やはり強烈な個性があります。でも、歴史が浅い。どちらかというと、フェードアウトしていくブランドだと、デザイン的に思っていました。

川﨑:そうなんですよね。高価だけど、一過性のブランドだと、あらゆる人に言われました。「どうせこんなの長続きしないよ」と。ところが不思議なことに、この人気がずっと続いています。

戸賀:ほとんどモデルが、発売当時の定価よりも価値が上がっていますよね。

川﨑:特に10年くらい前のモデルは作っている数が少ない上に、特にスタイリングがいいものが多くて。10年前は現在ほど高価ではなかったので、その結果、ヴィンテージになってきています。リシャール・ミルは001から始まって、ずっと続いていますが、一桁台の番号に関しては、本当に生産台数が少ないから、1番なんて本当に手に入らない。2~9番まで、当時の値段を上回る価格で売買されていますね。

戸賀:僕も一応、リシャール・ミルオーナーで、ブティックに何度も足を運んでいますが、本当にモノがないですよね。川﨑さんが面白いなぁ……と思ったのは、高級ブランドの自動車メーカーが行なっている「認定中古」というシステムを、時計の世界でも始めましたよね。

川﨑:他のブランドも少しやっているんですが、認定として価値を高める仕事をやっているのは我々くらいですね。これは自慢したいことです。

カップルで付けたいリシャール・ミル

戸賀:僕はメンズクラブやエスクァイアを担当したいた頃に、リシャール・ミルから大きなお仕事を頂戴しました。メンクラ読者というよりは、メンクラを卒業された先輩方を紹介するブックインブックを担当したんです。制作に携わるうちに、身の程知らずですが、欲しくなってしまった。いまだからお話できますが、50歳になるし、独立もしたい、色々な思いが当時ありました。それで退職金を目当てに、自分に投資しようと思ったんです。人生の大きな節目で、忘れることができない時計です。結局、企画を作ったことで、自分自身がハマってしまったというのが、僕のリシャール・ミルとの出会いです。

川﨑:僕が親しくなりたいと思ったきっかけでしたね。メンクラ卒業生が「どんな時計を持ちたいのか?」となると、リシャール・ミルだろうと。この仕掛けにたくさんの読者の方が賛同してくれて、かなり買って頂きましたよ。

戸賀:僕は限定モデルの「RM029 ジャパン・ブルー」を買ったんですが、僕の周りでも4人が買って、買えなかったやつもいましたからね。先日、ストラップをホワイトに変えました。ダイヤルに一部ホワイトが使われているので、それを拾ったんです。

川﨑:ブルーのインナーベゼルでね。

戸賀:これがめちゃくちゃ評判良くて。大事すぎて、今日はケースから出すのを忘れてしまいました(笑)。リシャール・ミルのオーナーになったことで、人生もいろいろ変わって、付き合う人もひとつ上がった気がしています。本当に自身がついたし、楽しく独立後の生活を送っています。

川﨑:お付き合いする人が、リシャール・ミルによって変わるという話はよく聞きますね。

戸賀:リシャール・ミルのファミリーと呼んでいますが、顧客の方々とのいいコミュニケーションツールにもなります。新しい友人や知人を増やすことができました。また、その人たちとゴルフをやったり、クルマやファッションの話をしたり……。新しい僕を作ってくれたと、時計に感謝しています。でも、「RM029 ジャパン・ブルー」を手にいれて、ひとつ困ったことがあって。

川﨑:なんでしょう(笑)?

戸賀:今日の撮影のためにレディースを借りているんですが、「これも似合いますよね」という話ではありません(笑)。実は家内がまだリシャール・ミルのオーナーじゃないんです。「なぜ夫だけがリシャール・ミルを持っていて、妻が持っていないんだ」と、かなり問題になっています。一方で、自分ではなく妻の時計から買うというのも、なかなか勇気がいりますよね。

川﨑:我々のオーナーの方も、ほとんどが男性から入っていくブランドなんですよね。先週、神戸でイベントやったんですが、ご主人が「自分の時計よりも先に妻に……」と言っていました。ラインナップでもかなり高価な時計を、自分よりも先に奥様にプレゼントされていました。奥様も「自分にプレゼントしてもらえるなんて」と、感動されていました。

