
友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 「文喫 六本木」副店長の中澤佑さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。
「ポートレイト・イン・ジャズ」/村上春樹
村上春樹を読んだことはありますか? 『ノルウェイの森』や『海辺のカフカ』、『1Q84』など、現実と幻想の入り交じる物語は世界中の読者の心をつかんできました。一方、独特な文体や世界観のイメージが先行し、苦手意識を抱く人の多い作家でもあります。今回はそんな“読まず嫌い”をする方へ、村上ワールドの入り口をご案内します。
取り上げるのは小説…ではなくエッセイです。イラストレーターの和田誠が描いた26人のミュージシャンに、村上が言葉を紡ぐ『ポートレイト・イン・ジャズ』は、作家のジャズ愛に満ちた作品。実は村上、作家になる以前は7年ほどジャズ喫茶を経営していました。音楽の素晴らしさを明快に伝える本作は、メタファーが多いことも魅力の一つになっています。
たとえば、マイルズ・デイヴィスをバーで聴く場面。
―――トニー・ウィリアムズの刻む、白い三日月のような怜悧(れいり)なリズムを背後に受けながら、マイルズはその魔術の楔(くさび)を、空間の目につく限り隙間なくたたきこんでいく。彼は何も求めず、何も与えない。そこには求められるべき共感もなく、与えるべき癒しもない。そこにあるのは、純粋な意味でのひとつの「行為」だけだ。――
まるで文章から音楽が立ち上がり、頭の内側で鳴り響くよう。世界で最も有名な日本人作家が語る“偏愛”に、ぜひ耳目を傾けてみて。
「ポートレイト・イン・ジャズ」村上春樹(新潮文庫)/¥1,100(税込)
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文喫 六本木 副店長 中澤佑
2017年日本出版販売入社。企業内ライブラリーや商業施設のブックディレクションを手掛け、2023年より「本と出会うための本屋 文喫」の事業担当として、文喫六本木やBUNKITSU TOKYOの企画選書や運営などを行う。2026年より現職。
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文喫 六本木

文化を喫する、入場料のある本屋。人文科学や自然科学からデザイン・アートまで約3万冊の書籍を販売している。閲覧室や研究室、喫茶室を併設し、企画展も定期的に開催。普段あまり出会うことのない新たな興味の入り口となっている。
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
営業時間:9:00~20:00(L.O. 19:30)/不定休
https://bunkitsu.jp/
Edit : Hiroto Goda








