ポルシェ ボクスター、極上のポルシェはオープンにあり

オープン2シーター・スポーツカーの中でも、ポルシェ718ボクスターSは特別なポジショニングを確保している。幌を降ろすと優雅さを増すこの1台は、古のレーシングポルシェへのオマージュを秘めたリアルスポーツカーなのである。極上のポルシェでカントリークラブに向かう。その体験に憧れを抱かないクルマ好きゴルファーはいないはずだ。

数あるオープン2シーターの中でも、ポルシェ718ボクスターほどバランスの優れた1台は存在しない。ミッドシップスポーツカー特有のシャープなハンドリングと、コンパクトで力感に溢れたスタイリング、そして機構的な完成度の高さを兼ね備えているからである。

オープンエアドライブの爽快感も見事だが、一方では幌を閉めた時のクーペとしての耐候性や快適性能も特筆すべきである。

歴史を遡ればポルシェを代表するスポーツモデルである911の原点は、フェルディナント・ポルシェ博士が開発したフォルクスワーゲン・ビートルに求めることができる。

どちらもリアアクスルよりも後方に水平対向エンジンを搭載する、いわゆる「リアエンジン」という特徴的なレイアウトを持っている。

一方、ポルシェはレーシングカーの世界では、エンジンを車体中央部に配置するミッドシップレイアウトを積極的に採用してきたメイクスとしても知られる。

1996年に初代のボクスターが発表された時、そのコンパクトなオープン2シーターは、かつてのレーシングポルシェの影響を色濃く受けた1台であるという説明がなされたほどである。

初代のボクスターは、ドアより前のセクションにポルシェ911と同じ車体構造やボディパネルを採用したモデルだった。

その中身は代替わりを重ねるごとに独自性を増し、2016年デビューの718ボクスターでは、これまでの水平対向6気筒エンジンに換えて独自の水平対向4気筒ターボ・エンジンを採用し乗員のすぐ後ろに搭載している。

718ボクスターは、他の多くのドイツ車と同じように、そのカテゴリーの規範としてされる1台なのである。

オープン2シーターのスポーツカーは、いつの時代もクルマ好きゴルファーにとって気になる車種に違いない。

だが実際に手に入れようと考えた場合には、その使い勝手が障壁となることが多いのも事実である。

では718ボクスターの場合はどうか?美しく引き締まったスタイリングからは想像し難いのだが、そこはポルシェの作品らしくボディの前後に実用的なラゲッジルームが備わっている。

フロントは横70cm、奥行き45cm、深さ50cmほどのスペースになっているので、もちろんゴルフバッグを収めることはできないのだが、大型のボストンバッグ2個を余裕で積み込む収容能力がある。

エンジンのすぐ後ろに位置するリアのスペースは少し複雑な形なのだが横幅123cm、奥行き43cm、そして深さは25cmが確保されている。今回撮影に使用した9インチのカートタイプ・ゴルフバッグは惜しくも搭載できなかったが、細身のクラブケースであれば積めそうだった。

練習場までのアシとして考えた場合には2名乗車で行くことが可能だし、一方718ボクスターでカントリークラブを目指す場合にはゴルフバッグを助手席に寝かせ“おひとり様”スタイルで臨むことになる。

ドアを開けると、本革が贅沢に使われたインテリアが目に入る。今日ではマカンやカイエンといったSUVを大ヒットさせ、総合的な自動車メーカーとして認知されているポルシェだが、718ボクスターのようなスポーツカーはポルシェの伝統を受け継ぐ本流モデルであり、その室内空間はタイトだが快適さもしっかりと持ち合わせている。

電動で開閉する幌の表地はコットンキャンバスのような風合いの布地が用いられるが、一般的に想像されるようなヤワなものではなく、分厚くて頑丈なルーフ構造を形作っている。

