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オリンピック熱高まる今こそ 読書でパリの歴史に思いを馳せる

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか? 現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・及川貴子さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「カルチェ・ラタン」/佐藤賢一

パリオリンピック真っただ中のテーマは、“パリが舞台の小説”です。作品のタイトルであり、舞台である「カルチェ・ラタン」は、古くから学生街として有名な区域。時は16世紀、この街で起こる殺人事件を、意気地なしのお坊ちゃんで新米夜警隊長のドニと、パリ大学神学部きっての俊才学僧で遊び人のミシェルが解決していきます。

しかし、事件はさらに宗教改革の時代を背景にした大きな事件へとつながっていきます。(…と書くとなんだか堅苦しそうですが)女性問題や嫉妬など下世話で人間味あふれる話題も多く、フランシスコ・ザビエルなどの歴史上の有名人物も登場。ミステリー要素もふんだんにあり、意表を突く展開に気づけばページをめくる手が止まらなくなります。

――これがカルチェ・ラタンだ。夢と理想が熱く息づく街なんだ――

――いつの日か、あとにしなければならない。カルチェ・ラタンとは、そういう場所なのかもしれない。二度とない青春の季節を終えたなら、みんな、それぞれの人生に旅立たねばならないのだ――

――本文より

西洋史に通じ、直木賞作家でもある著者ならではの印象の多彩さが、パリのイメージと重なります。あなたも、自宅でパリの空気を味わってみませんか。

「カルチェ・ラタン」佐藤賢一(集英社)/¥550(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 ブックディレクター 及川貴子

2018年日本出版販売入社。2021年4月より文喫 六本木のブックディレクターとして、企画選書や展示イベント企画、本のある空間のプロデュースなどを行う。

Edit : Junko Itoi

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