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温泉小説に浸かる冬読書 約10ページで“小説の神様”の言葉に触れる

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「小僧の神様/城の崎にて」/志賀直哉

年末年始はいかがお過ごしでしたか。これから一年で最も寒い時季を迎えますが、こんな季節には温かな温泉、旅館の美味しいご飯に重めの布団、しっとりとした温泉街の石畳などが恋しくなります。

作家本人の実体験がもとになった温泉小説の名作『城の崎にて』。大けがをして温泉地で療養する主人公が、死にかけながらも生きている自分と、偶然目にした生物の死とを思い合わせて思考を深めます。深いテーマを持ちつつも、10ページほどの物語は重苦しくなく、生と死が両極端なものではないことをストンと飲みこませてくれます。

“小説の神様”とも呼ばれる志賀直哉の作品は、短い文章で日常の中の大切なことにハッと気づかせてくれます。新たな年が始まった今、ぜひ読んでほしい作家です。

ちなみに物語の舞台の城崎温泉では、さらなる温泉地文学を生み出すための『本と温泉』というプロジェクトがあり、城崎で書かれ、城崎でしか買えない本が出版されています。本書を読んで実際に行きたくなった方は、是非温泉と合わせて文学も楽しんでみてください。

「小僧の神様/城の崎にて」志賀直哉(新潮社)/¥649(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2021年4月より文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Hiroto Goda

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