自動車の安全について考える時、北欧の自動車ブランド、ボルボを欠かすことはできない。シートベルトをはじめとする数々の安全ギミックを自動車界に持ち込み、スタンダード化してきた同社の歴史と経験は、今現在のボルボの安全性能レベルにも確かに効いている。フラッグシップSUVであるXC90は、最先端の安全を考える最高の教材でもある。
ボルボという自動車メーカーの規模は決して大きくなく、我が国における販売台数も近年はかなり伸びてきているが、それでも4000台ほどに留まる。ところが1度もボルボ車に乗ったことがないような人にも、ボルボ=安全、質感が高いというブランド・イメージは広く浸透している。
「クルマは人によって運転され、使用される。したがって、ボルボの設計の基本は、常に安全でなければならない」という創業者が掲げたスローガンを頑なに守ってきたスウェーデンのボルボ。クルマを販売するためには、耳触りの良い言葉を並べたくなるものだ。しかし同社は、一貫してクルマの運転に危険はつきものであるという事実を前提として、安全性に対し真摯に向かい合ってきた。その蓄積と成果がボルボ・ブランドの確固たる信頼感へと繋がっているのだ。
現在のボルボはコンパクトな40シリーズ、ミドルサイズの60シリーズ、そしてフルサイズの90という3つのサイズ構成によってモデルラインナップが整えられている。
全てのサイズで新型プラットフォームを得た新世代モデルがデビューしているが、中でも90シリーズは全て強固なボロンスティールの使用比率を40%まで高めたSPAプラットフォームを核とするモデルに置き換えられている。
今回ボルボ・ブランドの安全性にフォーカスすべく選んだボルボXC90 T8ツインエンジンAWDインスクリプション(以下XC90 T8)は、プラグインハイブリッドの先進的なパワートレーンを備えた現行ボルボSUVのフラッグシップモデルである。
XC90 T8は5ドアハッチのフルサイズSUVであり、落ち着きのあるしかしシンプルモダンな外観はまさに北欧デザインを前面に押し出した新世代ボルボそのもの。象徴的なVOLVOエンブレムを堂々と掲げたフロントグリルによってはっきりとブランドを認識できる。
一方、明るくすっきりとした印象で纏められた室内は、リアのラゲッジスペースに折り畳み収納式のサードシートを備えた7人乗りとなっている。もちろん、サードシートをたたんだ場合のリアのラゲッジスペースは余裕をもって4人分のゴルフバッグとその他の用具を搭載することができる。
美しいカーブを描いた革張りのドライバーズシートに座ると、ドライバーの正面にはスポークの左右にスイッチ類を備えたステアリングが据えられ、一方ダッシュパネルのセンターには9インチのタッチスクリーン式ディスプレイが備わっている。メカニカルなスイッチ類の使用は最小限に抑えられ、操作や車輛設定の多くを音声認識やディスプレイ上で行えるようになっているのである。
理論的に構築されたこのシステムは、デジタルガシェットを本能的に扱えるデジタルネイティブ世代はもちろんだが、システムの構成さえ理解できればベテランユーザーにとっても扱いやすく、先進のシステムを自分の好みに合った状態に容易にセッティングすることが可能になっている。特にステアリングの左のスイッチ類はACC(アダプティブクルーズコントロール)関係、右はメーター間のモニター設定用といったかたちでスイッチの配置が整理されている点は、スタイルだけでなく機能にも拘った北欧デザインならではといえる。
全てのXC90が2リッターの直列4気筒エンジンを搭載したAWD(4駆)となっているが、装備と最高出力によってバリエーションが展開されている。ターボのみのT5は254ps、ターボとスーパーチャージャーで過給するT6は320ps、そして今回のT8ツインエンジンはターボ+スーパーチャージャーとプラグインハイブリッドによってエンジンの320psにモーターの87psを足した405psという最高出力を誇る。
システムは複雑なXC90 T8だが、実際に走らせてみると走りはスムーズそのもの。走り出しは電気モーターで静かに滑り出し、そこから分厚いエンジンパワーが加勢する。所謂プリウス的な賢さのハイブリッドなのである。2.3トンという車重を全く感じさせない軽い身のこなしは、走りのテイストと見た目のクリーンな印象の整合性が高い新世代ボルボの真骨頂といえる。
