時代やトレンドに左右されることなく、長年愛用できるアイテムには格別な存在感がある。手にするだけで、これまで以上の満足感を得られ、自分自身もさらに磨かれていく。BRUDER編集部が選んだそんな『大人名品』と呼ぶにふさわしいアイテムを毎月紹介します。
大人名品vol.9
TOD’S（トッズ）『ゴンミーノ』
“メイド・イン・イタリー”の靴には、格別な贅沢が宿っている。見た目の気品、足を包み込むような柔らかさ、歩くたびに伝わる上質な履き心地。そんな機能美とエレガンスの融合を、世界に示してきたブランドがある。高級皮革ブランド「TOD’S（トッズ）」だ。
ブランドを象徴するのが『ゴンミーノ』。ドライビングシューズとして誕生し、いまやタウンユースとしてスマートな存在感を放つ。控えめでありながら圧倒的な洒脱さを備えたこの靴は、本物を知る大人に選んでほしい一足だ。
運転の所作まで美しく魅せるドライビングシューズ
ドライビングシューズは運転中にお気に入りの革靴を傷つけたくないという、靴を愛するイタリア人らしい発想から生まれた。アクセルワークによる摩擦からヒールを守り、快適に運転できる。車を降りてもそのまま街に溶け込めるように、“ファッションも機能も妥協しない”思いから生まれた。履くたびに上質さが伝わり、使い込むほどに艶が増していく。その一足に宿るのは、イタリア人の審美眼とクラフツマンシップの真髄だ。
祖父の工房から、世界ブランドへ
トッズの原点は、1900年代初頭にまでさかのぼる。現会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレ氏の祖父が、マルケ州で小さな靴工房を営んだのが始まりだった。三代にわたって靴職人の家系に生まれたディエゴ氏は、20代で家業を継ぎ、渡米中に出会ったドライビングシューズに感銘を受けた。帰国後ほどなくして、軽くて柔らかな履き心地とモダンな感性を融合させた新しいイタリア靴＝「ゴンミーノ」を完成させた。
当時のイタリアにはほとんど存在しなかった、軽快で機能的な靴は瞬く間に話題となり、多くのセレブリティやファッショニスタの足元を飾った。イタリアの“美”と“実用”を融合した靴として、「トッズ」の名は世界的なアイコンへと躍進した。
職人の手が生む、120の工程
トッズが何よりも誇るのは、クラフツマンシップへの飽くなき追求だ。カッティングから縫製、仕上げに至るまでの工程を熟練職人の手が担う。一足を完成させるまでに要する工程は、実に120にも及ぶ。『ゴンミーノ』の象徴である“ラバーペブル”は、職人が目打ちで100個以上の穴を開け、一つひとつ丁寧にゴム突起を埋め込んでいく。その緻密な作業が、軽やかで柔らかな履き心地を生み出す。履いた瞬間に感じるフィット感と包み込むような柔らかさ。そして、見る者を魅了する美しいフォルム。それらすべては、時間と情熱を惜しまぬ手仕事の結晶でもある。
普遍を極めたデザイン、進化する魅力
『ゴンミーノ』の魅力は、シンプルでありながら計算された美しさにある。余計な装飾を排し、素材の質感とシルエットそのものが語るラグジュアリー。スエードやカーフなど素材のバリエーションも豊富で、ベーシックカラーからカラフルなアクセントカラーまで実に多彩だ。自分のライフスタイルに寄り添う“相棒”を見つけられるのも、この靴の魅力である。さらに『シティ ゴンミーノ』や、近年では円錐台のペブル ソールでクッション性を高め、スニーカーに近い快適な履き心地を実現した『ゴンミーノ バブル』といった進化型も登場している。
また以前はフェラーリ、現在はランボルギーニといった名門とのコラボレーションも話題を呼び、伝統を礎に、革新を続けるブランドとして新たな地平を切り拓いている。
未来へと受け継がれる“メイド・イン・イタリー”
「トッズ」が目指すのは単なる高級靴ブランドではない。「良いものをつくるには、良い環境が必要」という理念のもと、工場の環境整備や後継者の育成にも力を注いでいる。本社内に設立されたトッズ・アカデミーでは、若手職人の支援を目的に、熟練の職人と学生が共に学びながら、技術と美意識を次世代へと継承している。この学びと創造の循環こそ、ブランドが長く愛される理由のひとつであり、“メイド・イン・イタリー”という言葉に、真の意味を与え続けている。
足元から、人生を上質にする一足
『ゴンミーノ』は履くたびに美学を感じさせる“人生のパートナー”ともいえる。軽やかに街を歩くその足元から、イタリアの品格と情熱が静かに香り立つ。スニーカーでは得られない大人の余裕と気品。踏み出すたびに上質さを感じさせてくれるだろう。
お問い合わせ先
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トッズ･ジャパン TEL：0120-102-578
Text : Yumi Takahashi
Edit : Junko Itoi
