究極のスポーツカーが加速させる人生

移動の時間を退屈だと感じている人は、自身の感性からクルマ選びができていなかったのではないだろうか。ゴルフのギア選びと同じように、クルマもまたどんなモデルを選ぶかによってその後のスコアや人生観に大きな影響をもたらす事もあるだろう。より中身の濃いゴルフ人生を望むなら、飛び切りの性能を備えた究極のスポーツカーがいい。

アストンマーティン DB11 AMR

当たり前に行われているクルマのカテゴライズだが、そこに確たるルールは見当たらない。GTやプレミアムといった形容はもちろんのこと、近年では2ドアだと思われていたクーペの世界にも4ドアが進出し状況をややこしくしている。

普段我々が当たり前のように使っているスポーツカーという表現もまた言った者勝ちのようなところがある。とはいえクルマ好きならば誰でも、自らが思い描く“スポーツカー像”は持ち合わせているはずである。

  • アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオ

  • アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオ

「究極のスポーツカー」というテーマを聞くと、スポーツカーの中でも頭抜けた性能を持った希少なモデルを思い浮かべてしまうかもしれないが、その結論は正しくない。ブルーダー的究極のスポーツカーの条件は極めてシンプルなものだ。

それはカントリークラブへと向かうハイウェイやワインディングで、スポーツドライビングを愉しまずにはいられないクルマ。シャープなハンドリングや雄々しいエグゾーストノートが五感を刺激し、体の覚醒を促す1台である。

ポルシェ 911 GT2 RS

完璧なラウンドを目指すためには、1番ホールのティーグランドへと歩みを進めるその瞬間から攻めの気持ちでいることが重要となる。究極のスポーツカーは移動のための優れた道具であるとともに、ゴルファーのテンションを高めるために欠かせないギアなのである。

では具体的にどんなモデルがブルーダー的究極のスポーツカーなのか?具体的なモデル名を挙げながら、その条件に思いを巡らせてみようと思う。

  • マクラーレン 600LT

  • ランボルギーニ アヴェンタドール

カーマニアに言わせれば、エンジンを車体の中央に据えたいわゆるミッドシップのモデルこそスポーツカーの究極であると言う。また2シーターに割り切ったモデルも潔くて人気が高い。

だが結局のところ究極のスポーツカーとは、狭い室内や硬い乗り心地と引き換えにハイスピードを実現するモデルではなく、ステアリングを握ったあなたを“ニヤリ”とさせるテイストを含んでいるか否かという印象の部分に帰結している。 つまり世の中的には平凡とされるセダンであっても、ステアリングに対する反応がリニアで、それがあなたの気分を高揚させるのであればスポーツカーの範疇に含まれるのである。

とはいえそこに“ブルーダー的”という条件が加われば、動的素養と同じくらい、モノとしての質感やブランドの神話性が重要視されることは言うまでもないだろう。

フェラーリ 488 ピスタ

動的、つまり五感を揺さぶるクルマ作りにおいて、イタリア人を越えることはできない。中でもフェラーリという単語はそれだけで王道であり、ドライバーの五感を強く刺激するだけでなく、対外的なイメージも強烈である。

伝統的にフロントエンジンの4シーターがラインナップされておりゴルファーとの親和性も高そうだが、ここはひとつ488ピスタのようなミッドシップ2シーターの尖ったモデルに臨んでみたい。

もちろんゴルフバッグは助手席に寝かせ、おひとり様を愉しむ。テンションを限界まで高めるのも容易である。

アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオ

一方、ランボルギーニは“敢えてフェラーリに行かない人の選択肢”として強い個性を放ってきた。V12エンジンを搭載するアヴェンタドールやV10エンジンのウラカンなど、ターボ全盛の現代に、敢えて大排気量の自然吸気エンジンで挑むあたりにもブランドの個性が薫る。

スタイルや音に女性的な滑らかさを含むフェラーリに対し、ランボルギーニは全ての動的質感が男性的に纏められている。スポーツセダンのジュリアを送り出したことで存在感を増しているアルファロメオにも注目株で、トップモデルのジュリア クアドリフォリオは4ドアモデルにドライビングの楽しさとイタリアならではの感覚性能を加えた1台である。

  • ポルシェ 911 GT2 RS

  • ポルシェ パナメーラターボ

限りなく低められたスタイリングやエンジンの官能性に重きを置くイタリア勢とは対照的に、ドイツは冷静と狂気が入り混じる独特のスポーツカー像に定評がある。

ポルシェは911シリーズの究極であるGT2RSを頂点としているが、近年増殖している4ドアモデルに関しても、ブランドの名に引けを取らない。

全長5mオーバーとなる4ドアセダンのパナメーラも、その引き締まった乗り味はスポーツカー以外の何物でもないのである。

マクラーレン 600LT

そんなドイツ的スポーツカー作りの根底にある基準がドイツ北部にあるサーキット、ニュルブルクリンクである。

1周20km超という長距離を誇る北コースは、一般的なサーキットであるとともにタフなテストコースとしても知られ、近年ではニュルのベストタイムがスポーツカーの格付けに大きく影響するようになっている。

ランボルギーニ アヴェンタドール

1927年に作られたニュル北コースは森の中を縫うように走る超高速のサーキットであり、コーナーで掛かる横Gだけでなく、クルマが飛び上がるほどの起伏による縦Gも加わって、やわなクルマを寄せ付けない。

ドイツ車の優秀性に学んだ世界中の自動車ブランドは皆ニュルで開発テストを行うことが当たり前になっているのである。

ラップタイムが7分前半であれば立派なスーパースポーツであり、トップレベルは6分台に突入している。現時点の市販車ニュル最速はランボルギーニ アヴェンタドール SVJの6分44秒である。

  • メルセデス-AMG GT R

  • 日産 GT-R

メルセデスのハイパフォーマンスブランドであるAMGの最速モデルであるAMG GT Rや、BMWが誇る速い4ドアセダンの代名詞であるM5も当然のようにニュルの落とし子だが、近年ではスポーツカーを標榜する全てのクルマがデビュー前にニュルを走り、1ランク上の走りを身につけている。

アメリカのキャデラックですら北コースに足繁く通っているし、先ごろデビューした新型のトヨタ・クラウンもニュルでスポーツ性を磨いている事実を前面に打ち出していると言えば、その規模が理解できるのではないだろうか?


  • BMW M5

  • アストンマーティン DB11 AMR

そんなニュルのベストラップを掲げてポルシェ超えを宣言し名を上げたモデルがニッサンGT-Rである。2007年にデビューしたR35型GT-RとポルシェGT2RSは互いにベストラップを更新して争いスポーツカーファンの注目を集めた。

もちろん我が国が誇るスポーツカーであるレクサスLC500もニュルを第二の故郷としているし、英国のマクラーレンはもちろんのこと、古豪アストン マーティンもニュルブルクリンクの上客であり、今年サーキット近くにAMRパフォーマンスセンターを開設し、スポーツカーとしての完成度の高さに磨きを掛けようとしている。

ポルシェ 911 GT2 RS 

果たしてドイツのタフなサーキットで磨かれた一線級のスポーツカーたちがブルーダーに何をもたらすのか?それは究極であることの保証である。ゴルフのギアでも普段の身の回りの品でも、拘り抜かれたモノ選びが一流のライフスタイルに通じる近道としてある。

究極のスポーツカーがもたらすドライビングファンは、移動という退屈な概念を鮮やかに塗り替え、充実した人生をもたらしてくれるのである。次週はドイツのタフなサーキット、ニュルブルクリンクで鍛え抜かれた話題のスポーツカーを紹介しよう。

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