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跳ね馬の血統がたどり着いた最終回答 フェラーリ「12チリンドリ」自然吸気V12の頂へ

フェラーリの最新フラッグシップ「12チリンドリ」がついに日本へ上陸した。ステアリングを握った瞬間から、このクルマが“いま最も貴重な存在”であることを、嫌というほど理解させられる。イタリア語でそのまま「12気筒」を意味する車名が示すように、搭載されるのは電動化も過給も介さない、純潔の自然吸気V型12気筒。「296スペチアーレ」を除けば、現行フェラーリの頂点に位置づけられるモデルだ。

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電動化が世界の常識となり、V12をラインアップから外すブランドが増えるなか、フェラーリはあえて自然吸気12気筒を残した。その事実だけで胸が熱くなるが、このエンジンが放つ存在感は、数字以上に“文化”としての重みをもつ。いまV12を積むということは、技術の誇示ではなく哲学の表明だ。

スタイリングは、ロングノーズ&ショートデッキの古典的プロポーションを研ぎ澄ましたもの。全幅2176mmという圧倒的なスケールを持ちながら、面構成は驚くほどクリーンで、彫刻のような美しさをたたえる。その長大なボンネットに収められる6.5リッター V12は、830psを9000rpm超の領域で解き放つ。キャビンはレザーの香りに満ち、助手席にも独立したパネルが備わる新世代フェラーリの空間だ。ドライバーの正面には、レッドゾーンが1万回転手前に設定されたレブカウンターがすえられ、視覚だけで高揚感をあおってくる。

ステアリングに備わるスターターボタンを押すと、深く、分厚く、そしてどこまでも伸びる12気筒の声が一気に空気を震わせる。低回転でも粒立ちが細かく、スロットルを軽くあおるだけで、刃物のように鋭いレスポンスが返ってくる。

シフトレバーを引き1速を選ぶ。軽くアクセルを踏んだだけなのに、車体が前へ滑り出す感触が異様に濃い。街中では3000rpmに触れた瞬間、抑え込んでいた力が一気に解き放たれるように速度が乗るので、自然とシフトアップを急がされる。それでも8速DCTの変速は驚くほど滑らかだ。乗り心地は締まっていながら、決して突き上げるような硬さではない。フロントエンジンのフェラーリが持つ「優雅さ」をまといながら、芯には明らかに“獰猛さ”を隠している。

さらに走り込むと、12チリンドリの正体が露わになる。V8ターボが「ある瞬間から一気に爆発する力」を魅力とするなら、自然吸気12気筒はスロットル操作とパワーが完全に同期し、こちらの意図をそのまま路面へ描くような感覚だ。排気量が大きいこともあって、どの回転からでも背中を深く押し込み、シートが体を呑みこむほどの加速を繰り出す。

気筒数が多いほど爆発回数が増えることはよく知られているが、V12の場合、クランク1回転で6回の爆発が起きる。アクセルを踏んでいる間じゅう“絶え間なく力が湧き出る”ようなフィールは、V12以外では決して味わえない。走らせているだけで、なぜV12がガソリンエンジンの頂点とされ続けるのか、その理由が五感を通して刻み込まれていく。

ボディサイズは大きいものの、後輪操舵の恩恵で最小回転半径は5.4mに抑えられている。リアには実用的なトランクスペースが設けられるが、開口部は狭く、キャディバッグは助手席に寝かせるスタイルになりそうだ。だが、その“不便さ”さえもオーナー体験の一部として受け入れられる。なぜなら、このクルマの価値は合理性とはまったく別の次元にあるからだ。

12チリンドリは「250GTO」「デイトナ」「550マラネロ」といった歴代ベルリネッタの血を継ぐ、フェラーリ本流の正統後継。近年の「ローマ」や「プロサングエ」が担うラグジュアリー路線とは異なり、ここには“跳ね馬の核”がむき出しのまま残されている。もし人生でフェラーリを一台だけ所有できるとしたら、この自然吸気V12を積む12チリンドリは、間違いなく“最初にして究極の選択”になるはずだ。

フェラーリ 12チリンドリ  車両本体価格: 5674万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4733 X 全幅 2176 X 全高 1292 mm
  • ホイールベース | 2700 mm
  • 車両重量 | 1770 kg
  • エンジン | V型12気筒 NA(自然吸気エンジン)
  • 排気量 | 6496 cc
  • 最高出力 |  830 ps(610 kW) / 9250 rpm
  • 変速機 | 8速 DCT

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Text : Takuo Yoshida

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