戸賀:リシャール・ミルのファンとしては、女性にも流行っていくのが嬉しいんですが、男はプレゼントする側ですからね(笑)。そこが個人的に厳しい(笑)。まだまだ時間がかかりそうですが、バランスが悪いというのはカップルとしても美しくないので、なんとかしないといけませんね。リシャール・ミルのイベントで、何組かのカップルにお会いしたんですが、お夫婦でリシャール・ミルをしていると、1+1が、3にも、4にも、5にも見えるんです。歴史のあるいい時計もたくさんありますが、ペアでリシャール・ミルをしていると、ぐうの音も出ません。

川﨑:かっこいいですよね。日本だと、まだ女性にそこまで広まっていないんですが、海外では、女性用モデルの人気が上がっています。実はメンズ用の大きい時計をつける女性も多いんですよ。一昨年、ホワイトの中にピンクが入っている「RM 07-01 ジャパン・ピンク」というモデルを限定で作ったんです。ピンクという色はなかなか使わないんですが、ものすごい人気出ました

ある時、パリのシャンティでイベント行った時、日本のお客様がこの「ジャパン・ピンク」を付けていたら、カタール王室の女性が、それを見て「サクラ、サクラ! 私はあれが欲しい」と言いだしたほど。もう完売していたのに、「なんとかしてくれ!」と、僕に言い寄ってきましたから。リシャール・ミルを付けるかっこいい女性は、これからもっと増えていくでしょうし、我々も仕掛けていきたいですね。

価値の創造と資産の維持

戸賀:ここ5年くらいでしょうか。時計に限らずファッションもですが、ラグジュアリーは終わったとか、尻すぼみだとか、右肩下がりとか、言われています。なぜリシャール・ミルばかりが、これだけ好調なのでしょうか。

川﨑:これだけ人気が出ているのは、ひとつに作っている本人の考え方、そして我々の行っていることが、「価値の創造と資産の維持」ということにあるからだと思っています。高級時計はどれも複雑で貴重な価値があって、作るのにたいへんな手間がかかっています。それだけの価値がある上に、我々はさらに価値を創造しています。価値の創造こそが、我々のテーマなんです。

具体的にいえば、数を作らないこと。同じモデルで量産しないとことが一番大きいです。これは最初からリシャール・ミル自身が言っていることですね。それこそ日本には年間数百本しか入って来ないんですよ。それをお客様にお売りして、我々は時計を売って終わりではなく、お客様の資産をお守りする役目もあります。例えばトガッチに買っていただいた「RM029 ジャパン・ブルー」もそうですが、その資産を維持する義務がある。だから、アフターサービスにはこだわりますし、きちんといつでも修理をしています。

そして、リセールです。この時計をお金に変えたくなった時、どれくらいで売買できるのか……。我々が得たお金で一生懸命投資をしているわけです。広告宣伝もするし、修理の道具も揃えます。そして高値で買い取ってもいます。でも、高値で買って、さらに高値で売りつけて利益を出すのではなく、薄い利益を乗せて市場にまわす。そうすることで価値を維持しています。これでお客様はたいへん喜んでくれます。それこそ自分の時計を査定してみて、売値が高価だったととき、それを喋るなと言われても話してしまうんですよ(笑)。それが自然に口コミで広がって、「あの時計は高いらしい」という評判になる。それが資産を守るということですね。

リシャール・ミル自身が壮大なことを考えていて、「将来このブランドは、ピカソの作品のようになりたい」と言っています。基本的に数を作らない。カラーを変えるだけのモデルチェンジではなく、モデルごとにムーブメントからオリジナルで開発しています。前のモデルのムーブメントを使っていることはありません。それだけ手間をかけています。

戸賀:その一例がイベントの多さ、規模の大きさ、そして内容の深さですよね。取材やオーナーとしても参加しましたが、有名なのは昨年鈴鹿サーキットで開催された「リシャール・ミル鈴鹿サウンド・オブ・エンジン」です。あれだけのおもてなしというか、お客様に利益から還元しているのはリシャール・ミルだけだと思います。これはワールドワイドで展開されているんですか?

