スウェーデンのボルボは今年9月初め、2030年までに販売車両の100%をBEV(電気自動車)にする目標を修正した。一部でHV(ハイブリッド)車の販売も継続する方針に変更されたが、ボルボのラインアップは着実に電動化が進められている。その中で最も注目されるBEVが、今年2月からデリバリーが始まった最小モデル「EX30」だ。
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5ドアのクロスオーバーSUVは一見すると立派に感じるが、実は全長4235mmはBMWの「X1」やミニ「カントリーマン」よりもさらにコンパクトなサイズ。VWの「Tロック」とほぼ同等といえば、サイズ感を想像できるだろうか。
今回試乗したのは「EX30ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ」。BEV専用プラットフォームの床下には69kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、リアにはシングルモーターを配置する。フロントにもモーターを追加した「EX30ツインモーター パフォーマンス」の日本市場導入も今年中に開始される見込みだ。
エクステリアの第一印象は「シンプル」。フロントマスクからグリルが省かれ、ひと目でBEVと分かるモダンなデザイン。まるで走るデザイナーズマンションのようなセンスの良さとすっきり感が特徴的だ。インテリアもまた、ボディサイズの割に広々としており、シンプルなデザインがそれを強調している。
例えば、スイッチ類はほぼすべて(左右ミラーの調整やハザードボタンまでも)iPadのようなタッチ式センターモニターに集約され、通常はドライバーの正面にあるメーターパネルも省略されている。それでも質素に見えないのは、シートに使われた高品質なウール素材や、室内全体を明るく照らすパノラミックサンルーフのおかげだろう。まさにセンスを感じさせる空間だ。
走りにおいても「すっきりシンプル」なフィーリング。モーターは272psの最高出力を発揮し、スロットルを踏むと瞬時に力強い加速を感じるが、挙動は安定しており、どちらかというと無表情な印象を受ける。クルマ好きよりも、ライフスタイルの一環としてクルマを楽しむ層にフィットしそうだ。
一充電走行距離は560kmと、このクラスでは長めに設定されており、ボルボらしくADAS(先進運転支援システム)の運転を安全かつ快適にする機能が充実していて、ドライバーの負担を軽減する仕上がりも評価が高い。ゴルフ場の往復にも十分対応できるし、コンパクトで扱いやすいボディのため普段使いやセカンドカーとしても重宝されるだろう。
リアのラゲッジスペースも、見た目以上に広く確保されている。ただし、キャディバッグを横方向に積むには開口部が狭く、また斜めに積むにも前後長が足りないため、シートを倒して縦方向に積む必要がある。
自宅に充電設備があり、都市部での普段使いを考えるなら、EX30をおすすめしない理由はない。さらにもう1台、ICE(内燃機関)車を所有していれば、強みを最大限に引き出すことができる。スタイリッシュなライフスタイルにこだわる人は必見の一台だ。
ボルボEX30 ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ 車両本体価格: 559万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4235 X 全幅 1835 X 全高 1550 mm
- ホイールベース | 2650 mm
- 車両重量 | 1790 kg
- モーター最高出力 | 272 ps(200 kW)
- モーター最大トルク | 343 N・m
- 一充電走行距離 | 560 km(WLTCモード)
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Text : Takuo Yoshida