
時代やトレンドに左右されることなく、長年愛用できるアイテムには格別な存在感がある。手にするだけで、これまで以上の満足感を得られ、自分自身もさらに磨かれていく。BRUDER編集部が選んだ、そんな『大人名品』と呼ぶにふさわしいアイテムを紹介します。
大人名品vol.15
New Balance(ニューバランス)『574』
靴はファッションと常に連動し、着こなしの完成度を高めるには欠かせないアイテムだ。なかでもスニーカーは機能性とファッション性を兼ね備えた特別な存在で、1990年代後半、日本で巻き起こったアメカジブームでも存在感を発揮した。紺ブレにチノパン。色落ちしたデニムにオックスフォードシャツ。多くのファッション好きが、定番スタイルの足元に選んでいたのがニューバランスの『574』である。
派手ではない。むしろ驚くほど“普通”なのだが、それこそが最大の武器でもある。ランニングシューズとして生まれながら、いつしかファッションの名脇役となった一足は、なぜこれほど長く愛され続けているのだろうか。
すべては足の悩みから始まった
1906年、イギリスからアメリカへ渡った創業者のウィリアム・J・ライリーは、アーチサポートインソールの研究を行っていた。そのヒントになったのは、意外にも“鶏の足”だったというから驚きだ。三本の爪で絶妙なバランスを保ちながら立つ姿を観察し、人間の足にも同じ発想を応用できるのではないかと考えた。

革靴が主流だった当時、足の故障や偏平足に悩む人たちが少しでも快適に過ごせるようにと考案されたのがアーチサポートインソールで、履く人にこれまでにない感覚をもたらした。社名の由来となった「新しい(New)バランス(Balance)」は、単なるネーミングではなく、ブランドの思想そのものだった。
快適性を追い求めた実用品

それまでオーダーメイドのランニングシューズを作っていたニューバランスは1960年、ブランド初の一般向けランニングシューズ「Trackster」を発売した。最大の特徴は“ウイズサイジング”で、足長だけではなく、足囲まで選べる設計だ。速く走ることよりも先に、快適に走れることを重視した。

1970年代に入り、アメリカで空前のランニングブームが訪れると、ニューバランスは機能性を武器に支持を広げていく。1974年には、現在ではお馴染みとなった“Nロゴ”が誕生。ファッションのためではなく、サポート性を高める発想から生まれたのだが、結果的にデザインとして定着したのである。

1975年、伝説的な長距離ランナーのトム・フレミングが、ニューヨークシティマラソンで優勝した時に履いていたのは『320』だった。さらにランニング専門誌「Runner’s World」で高い評価を獲得するなど、ニューバランスの名は世界へと広がっていった。
『574』という完成形

1980年代後半になると、ランナーたちは舗装路だけではなく、未整備の路面も走るようになった。そこで誕生したのがオフロードランニングモデルの『576』だ。悪路への対応力を備えたこのモデルも人気を博し、そのDNAを受け継ぐ存在として1990年代後半に登場したのが『574』である。
574は決して最先端のモデルではなかった。細すぎず太すぎないシルエットに、派手すぎないデザインと高機能を過剰にうたわない快適性。だが、絶妙なこのバランスこそが最大の魅力だ。実際、海外のスニーカーファンの間では「最もニューバランスらしい一足」と評されることも少なくない。
ファッションが見つけた名脇役

1990年代後半、日本でアメカジやアイビースタイルが再評価され始めると、574は新たな居場所を見つけることになる。革靴ほど堅苦しくなく、スポーツシューズほどカジュアルすぎない。その中間にある絶妙な空気感が、着こなしに“こなれ感”を生み出した。
特にグレーは主役を食わない、名脇役のような絶妙な存在感でコーディネートを支える象徴的カラーだ。不思議なことに574を履いている人は「574を履いています」と主張しない。それはきっと、このスニーカーがトレンドを追うためではなく、自分らしくいるために選ばれてきたからだろう。
時代を超え“名品”とされる所以
当然ながらニューバランスは574だけではない。900番台、1000番台、2000番台…と数多くの人気モデルが存在する。そして、根底に流れる思想はどれも変わらない。足を支え、快適性を追求し、履く人の日常に寄り添う。トレンドの中心に立つことはなくても、いつだって足元を支えてくれる574は時代を超えて愛される名品である。
お問い合わせ先
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株式会社ニューバランスジャパン TEL: 0120-85-7120
Text : Yumi Takahashi
Edit : Junko Itoi