川﨑:基本的にワールドワイドでも行っています。例えば、フランスでル・マン・クラシックなどに投資していて、ファンを呼んでいます。お客様だけでなく、スタッフもファミリーを呼んで「エンジョイしようよ!」といった感じです。そういった文化を作り上げています。日本でも、日本オリジナルで色々と工夫しています。高価な時計を買って頂いているので、それなりのことができます。だったら中途半端なことはしないで、「え!」と誰もが驚くようなイベントにしたい。トガッチも驚いたと思うんですが、お客様とスタッフの数がほぼ変わらなかったでしょう? 損得を考えたらできないことが、リシャール・ミルにはできてしまう。ホスピタリティ、そしてイベントにはすごく力をいれています。

ホスピタリティにゴールはない

戸賀:昔のラグジュアリーブランドはリシャール・ミルが現在やっているようなことを、しっかり行っていましたよね。本当はそういったカスタマーへの還元こそが、ラグジュアリーブランドの証だったはずです。

川﨑:確かに個別展示会を、ホテルやレストランを貸し切ってやっていましたね。もちろん販売のために行っていることでもありましたが、お客様に付けていく場所を提供する意味もありました。「今度、このような場所でイベントを行います。ドレスコードはリシャール・ミルの時計をつけてドレスアップです」と言った具合に……。お互いの時計を見せ合うことで、その中で新しいモデルのお話もする。我々はラグジュアリーブランドの本来のあるべき姿を求めて、一生懸命イベントを行っています。イベントでは売り上げ目標を立てていません。イベントはお客様にエンジョイしてもらうところ。どれだけエンジョイして頂いたかで、次に返ってくる。そんな考え方です。

戸賀:素晴らしいです。日本で言うところの「おもてなし」を徹底してやってきているんですね。

川﨑:先日開催した宮古島のイベントでも、「時計は見られないの?」とお客様から言われましたしたからね(笑)。そこにはあまり注力していなくて、「今日のお客様の食事はどうする?」、「明日のゴルフはどうしよう?」ということに集中しています。「そういえば、時計ありますよ」といった感じです(笑)。究極のホスピタリティにゴールはないので、このままの姿勢でやり続けていきます。社員もヘロヘロになるんですが、お客様と同じ食事を食べられたり、宮古島になんてなかなか行けないじゃないですか。次はハワイでの開催も考えています。

戸賀:今、リシャール・ミルが好調な理由が分かった気がします。このおもてなしがマーケットを温めて、さらに大きくなるということですね。リシャール・ミルの社長として、今後狙っていることはなんでしょう?

川﨑:今の話がポイントを突いているんですが、大それたことは考えていません。3つあるんですが、まずヴィンテージ(中古)のマーケットの強化。2つめはホスピタリティの充実・追求。常にお客様に対してお金をしっかりかけて、自分たちも楽しみながら追求し続けることです。

3つめはここまで大きくなってきたので、社会的な目もあります。チャリティーの充実ですね。2011年の東日本大震災以降、様々な団体への寄付を続けていますが、さらに強化していくつもりです。3月20日に日本でのチャリティー基金を設立しました。今後も多額の寄付を多方面に行っていく予定です。チャリティを頑張っていることをどんどんお伝えすることで、お客様の安心感と満足度にもつながるはずです。中古マーケットの強化、ホスピタリティの追求、チャリティの充実、この3つが日本側としての目標で、ずっと続けていこうと思います。

戸賀:どれもオーナーとしてはすごく嬉しいことです。不愉快なことがまったくない。

川﨑:すると、それが次の購買につながります。

戸賀:発想自体が勝ち組のスパイラルですよね。急にはできないですから。

川﨑:そうですね。本国の方針と一致しないと、できないことです。

戸賀:仕事や人間関係でもそうですが、たとえお金を使えなくても、汗をかくことで喜んでもらえることもある。同じ日本人ですが、これだけ「おもてなし」に全てが着地すると、本当に感心しています。

川﨑:ラグジュアリー=おもてなしですよね。

戸賀:最後にリシャール・ミルの社長としてではなく、川﨑圭太さんとしての目標をきかせてください。

川﨑:ゴルファー川﨑としてですね(笑)。これも3つあります。「3つの100切り」です。体重、ウェスト、そしてゴルフのスコアです。

戸賀:なるほど(笑)。

川﨑:今はまだウェストが切れてしませんが、スコアはちょいちょい、体重は47、48くらいで、なんとかキープしています(笑)。スコアだけは、しっかり90台前半が出たりするんですけれど……。

戸賀:それくらいは私もお手伝いできるかもしれません。

PROFILE : リシャールミルジャパン代表取締役 川﨑圭太(かわさきけいた)

1961年、東京出身。大学卒業後、商社に入り、多くのスイス製時計ブランドを手がける。その後「リシャール・ミル」を日本において人気ブランドに押し上げ、2010年のリシャールミルジャパン設立時に代表取締役社長に就任した。ゴルフ歴は30年、ベストスコアは82。

撮影協力:
成田ゴルフ倶楽部
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