イギリスのロータスといえば、軽量で俊敏なスポーツカーの代名詞。クラシックな「エラン」から最新の「エミーラ」まで、常にドライバーズカーとしての哲学を貫いてきた。そのロータスの新たな挑戦が「エメヤ」だ。オールエレクトリックハイパーSUV「エレトレ」に続くこのモデルは、ブランド初の5ドアサルーンながら、動的な走行性能をしっかり受け継いでいる。
エメヤのラインアップはエレトレとほぼ同じで、ベーシックモデルの「エメヤ」、上位グレードの「エメヤS」、そして今回試乗した最強モデル「エメヤR」の3つ。フロントモーターが306psを発揮し、リアモーターはその倍となる612psを発揮するAWD(全輪駆動)システムを搭載。このパワーユニットで918psという驚異の最高出力を実現した。
<関連記事>お洒落だが獰猛!新世代ロータスが放つ超が付く高性能 ロータス「エレトレ R」
実際に走らせてみると「エレトレR」との違いは明確だ。バッテリーが床下に配置されており、車高の割には非常に低く安定した走行感覚を提供する。車重が2.6トン近くあるのに、ハンドリングは歴代のロータススポーツカーに似た軽快さを感じさせる。
最大出力918psは、時に圧倒的な力強さを感じさせるが、パワーがシャシーに溶け込み、上質なドライブフィールを作り出している。重心が低く、アクティブエアロダイナミクスシステムとエアサスペンションのバランスも絶妙。最大150kgのダウンフォースを発生し、高速走行時の安定性も抜群だ。
走行モードは「レンジ」「ツアー」「スポーツ」「トラック」「インディビデュアル」の5つ。ラグジュアリーな乗り心地から、サーキットレベルの攻撃的なセッティングまで幅広く対応する。
1日走行してみると、ロータスらしさはもちろん、ボディのラインと工作精度に驚かされる。伝統的デザインを守って、BEV(電気自動車)ならではの新しい要素を取り入れている。内装もシンプルで洗練されており、素材の質感が非常に高い。
一充電での航続距離は435~485km(WLTCモード)。ゴルフ場までの足として考えるなら、理想的と言えるだろう。リアのハッチゲートを開けると、深さこそないが広大な荷室が現れる。キャディバッグは1本を横向きに、さらに2本を斜めに置けば収納可能。フロントにもラゲッジスペースがあり、BEVならではの効率的なスペース活用が光る。
エメヤは、ロータスにとって単なる新型車ではない。電動化を受け入れつつ、過去の伝統を尊重する難しい二律背反を見事に体現したモデルだ。ドライバーズカーの魅力を再構築したクルマが新たな伝説を作り出すことだろう。
ロータス エメヤR 車両本体価格: 2268.2万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 5139 X 全幅 2005 X 全高 1459 mm
- ホイールベース | 3069 mm
- 車両重量 | 2555 kg
- モーター最高出力 | 918 ps(フロント 306 ps / リア 612 ps)
- モーター最大トルク | 985 N・m
- 一充電走行距離 | 435~485 km(WLTCモード)
- 0-100 km / h | 2.86 秒
お問い合わせ先
Text : Takuo Yoshida