
英国車には、不思議な品格がある。それは豪華さを競うものではなく、長い歴史の中で育まれた美意識や落ち着きが自然とにじみ出るようなものだ。英国の伝統あるクラブハウスや名門ゴルフコースに流れる空気感とも、どこか重なるものがある。その世界観をSUVというカテゴリーで表現している一台が「レンジローバースポーツ SV(レンジローバーの最高峰モデルに与えられる称号)」ではないだろうか。
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これまでにも何度か試乗してきたが、今回ステアリングを握った「SVカーボンP635」は、その完成度の高さを改めて実感させてくれた。フロントリップスポイラーやボンネットに加え、23インチホイールまでカーボン製を採用し、軽量化による運動性能の向上を実現。心臓部には、最高出力635psの 4.4リッターV8ツインターボエンジンを搭載する。数字だけを見ればスーパーカーに匹敵する性能だが、この一台はその力を必要以上に誇示しない。

ドアを開けてシートに身を沈めると、まず感じるのは室内の静けさだ。水平基調でまとめられたインテリアは端正で、物理スイッチを最小限に抑えたコクピットはすっきりとした印象を与える。13.1インチのタッチスクリーンの反応は素早く、空調や走行モードの切り替えも直感的だ。

レザーや金属、カーボンを組み合わせた素材使いは上質で、ダイヤルやスイッチの仕上げは適度に抑制的だ。華美ではないが、細部まで丁寧に仕立てられた空間は、このブランドらしい世界観を感じさせる。

走り始めると、23インチホイールを履いているとは思えないほど路面の凹凸をしなやかに受け流す。ボディはほとんど上下動しない。エアサスペンションと油圧連動式ダンパーを組み合わせた「6Dダイナミックサスペンション」がロールやピッチを巧みに抑えながら姿勢を安定させ、路面から伝わる衝撃を穏やかに吸収していく。ワインディングでは正確なライントレースを見せ、高速道路では高級サルーンのような落ち着きを感じさせる。この乗り味は、長距離移動の多いゴルファーにとって大きな魅力になるだろう。

しかし、この一台の魅力は快適性だけではない。ステアリングスポークの6時位置に備わるSVボタンを押すと、クルマの表情は一変する。アクセルレスポンスは鋭くなり、ステアリングに重みが加わる。サスペンションは引き締まり、V8エンジンのサウンドも存在感を増していく。

高速道路の合流でアクセルを踏み込めば、大柄なSUVとは思えない伸びやかな加速を見せる。それでいて挙動は終始落ち着いており、ドライバーを必要以上に緊張させない。普段は快適なラグジュアリーSUVでありながら、必要な場面ではスポーツモデルらしい鋭さを見せる。この切り替えの自然さこそ、他の高性能SUVではなかなか味わえないSVカーボンP635ならではの魅力と言える。実用性も申し分ない。ラゲッジスペースにはキャディバッグをクロスする形で2本積載でき、3本積む場合でもリアシートの片側を倒せば余裕がある。リアゲートは大きく上に開き、積み降ろしもしやすい。

クラブハウスへ静かに乗り付ける姿は、レンジローバーらしい品格そのもの。SVモードに切り替えれば、ラグジュアリーは一瞬で牙をむく。この二面性を高い完成度で両立させたことこそ、SVカーボンP635がブランドの頂点に立つ理由なのだと思う。そのすべてを、この価格帯で味わえるスポーツカーは、世界を見渡しても決して多くない。走る歓びを日常の中で無理なく楽しめる一台だからこそ、多くのファンを惹きつけ続けているのである。

ランドローバー レンジローバースポーツ SVカーボンP635 車両本体価格 2586万円(MY26 税込)
- ボディサイズ | 全長 4960 X 全幅 2005 X 全高 1820 mm
- ホイールベース | 3000 mm
- 車両重量 | 2572 kg
- エンジン | V8 ツインターボ
- 排気量 | 4394 cc
- 最高出力 | 635 ps
- 最大トルク| 750 N・m
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Text : Takuo Yoshida








