スポーツカーとゴルフの相性などいいわけがない。そうとわかってはいるが、クルマ好きゴルファーの欲求は抑えきれるものではないだろう。何しろ人生は一度だけ、しかもゴルフコースを往復するドライブも貴重な趣味の時間なのだから。「毒食らわば皿まで」じゃないが、どうせスポーツカーに乗るならランボルギーニはいかがか。今の旬はニュルブルクリンク最速タイムである。
「ランボルギーニを手に入れたんだ」と言った時の友人たちの反応が面白い。のけぞるように驚くのは当たり前で、クルマ好きの友人などは狂喜して「しばらく貸して!」なんてことを平気で言ってきた。ところが「なぜランボなのか?」と真顔で聞いてくる人もいた。「ドイツ車に惚れ込んでいたはずのあなたが、なぜいきなりスポーツカーなの?」。
振り返ってみれば、子供の頃スーパーカーブームの盛り上がりを経験している。スーパーカーショーに駆けつけるほど熱心ではなかったが、スーパーカー消しゴムは当たり前のように集めていた。その中の主役はもちろん、ランボルギーニだった。とはいえ今回、ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテを手に入れようと決意したのは、子供の頃からの夢を実現させたかったからではない。空気を味方につけ速く走るというエアロダイナミクス、スーパースポーツの世界を一変させるようなギミックに心惹かれたのである。
今年スポーティなSUVであるウルスをデビューさせたランボルギーニだが、このスーパーカーブランドの本懐は今も昔もミッドシップ2シーターのスポーツカーにある。現在ならばV12エンジンを搭載したアヴェンタドールとV10エンジンを積むウラカンという2つのラインナップがそれにあたる。
カーボンコンポジット製のシャシーにランボルギーニ伝統のV12を組み合わせたアヴェンタドールはまさにスーパーカーそのもの。だが私が惹かれたのはイタリアの情熱の裏にドイツ的冷静さをひた隠すウラカンの方だった。
ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテはデビューから3年が経過したウラカンに追加された高性能モデルである。楔(クサビ)のようないかにもスーパーカーとしたスタイリングも鮮烈だが、中味の充実ぶりもそれに負けていない。
アルミスペースフレームによって構成されたシャシーの中心には実に640psを発生する5.2リッターのV10エンジンが搭載され、組み合わされるギアボックスはもちろんステアリング裏のパドルで操る7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)が備わる。
シャープなスタイリングからは想像し難いのだけれど、ウラカン ペルフォルマンテは賢い4輪駆動システムによって桁違いの走行安定性を獲得している。
これはランボルギーニの親会社であるアウディ譲りのシステムであり、圧倒的なパワーをすっきりと路面に伝える役目を果たしている。ボディの細部をチェックしていった場合でも、ウラカン ペルフォルマンテは期待を裏切らない。
フロントスポイラーやリアディフューザー、ウイングといった黒い部分の素材はフォージドコンポジットと呼ばれるカーボン系の複合材であり、よく見ると黒く澄んだパーツの表面にはカーボン由来の幾何学模様が鈍い輝きを放っている。この新素材の採用によって、ペルフォルマンテは実に40kgもの軽量化を達成しているのである。
だがこれらのスペックを超越した部分にペルフォルマンテ=パフォーマンスの真価はある。ウラカン ペルフォルマンテが一躍有名になったのは、スーパースポーツカーの性能的な尺度となっているニュルブルクリンクサーキットの北コースにおいて、当時の量産車最速ラップタイムである6分52秒01を記録したことである。
このタイムは最高出力で100psも上回るアヴェンタドールSV(現時点の市販車ニュル最速はランボルギーニ アヴェンタドールSVの6分44秒)の記録をも凌ぐものであり、ウラカン ペルフォルマンテが最高速度のビハインドを覆すだけのコーナリングスピードを秘めている証拠でもある。
ペルフォルマンテの真価はALA(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)と呼ばれる可変エアロにある。フロントスポイラーやリアウイングなど一般的なエアロパーツは速度に応じてダウンフォースを発生する傾向にある。
だがその弱点はダウンフォースが欲しい時だけでなく、直進時にも抵抗が発生し最高速を抑え込んでしまう点にある。 だがフロントのインテーク内とリアウイング内部に空気を導くインテークに可動式のフラップを備えたALAは、通常走行時はフラップから空気を取り入れて、車体下面とリアウイングの下面に吸入気を流すことで抵抗をなくし、一方コーナリング時などダウンフォースが必要な時にはフラップを閉じることでフロアとリアウイングから強大なダウンフォースを得る仕組みになっている。
しかもALAは電子制御によって走行性能全体の底上げに寄与しており、例えば右コーナーでは右側半分のみダウンフォースを発生させることで旋回を助けるという、エアロベクトリングの役目も果たすのである。
近年のF1マシーンの性能のほとんどを決定づけるといわれている車体を路面に押し付ける力であるダウンフォース。その見えない強大な力を自在にコントロールできるスーパースポーツカーがウラカン ペルフォルマンテなのである。
ダウンフォース理屈は世の中の様々な部分に浸透している。下に向く力を逆に作用させれば、それは航空機を浮き上がらせる揚力となり、前に向ければヨットの推進力にもなる。
さらに我々がゴルフボールにかけるバックスピンもまた物体に揚力を発生させる手段であり、それによって飛距離がアップする。空気の力は目視することが難しいのだが、しかし我々の身近なところで確実に作用しているのである。
スーパーカーの超がつく高性能の話ばかりしていると、運転が難しそうに思えるかもしれないが、現代のスーパーカーはハイテクの恩恵を受けており、驚くほど扱いやすい。
例えばコクピットからの視界は限られるが、コーナーセンサーやリアカメラで四隅を把握できるし、走行モードも切り替え可能なので、ゆったり走らせたい場合にはストラーダ・モードで乗用車としていることもできる。
フロントスポイラーは低いが、これもスイッチひとつでリフトアップさせられるので、アゴを擦る心配もない。ただしスーパースポーツカーに複数のゴルフバッグの搭載を期待してはいけない。
ゴルフバッグを助手席に寝かせ、まさに“ゴルフが恋人”状態でドライブするのが、今も昔もスポーツカー好きなゴルファーの正しいスタイルなのである。
2人でゴルフを楽しもうと思ったらゴルフバックは別送する必要はあるが、しかし夫婦で行く小旅行ぐらいであればフロントのラゲッジスペースが役立つはずである。
ウラカン ペルフォルマンテでいつものゴルフコース向かうと、これまでかかっていた時間より早く着いてしまう。
圧倒的なスピード感と背後で吠えるV10エンジンの咆哮に浸っていると、移動時間がさらに短く感じられるから面白いし、 ゴルフコース近くのワインディングで、路面に吸い付くような“ペルフォルマンテ”の走りを思う存分満喫するのもいいだろう!
LAMBORGHINI HURACAN PERFORMANTE
メーカー希望小売価格:34,191,376円~(税込)
- ※写真はオプション装着車。
- ※表示価格にはオプションは含まれておりません。
- ボディサイズ | 全長4,506 × 全幅1,924 × 全高1,165mm
- ホイールベース | 2,620mm
- エンジン |90度 V10 DOHC
- 排気量|5,204cc
- 最高出力 |640ps (470kW) / 8000 rpm
- 最大トルク | 600Nm / 6500rpm
- ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテのトピック
- ●ニュル最速タイムで世界を震撼させたエアロダイナミクス
- ●8000回転まで回る5.2リッターV10エンジンの官能性
- ●キレッキレの見た目とは裏腹の扱いやすさ
- Text : Takuo Yosshida