
荷物も積みたい、音楽も楽しみたい。7人乗れて、走りはスポーティで——。 現代のクルマは、人の欲望をどこまでも受け入れようとする。それは進化として正しいのかもしれない。けれど、削ぎ落とすことでしか得られない歓びもある。だから「ライトウェイトスポーツカー」は、いまも変わらず特別な存在であり続けている。
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2022年に登場した「エミーラ」は、ロータスにとって最後の純内燃機関モデルとされる。英国を代表するスポーツカーメーカーは、すでにフル電動化に舵を切り、アルファロメオ「4C」、アルピーヌ「A110」といったライバルも静かに退場していった。

ライトウェイトは風前の灯火と言える時代に生まれたエミーラの最新作が「ターボSE」だ。これまでのV6スーパーチャージド(406ps)と、メルセデスAMG製4気筒ターボ(365ps)に並び、同じくAMG製の2.0リッター、4気筒ターボで最高出力406ps、最大トルク480Nmを叩き出す。

前作から外観に派手な変化はない。サイドの控えめなエンブレム程度。見せるより、走らせるための美学。コクピットも従来の4気筒モデルと大きくは変わらない。けれど、その見慣れた景色が、アクセルを踏み抜いた瞬間に裏切られる。

高速道路の合流車線。合図とともに右足を強く踏み込むと、4気筒とは思えぬ怒涛の加速が始まる。ターボの立ち上がりは鋭く、回転数の上昇に連れてスムーズにトルクが盛り上がっていく。ギアが変わるたびに背中を蹴られるような感覚。しかし挙動に荒さはない。8速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は常に最適なレンジを選び、エンジンの本気を余すことなく路面に伝えてくれる。

だが、エミーラの真骨頂は、加速よりもその先にある。ステアリングを切った瞬間、車体が吸い込まれるようにコーナーの奥へと沈んでいく。ホイールベースは短く、車高は低い。そこにロータス伝統のシャシー設計が合わさることで、ほとんどタイムラグなくドライバーの意思がクルマの動きに変換される。コーナーを抜けた時には、運転していたというより、操っていたという感覚だけが残っている。

そして、これが“レーシングカー”ではなく、あくまで“ロードカー”であるという点に、ロータスというブランドの凄みがある。強靭なパワーを受け止めるシャシーの落ち着き、日常での扱いやすさ、リアやシート背後に設けられたラゲッジスペース。すべてが「使えるロータス」であるために、巧みに組み上げられている。

冒頭で触れたように、エミーラはロータスにとって最後の内燃機関モデルになる予定だ。この先、EVが加速や旋回性能で凌駕する未来はやってくるかもしれない。けれど、ガソリンエンジンならではのあの“震え”や、“熱”までは再現できない。

ハイブリッドやBEVのSUVを普段の移動に選ぶ一方で、ガレージには“走ること”の本質を忘れないエミーラを収めておく。時代の流れを見据えながらも、自分の価値観を曲げないクルマ好きにとって、これ以上に説得力あるラインアップがあるだろうか?

ロータス エミーラ ターボSE 車両本体価格: 1804万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4413 X 全幅 1895 X 全高 1226 mm
- ホイールベース | 2575 mm
- 車両重量 | 1457 kg
- 排気量 | 1991 cc
- エンジン | 直列4気筒 ターボ
- 最高出力 | 406 PS(298 kW)
- 最大トルク | 480 N・m
- 変速機 | 8速 DCT
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Text : Takuo Yoshida








