
BMWのフラッグシップ「7シリーズ」がフェイスリフトによって、存在感をさらに際立たせた。一般的にモデル途中の改良は“化粧直し”にとどまることも少なくない。だが今回は様子が違う。BMWが次の時代を見据えて掲げる「ノイエクラッセ」の思想と技術が流れ込み、変更は表層にとどまらない。むしろ“世代をまたぐ更新”といっていい規模感だ。
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まず目を引くのはフロントマスク。巨大なキドニーグリルと細いヘッドランプという構成自体は踏襲されているが、細部の整理によって印象は大きく変わった。ヘッドランプ下に配置されていたウインカーやポジションランプが姿を消し、光の要素が引き算されたことで、メインランプの細さが際立つ。グリルは四隅まで面積を拡張し、アイコニックグローによって輪郭が浮かび上がる。威圧ではなく、制御された存在感へ。そんな方向性が見て取れる。

リアも同様に変化は明確だ。横一線のテールランプが強調され、すでに発表されている次世代モデルと歩調を合わせたデザインへと進化している。

サイドビューで効いてくるのが22インチへと拡大されたホイールだ。わずか1インチの差が全体のたたずまいを引き締め、フラッグシップらしい落ち着きをもたらしている。

室内に入ると、変化はさらに象徴的になる。ダッシュボードを横断するディスプレイ構成は、新たに助手席側にも情報パネルを標準装備。最大のトピックは、フロントガラス下縁に投影される「BMWパノラミックビジョン」だ。視線移動を抑えながら情報を取得できる設計は、“操作する”から“自然に使う”への転換を感じさせる。このインターフェイスが実際の運転環境でどこまで機能するのか。日中と夜間での視認性の違い、情報の取りやすさは、試乗の際に確かめておきたいポイントになるだろう。

運転支援も大きく進化した。新たに導入される「BMWシンバイオティックドライブ」は、AIを介してドライバーとシステムの関係性を再定義するもの。従来のACC(アクティブ クルーズ コントロール)では、高速道路の渋滞時など60km/h以下でハンズフリー走行が可能だったが、新型ではそれが130km/hまで拡大される。ここで気になるのは、その“自然さ”だ。介入のタイミングや加減速の質がどこまで滑らかに制御されるのか。ドライバーが主導権を持ちながら、システムとどう共存できるのかは、このクルマの完成度を測る重要な指標になる。

パワートレーンは48Vマイルドハイブリッド、PHEV、ディーゼルといった既存の構成を維持。ただし今後、純ガソリンV8を搭載するMパフォーマンスモデルが追加予定とされている点は興味深い。電動化が進む時代にあっても、選択肢としての内燃機関を残そうという姿勢がうかがえる。このクラスのセダンにおいては、移動そのものの“質”も見逃せない。とくに高速域での直進安定性や、路面の継ぎ目を通過する際の微振動の処理。ステアリングの落ち着きとあわせて、長距離移動時の疲労にどこまで影響するのかは実際に確かめたいところだ。

後席の快適性も同様に重要になる。同乗者として過ごしたときの疲労感、静粛性、シートのサポート性。単に広いだけでなく、長時間でも身体に負担を残さない快適さが備わっているかどうかは、フラッグシップとしての本質に関わる部分でもある。さらに実用面ではラゲッジスペースも確認しておきたい。キャディバッグの積載性はもちろん、開口部の高さや奥行き、積み下ろしのしやすさ。ゴルフという日常の使い方において、ここは意外と差が出る部分だ。

つまり、このクルマは“思想”だけで語るものではない。使って初めて、その価値が見えてくる。伝統的なフォーマットの中に、ノイエクラッセ由来の新しい思想をどう溶け込ませるか。その解答のひとつが、この7シリーズなのかもしれない。

Text : Takuo Yoshida








