
SUVという言葉があまりに広く使われるようになった今、その本質を問い直すような一台がある。ルノー「キャプチャー」。そして、その中でも“エスプリ アルピーヌ”の名を冠するモデルは、仕立ての良さと走りの個性を静かに主張する存在だ。
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2014年の日本導入以来、キャプチャーはヨーロッパでクラストップの販売台数を記録する一方、日本では“知る人ぞ知る存在”にとどまってきた。全長約4200mmという扱いやすいサイズ。日常にちょうどいいパッケージでありながら、その中身はただのコンパクトSUVではない。

現行モデルは2019年登場の2代目。昨年のマイナーチェンジで後期型へと進化した。電動化の過渡期において各メーカーがモデルライフを延ばす中、キャプチャーもその例に漏れないが、今回のアップデートは単なる延命ではなく、明確な深化といえる。

パワートレーンはフルハイブリッド「E-TECH」とマイルドハイブリッド(MHEV)の2本立て。試乗車はその中核となる「エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH」。1.6リッター直列4気筒に2基のモーターを組み合わせた、ルノー独自のハイブリッドシステムを搭載する。

印象的なのは、そのスタイリングだ。チーフデザイナー交代を機に、従来の柔らかな曲線基調から、直線を効かせた引き締まった表情へと変貌。そこに控えめに添えられるアルピーヌのエンブレムやディテールが、過剰にならない“スポーティさ”を生み出している。

走り出してすぐに、このクルマがなぜヨーロッパで支持されているのかを理解する。アクセルを踏み込むと、モーターの滑らかな立ち上がりとともに、すっと前へ出る。加速は決して刺激的ではない。だが、速度の乗り方が実に自然で、気づけば流れの中で一歩先にいる。街中の信号からのスタートでも、ワインディングでも、その“さりげなさ”が心地いい。

コーナーに進入すると、ボディは穏やかにロールしながら荷重を受け止め、次の瞬間にはすっと姿勢を整える。ドイツ車のように剛性で押さえ込むのではなく、しなやかにいなしながら収束させる感覚。この一連の動きに、ルノーらしさが凝縮されている。ステアリング操作に対する応答は素直で、過度な演出はない。それでも最終的にはクルマ側がきれいにまとめ上げてくれる。この“人とクルマの距離感”の作り方は、「ルーテシア」や「アルカナ」にも通じる共通の思想だ。

特筆すべきは、長距離での心地よさだろう。E-TECHのシステムは、エンジンに4段、モーターに2段のギアを持ち、それらを最適に組み合わせる複雑な構造を持つ。だがドライバーはそのことを意識する必要はない。ただ、静かに、滑らかに、効率よく進んでいく。実際の燃費も、このクラスの輸入SUVとしてはトップレベル。カタログ値23.3km/lに近い数値を現実的に狙えるのも納得できる。走りに無理がなく、結果として疲労も少ない。気づけば距離を伸ばしている、そんなクルマだ。

インテリアは10.4インチの縦型ディスプレイが存在感を放つ一方で、それ以外はルノーらしいスポーティさを基調とした落ち着いた空間。バイオスキンとファブリックの組み合わせは、単なる高級感ではなく、環境意識とブランドの思想を自然に織り込んでいる。キャプチャーは、日常における上質とは何かを静かに提示する存在だ。

派手さやわかりやすいスペック競争とは距離を置きながら、走り、快適性、効率、そのすべてを高いレベルでまとめ上げる。そして何より、乗るたびに感じるフランス車らしい感性。アルピーヌの名を借りてはいるが、その本質は過激さではない。穏やかで、しなやかで、仕立ての良い一台。日常にこそふさわしい“フレンチラグジュアリー”のかたちが、ここにある。

ルノー キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH 車両本体価格 459.9万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4240 X 全幅 1795 X 全高 1590 mm
- ホイールベース | 2640 mm
- 車両重量 | 1420k kg
- エンジン | 直列4気筒
- 排気量 | 1597 cc
- 最高出力 | 94 ps(69 kW)
- 最大トルク | 148 N・m
- メインモーター最高出力 | 49 ps(36 kW)
- サブモーター最高出力 | 20 ps(15 kW)
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Text : Takuo Yoshida