幌の開閉はセンターコンソールにあるスイッチで行い、なんと11秒ほどで開閉が完了してしまう。

しかも時速50km/h以下で走行していれば開閉操作が可能なのである。つまり都心を走っているような場合、渋滞に出くわしたら即座に幌を閉じて、眺めの良い空いた道を見つけたらすぐにオープンエアドライブを満喫できるのである。

かつてオープンカーの幌は手動が当たり前で、突然の雨で車内が濡れてしまうようなことも珍しくなかったのだが、718ボクスターに代表される現代のオープンカーの進化は目覚ましいものがあるのだ。

オープンカーというとゆったりと流して走るイメージもあるが、しかし718ボクスターはそのクローズド・クーペ版である718ケイマンと並んでポルシェの最軽量モデルでもある。

ミッドシップレイアウトならではのシャープなハンドリングとコーナリングスピードは相当なものだが、動力性も並外れている。

718ボクスターの水平対向4気筒ターボ・エンジンは2リッターと2.5リッター版の2種類があり、今回撮影に使用した718ボクスターSは350psを発生する2.5リッターユニットを搭載している。

その圧倒的な加速を体感してしまうと、ポルシェの末っ子といった印象は一気に吹き飛んでしまうはずだ。 一方ギアボックスは俊敏なギアの繋がりが自慢の7速PDKと、古典的なスポーツドライビングを味わうための6速マニュアルが用意されている。

近年は多くのスポーツカーがオートマティックのみとなってしまっていることを考えれば、クルマ好きゴルファーとしては敢えてマニュアルシフトでドライビングを愉しむのもアリだろう。

賢いナビに案内され、上質な音楽を楽しみながら都会の喧騒を抜け、高速道を降りてカントリークラブが近くなったら幌を降ろしてオープンエアドライブを満喫する。

プレー前のウォームアップとして軽いスポーツドライビングに興じる。そんな特別なドライビング体験を手に入れるためのクルマこそ、718ボクスターのようなオープン2シーターなのである。

オープン2シーターのクルマはおしなべてアソビ心に溢れているが、歳を重ねたオヤジにこそよく似合う傾向がある。

しかもリーズナブルなモデルになるほど、白髪雑じりのオヤジとマッチングが良く、逆に若者がステアリングを握っていると軽く見られがちである。

その点で718ボクスターははるかにスイートスポットが広いので安心だ。クルマのインパクトの方がはるかに強いので、オーナーは皆「本当のクルマ好き」として見られるだけ。これこそ有名ブランドの力というヤツだろう。

いかに耐候性に優れたポルシェ718ボクスターを所有していたとしても、雨の日でも遠征でもこれ1台で全てをこなすというのはスマートではない。

近所の練習場までのアシ、もしくは季節と天候がほどよくマッチした日にだけポルシェ718ボクスターでカントリークラブを目指す。

クルマとの適度な距離感を保てると、オープン2シーターはがぜん優雅な粋人の乗り物として光り輝くはずである。

PORSCHE 718 BOXTER S
メーカー希望小売価格:9,010,000円~(税込)

  • ボディサイズ | 全長4,379 × 全幅1,800 × 全高1,280mm
  • ホイールベース | 2,475mm
  • エンジン |水平対向4気筒DOHCターボ
  • 排気量|2,497cc
  • エンジン最高出力 |350ps (257kW) / 6500rpm
  • エンジン最大トルク |420Nm / 2000-4500rpm
  • ポルシェ718ボクスターのトピック
  • ●11秒で世界観が切り替わる快適なオープンエアモータリング
  • ●ミッドシップ、350ps、一線級のスポーツカーとしての運動性能
  • ●クルマに興味がない人にも説明不要なポルシェのブランド力
  • Text : Takuo Yosshida
  • Photographer : Koichi Shinohara

 

問い合わせ先

ポルシェ・ジャパン フリーダイヤル : 0120-846-911https://www.porsche.com/japan/jp/models/macan/

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