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高級クラブのママが見た「センスのいい男性」/銀座 クラブ ルナピエーナ・日髙利美

独自の審美眼と洞察力を持ち、各分野で活躍するスペシャリストを毎月お迎えして、センスの正体について探っていく連載「男のセンス学」。第7回は銀座にある紹介制高級クラブのオーナーママ・日髙利美さんが登場。夜の社交場で見た粋な立ち振る舞いや気遣いから、大人の男性に必要なセンスの本質を語っていただきました。

「センスがいい人」とは、外見で言うならば着こなしがおしゃれだったり、靴やかばん、時計やアクセサリーなどにこだわりを持っていて、自分の魅力を引き立たせることが上手い人のことを一般的に言うのだと思います。もちろん外見のセンスを磨くことも大切なことです。しかし、夜の銀座の社交場で多くの一流の男性と接してきた私にとって、粋なお酒の飲み方をされる男性に「センス」の良さを感じます。


夜の銀座の世界には、「永久指名制」「預けているボトルが空きそうなら入れてから帰る」「お店が静かな時は、次のお客様が来るまで帰らない」など、ホステスや黒服、そしてお客様の間で共有される暗黙のルールや常識があります。そのようなルールの中で、初めて連れて行ってもらったクラブが気に入り、また来たいと思った際に、紹介者に「お店をまた使わせてもらっていいか」と確認したり、「〇月〇日に接待で使わせてほしいのですがいいですか?」と承諾を得ることがあります。事前に許可を得る義理堅い方を間近で見ていて、心が温かくなるのは私だけではないはずです。

こうした心遣いや根回しができる人は、良好な人間関係を築け、仕事ができる人なのだと思います。外見のセンスの良さよりも大切なのが内面のセンスを磨くこと。センスの本質はその人の「心遣い」や「品格」に現れるものです。粋なお酒の飲み方をされるお客様は、内面のセンスも良い方ばかりです。例えば、一流の男性から共通して感じるのは「相手を思いやる視点」の素晴らしさです。話の切り出し方、共にいる人が楽しめる雰囲気作り、そして何より、自分が前に出るのではなく、相手を引き立てる配慮。これらを自然にできる男性こそ「センスがいい」と言えるのではないでしょうか。


センスの良さは、生まれ持った才能だけでなく、日々の行動で培うことができます。たとえば、一流のゴルファーがスイングを何度も見直すように、日常の振る舞いも練習が必要です。「どんな場面で自分をどう見せるか?」を意識し続けることで、センスは磨かれていきます。 さらに、センスを磨くには「観察力」が必要です。周囲の人々の言葉や仕草に目を向け、自分の立ち振る舞いを見直す。その繰り返しが、内面から自然ににじみ出る魅力、つまり「本物のセンス」を生むのです。

銀座の教え「一流は細部に宿る」

銀座で特に感じるのは、「細部までこだわることが決定的な差を生む」ということです。 例えば、お客様が右利きか左利きかを観察し、グラスを置く位置を調整してお客様の手を煩わせないようにさりげなく配慮することがあります。 そのことに気がついた左利きのお客様が「よく見てるね」と褒めてくださり、気が利くと気に入って下さって接待でよくお店を使ってくださるようになりました。こうしたちょっとしたことを細部までこだわると、大切にされる人になれるのです。

ゴルファーに置き換えると、たとえばゴルフのプレー中、相手のペースを乱さない絶妙な間合いを取ることや、キャディさんや同伴者への気遣いなどが挙げられます。 ある男性が初対面の方とラウンドをする際、相手に合わせて絶妙にペースを調整していたことがありました。自分が上手くプレーすること以上に、相手が気持ちよくプレーできるように心を配っていたのです。自分が打つタイミングやカートを進める速度をさりげなく調整し、相手にプレッシャーを与えないよう配慮されていました。この「間合い」の取り方こそ、センスのひとつだと思います。


またキャディさんへの接し方も、その人のセンスを感じるポイントです。ある男性はラウンド中、クラブを手渡してもらう度に、軽く会釈をし「ありがとう」と笑顔で声を掛けていました。また、ラウンド終了後には労いの言葉と共に「今日のアドバイス、とても助かりました」と具体的に感謝を伝えている姿が印象的でした。ゴルフは、その人の「内面のセンス」が外見以上に表れるスポーツです。間合いや気遣い、周囲への配慮といった要素がプレーを通じて自然に現れるため、一流の男性ほどその場全体を心地よくする力を持っています。

センスとは「心の余裕」

夜の銀座の世界だけでなく、私が「センスのいい男性」に共通して感じるのは「心の余裕」です。忙しい日々の中でも、自分だけではなく周囲に目を向け、穏やかに対処する姿勢。これは、ビジネスやゴルフのプレーでも大きな武器となります。そして、その余裕は人を惹きつけ、自然と魅力的な人間関係を生むのです。

日髙利美

銀座 クラブ ルナピエーナ オーナーママ/一般社団法人 やまとなでしこ協会 代表理事/著者・講演家・研修講師。銀座歴31年、銀座ママ歴26年、クラブ経営23年。多くの一流ビジネスマンへの接客から銀座流のおもてなしを身につけ「コミュニケーションのプロフェッショナル」として書籍や雑誌、TVなどのメディアでも活躍。

公式サイト http://toshimi-hidaka.com/

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Illustration : Masashi Ashikari

Edit : Yu Sakamoto

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