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静かに風をまとう911タルガという優雅な選択 ポルシェ「911タルガ4GTS」

ポルシェ「911」というクルマがカバーする領域は広い。レーシングカー由来のピュアスポーツから、長距離移動を快適にこなすグランドツアラーまで。その膨大なラインアップの中でも独自の立ち位置を築いている一台が「タルガ」だ。

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最新モデルを目の前にしてまず印象的なのは、独特のルーフ構造が生み出すたたずまいだ。Bピラー部分に備わるタルガ バーは、ロールオーバープロテクションとしての役割を担いながら、911の中でも特別な存在感を形成している。1960年代から続くこのスタイルは、最新の992.2型においても極めて象徴的なデザイン要素になっている。

そもそもタルガという名称は、ポルシェが数々の勝利を収めた伝説的公道レース「タルガ・フローリオ」に由来する。クーペの堅牢さとも、フルオープンの華やかさとも異なる独自のシルエットは、レーシングヒストリーを背景にしながらも、どこか優雅だ。

実際、ゴルフ場の車寄せに滑り込ませた瞬間、その絶妙な存在感に気づかされる。フルオープンモデルのように周囲の視線を過剰に集めるわけではない。それでいて、低く構えたボディと美しいルーフライン、金属的な輝きを放つタルガ バーが静かに個性を主張する。その“ほどよさ”こそが、最大の魅力なのかもしれない。

スイッチ操作ひとつで始まるトップの開閉も、このモデルならではの見どころだ。リアウインドウ全体が大きく持ち上がり、頭上のルーフパネルが滑らかに収納されていく。その一連の動作は約20秒。複雑な機構を、まるで儀式のように静かかつ正確に動かしていく様子には、ポルシェの工作精度の高さが凝縮されているように感じられる。

ドアを開けて乗り込めば、室内は現代の911らしく端正だ。メーターパネルはデジタル化されているものの、中央にタコメーターを配置する伝統的レイアウトは継承されている。センターコンソールまわりの操作系も節度感があり、タッチ操作主体になりながらも使い勝手に不満はない。特にドライブモード切り替えや空調操作など、走行中に触れる機能は直感的に扱える印象だ。

低めの着座位置に身を沈めると、前方へ大きく開けたウインドウ越しにフロントフェンダーの盛り上がりが見える。この独特の景色は911ならでは。そしてタルガでは、そこへ頭上から自然光と風が入り込むことで、クーペとは異なる開放感が加わるのである。

走り出してまず感じるのは、想像以上の快適性だ。部分的なオープンエア構造でありながら、高速道路での風の巻き込みは驚くほど少ない。襟元を風が激しく叩くこともなく、ロードノイズも巧みに抑え込まれている。オープン状態のまま高速巡航していても、パッセンジャーと自然な声量で会話できる静けさは、タルガならではの美点といえるだろう。

今回試乗した「911タルガ4GTS」は、初のハイブリッドシステムを搭載する新世代モデルで4輪駆動だ。リアに搭載されるパワーユニットは3.0リッター、水平対向6気筒ターボ。システム最高出力は541ps、最大トルクは570N・mに達する。加えて、48Vシステムによる電動ターボとモーターアシストを組み合わせることで、従来以上にレスポンスを高めている。

アクセルを踏み込んだ瞬間の加速感は鮮烈だ。だが、その速さは暴力的ではない。ターボの過給感を強く意識させることなく、回転上昇とともに速度だけが滑らかに積み重なっていく。ワインディングへ入ると、フロントが自然に向きを変え、AWDシステムが路面を確実につかみ続ける。オープンエアでありながらボディ剛性に不安はなく、コーナーをなぞるように駆け抜けていく感覚には、このクルマらしい精密さがある。

高速道路では、安定感がさらに際立つ。速度域が上がるほど車体全体が路面へ吸い付くように落ち着き、長距離移動における疲労感も少ない。頭上から風を感じているのに、キャビンにはどこか穏やかな空気が流れている。目的地へ急ぐというより、移動時間そのものを愉しみたくなる感覚。その上質な余裕は、一般的なオープンスポーツカーとは明らかに異なる。

メーターパネルやセンターコンソールにはハイブリッドシステムの作動状況も細かく表示されるが、実際にモーターの介入を強く意識する場面は少ない。印象として残るのは、ただ「淀みなく速い」という事実だけだ。電動化を性能向上のために自然に溶け込ませているあたりにも、現在のポルシェらしさが表れている。

クーペとカブリオレの中間ともいえる成り立ちによって、911らしい堅牢な走りと爽快なオープンエア体験を高次元で両立するタルガ。それでいて、どこか控えめで上品に映るのは、このボディ形式が長い歴史の中で磨き上げられてきた伝統だからだろう。

街中でも決して多くは見かけないが、その存在を知り、あえて選ぶオーナーには、速さやスペックだけではない価値を見抜く感性がある。タルガとは、911の中でも特に“余裕”を知る人のためのモデルなのかもしれない。

ポルシェ911タルガ4GTS  車両本体価格 2747万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4555 X 全幅 1870 X 全高 1305 mm
  • ホイールベース | 2450 mm
  • 車両重量 | 1760 kg
  • エンジン | 水平対向6気筒ターボ
  • 排気量 | 2981 cc
  • 最高出力 |  541 ps(398 kW)
  • 最大トルク |  570 N・m
  • モーター最高出力 |  56 ps(41 kW)
  • 変速機 |  8速 AT

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Text : Takuo Yoshida

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