エステートモデルのイメージが強いボルボだが、高い安全性と実用性の高さはセダンモデルでも引けは取らないし、ことフォーマルという部分においてはセダンに明確なアドバンテージがある。昨今“新世代”と表現されることが多いボルボのフラッグシップ・セダンは、ゴルファーにどのようなベネフィットをもたらしてくれるのか。
S90はボルボのフラッグシップ・セダン
スウェーデンの自動車メーカー、ボルボのイメージは古くから一貫している。世界で初めて3点式シートベルトを採用した同社は、衝突安全に対するスタンダードを積極的に引き上げてきた「世界一安全な実用車」として知られ、堅牢な作りがそのままスタイリングに表れたようなエステートモデルのメーカーとして有名だ。
近年はスカンジナビアン・プロダクツ特有の虚飾のないすっきりとしたデザインによって流行に敏感な人々からも熱い視線を注がれているのである。
現行のボルボは車名がVからはじまるエステート、Sからはじまるセダンの他、XC(クロスカントリー)のアルファベットが付くSUVをラインナップしており、ボディサイズの違いで3クラスに作り分けられている。
今回試乗できたS90はボルボのフラッグシップ・セダンであり、正式な車名はボルボS90 T6 AWD インスクリプションという。
車名のT6はエンジン形式を表しており、2リッター直列4気筒ターボに低速トルクを補うスーパーチャージャーが追加されており、その最高出力は320psにも上る
ちなみS90にはT5というグレードもあって、4気筒ターボのこちらの最高出力は254psに留まる。AWDは全輪(4輪)駆動であることを表し、インスクリプションは落ち着いた上級グレードという意味合いを持つ。つまり漆黒のS90は名実ともに現行ボルボの頂点に君臨する1台といえる。
以前のボルボのスタイリングは四角い箱を積み重ねたような角ばったもので、そのおかげで広い室内スペースを確保するなど機能的に作られていた。
だが2016年のXC90で幕を開けた、いわゆる“新世代ボルボ”と呼ばれる現行シリーズは以前のものより格段にデザインコンシャスに設えられている。このためS90もセダンとはいえリアウインドーの傾斜が緩く、ルーフラインがきれいにトランクのラインと融合するクーペ風のリアスタイルを与えられている。
スタイリングは4ドアセダンの王道
フロントマスクはグリル中央にボルボ伝統のエンブレムを掲げた威風堂々としたもので、“トールハンマー”と呼ばれるTの字を横にしたようなポジショニングランプのデザインとともに象徴的な表情を作り出している。
スタイリング全体の構成はまさに4ドアセダンの王道といった感じで奇をてらったところがないが、そこにひと目でボルボとわかる個性がほどよく表現されているあたりにデザイナーの上手さが感じられる。
上質で伸びやかなセダンは無条件でフォーマルに映るものだが、ボルボS90はそこにスカンジナビアンデザイン特有の品格もプラスされているのである。
ゴルフバッグ積載本数は2本
リアの荷室は足先をバンパー下に差し入れることで電動式の開閉機能を操作できるジェスチャーコントロールを備えている。容量自体は500リットルと充分なサイズを誇る荷室だが、ゴルフバッグを横方向に搭載できるほど荷室側面の壁が抉られていないことがネックとなっている。
実質的なゴルフバッグ積載本数は斜め方向に2本、分割可倒式となっているリアのシートバックの片方を倒せば縦に3本積み込むことができる。
いずれの場合もゴルフバッグ以外の荷物が入る余裕はたっぷり残されているので、大人3人でカントリークラブに向かうというシチュエーションにはしっかりと対応している。
ボルボS90は室内も、必要にして十分な広さを誇っている。足元スペースだけでなく、上質なナッパレザーが使用されているシート自体の大きさもたっぷりとしており、ボディサイズに見合っている。
エステートモデルに対するセダンの長所として、リアシートの静粛性が挙げられるが、元々走行音の静かなS90のリアシートはまさにエグゼクティブのためのサロンといった趣を持っている。
