「スーパーカー世代」とか「スーパーカーブーム」という言葉がある。1970年代の中ごろから、大いにもてはやされたムーブメントがあった。ブームというだけあって、実際に所有しているような人だけではなく、まだクルマの運転すらできない子供までもが夢中になり、スーパーカー消しゴムが飛ぶように売れ、テレビにも漫画にも登場し、日本各地でショーまで開催されていた。
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その中心にいた一台がランボルギーニ「カウンタック」だ。本当に速いのはポルシェ、F1で有名なのはフェラーリといった意見はあっても、スーパーカーといえばカウンタックだったと思う。その理由は、ドアが上方に跳ね上がるから。それは戦闘機のようでもあり、宇宙船のようにも見えたのかもしれない。
V12エンジンを車体の中心に据え、ドアが上に開くランボルギーニ。その最新版「レヴエルト」が本邦デビューを果たした。エンジンとドアの開きというスーパーカーとしての勘所は押さえているが、それ以外の部分は全てにおいて刷新された最先端のモデルだ。カウンタックの誕生から半世紀以上の時間が経ち、もはやブームではなくクルマ好き男子の心を熱くさせる存在へと立場が変化しているが、ランボルギーニの旗艦の精神は今も健在だ。
そのスペックを確認するだけでも心臓が高鳴るはず。自然吸気(NA)6.5リッター、V12エンジンは9000回転を超えるレヴリミットを誇り825psの最高出力を発生。そこに150psのモーターがフロントに2つ、リアにひとつ配され、システム最高出力は1015psにも達する。まさに翼が生えたら飛べそうな圧倒的なパワー、そしてひと目でランボルギーニとわかるとがったスタイリング。
先代の「アヴェンタドール」まではV12エンジンを搭載した純粋なガソリンモデルであり、車体中心にドライブシャフトが通ることで4駆となっていた。今回のレヴエルトはV12+モーターが後輪を、2基のフロントモーターが左右の前輪を駆動する4駆。つまりフロントのモーターの駆動力を個別に制御することで操舵を助ける役目も果たす。
こんな途方もないスペックを持ったクルマの実力を公道で体感することは、合法的には不可能だ。このためプレス向け試乗会は富士スピードウェイで開催された。当日の天候は雨だったが、それでも試乗会は淡々と進められていく。そういう展開の中にレヴエルトの本質が示されている。1000psを超えるスーパーカーで雨のサーキットを全開走行する。そんなプロのレーサーしかできないと思われがちな芸当が誰にでもできてしまう。
もし天候が晴れていれば、富士のストレートで軽く300km/h以上の最高速を記録するだろう。そしてフロントモーターのおかげもあって、結構なスピードでコーナーをグイグイと曲がっていく。
普通のクルマで100km/hに達するくらいの感覚で200km/hに達してしまうのだが、ここで特筆すべきは街中で走らせていても、渋滞にはまってしまったとしても、あらゆる状況において快適に過ごせるという点だろう。スーパーカーブームの頃のカウンタックは、クラッチが岩のように重く、エンジンは神経質で車内は灼熱、トラブルとも無縁ではないというシロモノだったが、半世紀という時間がスーパーカー代表の性能を全方位的に進化させているのである。「もう体力的に厳しそう……」というエクスキューズは通用しそうにない。
ランボルギーニ レヴエルト 車両本体価格: 6543万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4947 X 全幅 2033 X 全高 1160 mm
- ホイールベース | 2779 mm
- 車両重量 | 1772 kg
- エンジン | V12気筒 + 3モーター
- 排気量 | 6498.5 cc
- システム最高出力 | 1015 ps(746 kW)
- システム最高トルク | 1020 N・m
- 変速機 | 8速 AT
- 最高速度 | 350 km/h
- 0 -100加速 | 2.5 秒
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Text : Takuo Yoshida