
BMWがいま、新たな時代の幕を開けようとしている。それを象徴するキーワードが「ノイエクラッセ(Neue Klasse)」だ。ドイツ語で“新しいクラス”を意味するこの名は、1960年代にBMWの復興を支えた伝説的なミドルクラスモデルの呼称でもある。あの時代、ノイエクラッセがもたらしたのはブランドの再生と未来への希望。半世紀以上の時を経て、その名が再び現実のモデルとして蘇ったのが今回発表された新型「iX3」である。
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このiX3は、コンセプトカー「ノイエクラッセX」をほぼそのまま量産化したモデル。プラットフォーム、モーター、OS、デザイン──すべてをゼロから構築した完全新世代BEVだ。通常、新型車といえども先代から設計を引き継ぐことが多い中で、これはBMWの決意そのものと言っていい。

まず目を引くのはフロントマスクだ。代々のモデルで拡大を続けてきたキドニーグリルが、ここでは意外なほどコンパクトに。ブラックアウトされたヘッドライトと相まって、これまでにない無機質で未来的な表情をつくり出している。

一方で、キャビン以降のフォルムは現行「X3」を踏襲しており、日常使いにおける実用性や安心感をしっかりキープ。革新と継承、その両立がBMWらしいバランス感覚を物語っている。

そしてインテリアに目を向けると、印象は一変する。ダッシュボードは従来のようにメーターを覗き込む構造ではなく、まるで未来のコクピットのようにフラットでミニマル。メーターパネルはフロントガラス下の細長いディスプレイに置き換わり、17.9インチのセンタースクリーンとともに“情報の新しい見せ方”を提示している。これらを統括するのが、次世代OS「BMWパノラミック iドライブ」だ。クルマを“動かす”機械から、“つながる”デバイスへ──そんな意識の変化を感じさせる。

パフォーマンス面でも進化は顕著だ。床下に収められた108kWhのバッテリーは最大800kmの航続距離を実現。800V充電システムや新開発の永久磁石レスモーターなど、効率・耐久性ともに大きく進化している。スペック上の数値だけでなく、電動化時代におけるBMWらしい“走りの質”への期待も膨らむ。

現時点では発売時期や価格は未定ながら、プロダクションモデルとしてのデビューは確定。日本では10月のジャパンモビリティショーで初披露される予定だ。かつてブランドを再生へ導いた“ノイエクラッセ”が、再びBMWの未来を切り開く存在になるのか──。その一歩が、まもなく日本の地で現実になる。

BMW iX3 50 xDrive (価格未定)
- ボディサイズ | 全長 4782 X 全幅 1895 X 全高 1635 mm
- ホイールベース | 2897 mm
- 車両重量 | 2360 kg
- モーター最高出力 | 469 PS(345 kW)
- 最大トルク | 645 N・m
- 駆動方式 | AWD(2モーター)
- 0-100km/h | 4.9 秒
- 航続距離 | 805 km(WLTCモード)
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Text : Takuo Yoshida