ボルボは2008年、新しいボルボ社による死者や重傷者を2020年までにゼロにすることを目指す「Vision2020」を掲げ、積極的に安全装備の拡充に努めている。その核となるのが、XC90 T8にも搭載されているインテリセーフである。インテリセーフは10種類以上の先進安全、運転支援の機能の総称であり、ボルボの全車に標準装備されている。
その中には半自動運転を実現するACCとパイロットアシスト(車線維持支援機能)、LKA(レーンキーピングエイド)のように快適な長距離移動を実現する装備も含まれるが、乗員のストレスを減らすことで事故の発生を未然に防ぐこともボルボが考える安全性能に含まれている。
一方、ボルボは完全停止まで行う自動ブレーキを我が国の市場に最初に持ち込んだブランドであり、現在でも高性能ミリ波レーダーセンサー、デジタルカメラ、赤外線レーザーセンサーによって車輛や人、自転車の存在を検知し、衝突の回避、軽減を図るブレーキシステムが備わっているのである。
ボルボが考える新世代の安全装備を満載したXC90は公的な衝突安全テストであるユーロNCAPでも優れた成績を残している。本国デビューを果たした直後、2015年のフルサイズSUV部門では最も安全なクルマとして5つ星の評価を獲得しているのである。
現在のクルマはパソコンのようにソフトウェアをアップデートできることが常識となっているが、ボルボもその例に漏れない。XC90はつい先ごろ安全機能に関するソフトウェアアップデートが施されているのである。センサーやカメラ類は既にひと通りのものが備わっているので、あとはソフトウェアを刷新することで機能が追加されるというわけである。
今回追加された機能は、オンカミング・レーン・ミティゲーションとステアリングアシスト付きのBLIS(ブラインドスポットインフォメーションシステム)である。オンカミング・レーン・ミティゲーションは車線を外れ対向車線にはみ出して走っているような際に対向車を検知すると、ステアリングシストが元の車線内に戻るように働くシステムで、正面衝突の回避に高い効果を発揮する。
一方ステアリングアシスト付きBLISは、これまでは自車の死角にいるクルマを検知し、インジケーターで知らせるだけだったBLISの機能に、ステアリングアシストによる衝突回避が加えられたもの。
死角に他車がいることを知らずに車線変更をしようとすると、元の車線に戻るようにステアリングに操舵力が加えられる。どちらの装備も警告から一段階進み、実際の衝突を回避する行動を行ってくれる点に進化が見て取れる。
今回のアップデートを既にユーザーに納車されている2017年モデルにも有償で行っている点にも、「Vision2020」達成を強く願うボルボの信念が感じられる。
ボルボXC90はゴルフ場への往復を最も快適に、そして高い安心感を伴って遂行できるクルマに違いない。今も昔もボルボ・ブランドはたゆまぬ努力の結果として、自動車の安全性能の指標であり続けているのである。
VOLVO XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription
メーカー希望小売価格:10,490,000(税込)
- ボディサイズ | 全長4,950 × 全幅1,960 × 全高1,760mm
- ホイールベース | 2,985mm
- エンジン |直列4気筒DOHCターボ+スーパーチャージャー
- 排気量|1,968cc
- エンジン最高出力 |318ps(233kW) / 6000 rpm
- エンジン最大トルク | 400Nm / 2200-5400rpm rpm
- モーター最高出力 | 46kW(前) 87ps(後)
- モーター最大トルク | 160Nm(前)240Nm(後)
- ボルボXC90 T8 ツインエンジンAWDインスクリプションのトピック
- ●アップデートされた世界最高レベルの安全性能。
- ●クリーンな北欧デザインの質感と透明感のある走りの整合性。
- ●7人乗りor ゴルファー4名分の荷物を余裕で搭載する包容力。
- Text : Takuo Yosshida
- Photographer : Toshiki Kobayashi
- Golf Course : カレドニアンゴルフクラブ
問い合わせ先
ボルボ・カー・ジャパン:0120-922-662 http://www.volvocars.com/jp