数ある時計ブランドの中でもブレゲは特別な存在だ。創設者はトゥールビヨンや天文機構などの複雑機構をいくつも発明し、500年を超える機械式時計の歴史の中で、今も“史上最高の天才時計師”とたたえられるアブラアン-ルイ・ブレゲ(1747〜1823)。その偉業は永遠に色あせることはない。そのスタイルや技術は、子孫やその志を継ぐ時計技術者たちに時代を超えて継承され発展を続けている。
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ブレゲはオメガやロンジン、ティソなどスイスの歴史ある時計ブランドを傘下に持つ世界最大の時計コングロマリット企業スウォッチ グループに属し、そのブランドマップの頂点に位置付けられている。 コンプリケーション(複雑時計)を筆頭に、創業者ブレゲの歴史や、彼が創造した多彩なスタイルを継承するさまざまなコレクションが展開されている。
今回紹介する「マリーン クロノグラフ 5529」は、フランス海軍の御用達時計師として航海用のマリンクロノメーターを開発・製造・供給した歴史からインスパイアされたラグジュアリーな「マリーン」コレクションの最新モデル。
だれが見ても心惹かれるこのモデルのいちばんの魅力は碧い海を彷彿させるディープブルーの文字盤だ。3時位置に15分計、6時位置に12時間計、そして9時位置にスモールセコンドを配置した中央の部分には、社内の職人が伝統的な旋盤を使って手作業で行ったギョーシェ彫り で、波のモチーフが美しく描かれている。
さらに文字盤の8カ所のインデックスにはバゲットカットダイヤモンド(合計約0.248カラット)がセットされ、ベゼルにセットされた90個のバゲットカットダイヤモンド(合計約3.625カラット)とともに、ギョーシェ彫りが生み出す味わい深い輝きを引き立てている。
自動巻きムーブメントも逸品だ。スウォッチ グループとブレゲは2010年代からいちはやくシリコン素材を心臓部に導入してきた開拓者だが、このモデルに搭載されているムーブメント「キャリバー 582 QA」も、インバーテッド・レバー脱進機やブレゲ開発の平ヒゲゼンマイなど心臓部の部品にシリコン素材を採用している。またブラックDLC加工が施された自動巻きのローターは、コレクション名にふさわしく「船の錨」がモチーフに。こうしたメカニズムの構造や時を刻む姿をいつでもシースルーバックのケース裏から鑑賞することができる。
現代のクロノグラフはスポーティでシャープな印象を追求したものが主流。このモデルはそれとは一線を画したラグジュアリーなハイジュエリーモデルだ。バゲットカットのダイヤモンドを文字盤やベゼルに贅沢にセッティングしながらも、派手というより大人の余裕と落ち着いた風格が漂う。クロノグラフというスポーティな機能を前面に押し出すことなく、控えめに上品に楽しみたい。このモデルはそんな人にぜひ着けてほしい。
BREGET / ブレゲ
マリーン クロノグラフ 5529 Ref. 5529 1960万2000円(税込)
※ケース素材は18KYGまたは18KWG、ブレスレットはレザー、またはラバーストラップ
- SPEC
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- ケース径:42.3 ㎜
- 自動巻き、18Kローズゴールドケース、ラバーストラップ、30m防水
お問い合わせ先
- ブレゲ ブティック銀座 TEL : 03-6254-7211
Text : Yasuhito Shibuya