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NYブルックリンを舞台に クリスマスの「ちいさな奇跡」を描く珠玉の一冊

友人からでも、家族からでも、書評でも、課題図書でもない「オススメの本」を読んだことはありますか?現実と少し距離を置く“小説の世界”への入り口は、時に不意の方が新鮮で心踊りそう。東京・六本木の本屋「文喫 六本木」のブックディレクター・中澤 佑さんにBRUDER読者をイメージした一冊を選んでもらいました。

「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」/ポール・オースター

クリスマスをテーマにした物語は、世の中にたくさんあります。チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」、エーリヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」は言うに及ばず、近代以降の作家であれば、聖夜を舞台にした作品は絵本を含めたら星の数ほどあるでしょう。その中で珠玉の一冊を選ぶなら、本作はいかがでしょうか。

舞台はNYのブルックリン、おそらく著者であろう小説家が語り手です。クリスマスショートストーリーの筆が進まず、気分転換に立ち寄った煙草屋で、顔見知りの店主オーギー・レンに会います。世間話ついでに悩みを打ち明けると、最高のネタがあると、ひとつの体験談を語ってくれます。

それは聖夜の夜に起きた、本当にちいさな奇跡の話なのですが(詳しくは本書をご覧ください)、都会の下町で毎日をささやかに生きる人々の息づかいが感じられる、短いながらも味わい深い語りが心に残ります。思わずついた「嘘」が誰かの救いになり、その話を聞いた者も温かい気持ちになれる。そんな物語(虚構)が持つ素晴らしさを感じる作品です。センチメンタルすぎない、静かな余韻が心地よい大人のストーリーをお楽しみください。

「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」/ポール・オースター(スイッチ・パブリッシング)/¥1,870(税込)

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COOPERATION

文喫 六本木 副店長/ブックディレクター 中澤 佑

2017年日本出版販売入社。企業内ライブラリーや商業施設のブックディレクションを手掛け、2023年より文喫 副店長として企画選書や展示など、本のある空間プロデュースを行う。

Edit : Junko Itoi

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