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アイコンは電動で再解釈される フォルクスワーゲン「ID.Buzz LWB」という移動体験

フォルクスワーゲン「ID.Buzz」。このクルマを前にすると、思わず頬が緩む。ミニバンという枠に収まりながら、2トーンカラーで塗り分けられたボディはどこか愛嬌があり、クルマ好きであれば往年の名車「タイプ2バス」の面影を自然と重ねてしまうはずだ。

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もっとも、このクルマが懐古に寄っているのはあくまで見た目だけ。中身は完全に現代のそれであり、BEV(電気自動車)としての合理性に貫かれている。ラインアップは標準ホイールベースに加え、今回試乗したロングホイールベース(LWB)を用意。LWBは全長5メートルに迫る堂々たるサイズを持つが、不思議と重々しさは感じさせない。むしろ、そのたたずまいは軽やかですらある。

床下にバッテリーを敷き詰め、リアモーターで後輪を駆動するレイアウトがもたらすのは、想像以上の室内空間だ。スライドドアを開けた瞬間に広がるのはリビングのような穏やかさ。標準モデルが2+2+2の6人乗りなのに対し、LWBは2+3+2の7人乗りとなり、実用性の幅も広がる。

ドライバーズシートに収まると、視界に広がるのはIDシリーズに共通するミニマルなコックピット。必要な情報はディスプレイに集約され、物理スイッチは最低限に抑えられている。ファブリックと合皮を組み合わせた2トーンのシートも含め、全体に過剰な主張はない。それでいて、どこか心地よい緊張感がある。

スタートボタンを押し、静かに走り出す。車重は2.7トンに達するが、その重さを意識する瞬間はほとんどない。アクセルに軽く足を乗せるだけで、560N・mのトルクが即座に立ち上がり、滑るように前へ出る。都内の流れに乗る低速域でも扱いやすく、ステアリング操作に対する応答も素直だ。

高速道路へ。合流車線でアクセルを深く踏み込んでも、加速はあくまで穏やかだ。いわゆるBEV特有の強烈な蹴り出しではなく、大型クルーザーがゆっくりと加速していくような、質量を伴った伸び方。このキャラクターはミニバンとして実に理にかなっている。必要十分な加速を持ちながら、同乗者にストレスを与えない。

巡航に入ると、このクルマの本領が見えてくる。路面の継ぎ目を越える際の入力は角が取られ、サスペンションが丁寧にいなす。LWBの長いホイールベースも相まって、姿勢は常にフラットに保たれる。静粛性も高く、速度が上がるほどに車内の会話はむしろ落ち着いていく感覚すらある。

このまま長距離へ向かいたくなる。例えば、早朝の都内を出て郊外のゴルフ場へ。7人乗車でも余裕があり、あるいは4人+キャディバッグという使い方でも空間に余白がある。移動そのものが負担ではなく、時間として成立する──そんな感覚だ。

気になる一充電航続距離は、91kWhのバッテリーによりWLTCモードで554km。加えて150kWの急速充電にも対応し、実用面での不安は小さい。とはいえ、このクルマの前ではスペックの話は脇に置かれてしまう。実車を前にした瞬間、多くの人はまずその造形に心を奪われるはずだ。可愛らしさと力強さを併せ持つフォルム。そして、その奥にある合理性。

過去のアーカイブを持つブランドだからこそ成立するデザインであり、その価値を現代のBEVとして再構築している点に、このクルマの本質がある。ID.Buzzは単なる電動ミニバンではない。移動という行為に、もう一度“感情”を取り戻す存在だ。

フォルクスワーゲン ID.Buzz LHB  車両本体価格 997.9万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4965 X 全幅 1985 X 全高 1925 mm
  • ホイールベース | 3240 mm
  • 車体重量  | 2730 kg
  • 駆動用モーター | RWD (後1基)
  • モーター最高出力 |  286 ps(210 kW)
  • 最大トルク |  560 N・m
  • 一充電航続距離  |  554 km (WLTCモード)

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Text : Takuo Yoshida

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