
電動化や高度な電子制御によって、スーパースポーツカーはかつてない速さを手に入れつつある。一方で、往年の名車に着想を得たデザインや、ドライバー自身が操作するマニュアルトランスミッション(MT)など、クルマを操る実感を見直す動きも広がっている。そうした潮流のなか、マクラーレンは2026年8月14日、米カリフォルニア州で開催された「モントレー・カー・ウィーク」で、新たなコンセプトモデルを披露した。
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その名は「McL 6GT」。1960年代に端を発するブランドのロードカー構想を現代に重ねながら、V8エンジン、後輪駆動、そしてMTを組み合わせた、きわめてプリミティブな魅力を打ち出している。マクラーレンの市販車といえば、1992年の「マクラーレンF1」や、2011年に登場した「MP4-12C」以降のモデル群を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、その源流には、創始者ブルース・マクラーレンが思い描いた未完のロードカー計画がある。

「M6GT」は、マクラーレンが1960年代末に製作したロードカーのプロトタイプ。レーシングカー「M6A」をベースに公道走行を可能としたモデルで、現在のマクラーレンのロードカーへとつながる原点の一台だ
それが、1969年に製作された「M6GT」だ。北米のスポーツカーレース「Can-Am」で活躍したレーシングカーをベースに、日常の道を走れる高性能モデルを目指した一台であり、レースで培った思想をロードカーへ持ち込もうとする意欲的な試みだった。ブルース自身も開発車を日常的に走らせていたが、1970年、テスト中の事故で32歳の若さで急逝した。量産化は実現しなかったものの、この構想はマクラーレンにとって、市販スーパースポーツを生み出す原点のひとつとなった。

今回のコンセプトは、その未完の夢を単に懐古的に再現するのではなく、現代の技術と造形で再解釈したものだ。低くワイドなプロポーション、滑らかに流れる面構成、そして簡潔な後ろ姿には、M6GTの面影が宿る。一方で、過度な装飾を避けた抑制の効いたデザインにより、現在のマクラーレン各車とは異なる、静かな存在感を放っている。

ドアはブランドを象徴するディヘドラル式を採用する。室内で中心的な役割を担うのは、マクラーレンF1以来となるマニュアルトランスミッションだ。速さを追い求めるだけでなく、操作する過程そのものを体験として際立たせている。シフトレバーの下には機械式リンケージが露出し、ギアを選ぶ動作そのものを視覚的にも伝える。クラッチを踏み、手でレバーを動かし、エンジンの反応を感じながら走る。その一連の所作によって、McL 6GTはドライバーと機械の距離を縮める一台として仕立てられている。

油圧式ステアリングや後輪駆動も、その考え方を補強する要素だ。高度な制御で限界性能を引き上げるのではなく、手応えや挙動をわかりやすく伝えることを重視する。その姿勢は、現代のスーパースポーツに対するマクラーレンなりの別解といえる。

基本骨格には軽量なカーボンファイバー製モノコックを用い、ボディにも同素材を採用する。ミッドシップにV8エンジンを搭載することは明らかにされているが、最高出力や最大トルク、車重、加速性能といった詳細な数値は公表されていない。だからこそ、このモデルが語ろうとしているのはスペック競争ではない。歴史を受け継ぎながら、ドライバーがクルマと向き合う時間そのものに価値を見いだす。その明確な方向性が、McL 6GTを特別な存在にしている。

半世紀以上前にブルース・マクラーレンが思い描きながら、完成を見ることのなかったロードカー。その精神を受け継ぐ市販版は、2028年の登場が予定されている。

マクラーレン McL 6GT 車両本体価格 未発表
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Text : Takuo Yoshida