ダッシュパネルはおもな操作系が中央の9インチデュスプレイに集約されているおかげで外観と同じくすっきりとした見た目となっている。タブレットコンピューターのような縦型のタッチパネル式モニターは操作方法もタブレットに似ており、スワイプ操作で画面を切り替えることができる。
ここでナビやオーディオの操作のみならず、車輛のあらゆる設定を事細かに行うことができるのである。 運転席と助手席の間の太い梁のようなセンターコンソール上にあるスイッチをひねってエンジンをかけると、メーターナセル内に仕込まれた12.3インチのモニターにメーターとナビ画面が映し出される。
新世代ボルボはデザインのみならず、走りのテイストも独特の透明感に包まれている。以前のボルボはいかにも頑丈そうな、カチッとしたドライブフィールを特徴としていたが、ドライバーを楽しませるようなサービス精神は感じられなかった。だがS90は全長5m近いセダンでありながら、抵抗感の薄い軽快な走りを見せる。
4気筒エンジンを中核とするT6パワートレインだが、振動やノイズは極力抑えられている。スーパーチャージャーとターボ、そして8速ATやAWDシステムの賢い立ち回りによってパワーデリバリーは極めて上質なタッチに終始する。
発進から高速道路の追い越しまでアクセル操作ひとつで充分なパワーが溢れ、高速でも安定性の高さは揺るがない。
一方乗り心地は、しっかりと芯が感じられるシートの座り心地と似てボディとサスペンションともにカチッと硬い印象だが、それでも乗り心地は快適な部類に入り、長時間のドライブでも疲れない。
この手のサイズの国産セダンは乗り心地を重視するあまりステアリングやサスペンションがフワフワとして掴みどころのない感じに仕上がっていることが少なくないが、そこはヨーロッパで鍛えられたボルボらしく、走りの質感と乗り心地のバランスが絶妙にとられている。
安全性の高さこそ、セダンの絶対条件
ボルボ車の伝統ともいえる安全性は、車体自体の強度に由来するパッシブセーフティもさることながら、現行モデルは“インテリセーフ”と呼ばれる運転支援システムによって担保されている。
ボルボがいち早く日本市場に導入した自動ブレーキは、すでに事故発生率を69%も減少させる実績が確認されているのである。 日常に役立つ運転支援システムの代表はACC(アダプティブクルーズコントロール)で、これはゴルフコンペからの疲れた帰り道で非常に重宝する。
前走車との距離を一定に保って走るACCは、パイロットアシスト機能によってステアリング操作までカバーして車線の中央をキープし、渋滞にはまった時でも発進と停止を自動的に行う。その仕上がりの良さは、盤石のメルセデスや最近5シリーズの登場で完成度を高めてきたBMWと肩を並べる仕上がりといえるのである。
新世代ボルボ、そのフラッグシップ・セダンであるS90は、現代の自動車テクノロジーを牽引するドイツ車や日本車とは違った印象、タッチを誇り、安全技術のレベルは他の追随を許さない。
カントリークラブとの往復をすこぶる快適にこなすだけでなく、そこに伝統に裏打ちされた安心感が添えられることこそ、ボルボを選ぶ最大の理由といえるだろう。
Volvo S90 T6 AWD Inscription
メーカー希望小売価格:6,440,000円~(税込)
- ボディサイズ | 全長4,965 × 全幅1,880 × 全高1,445mm
- ホイールベース | 2,940mm
- エンジン |水冷直列4気筒DOHC 16バルブ
- 排気量|1,968cc
- 最高出力 |320ps( 235kW) / 5,700 rpm
- 最大トルク | 400N・m / 2,200-5,400 rpm
- Text : Takuo Yoshida
- Photographer : Koichi Shinohara
- Golf Course : Caledonian Golf Club
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問い合わせ先
ボルボ・カー・ジャパン
フリーダイヤル:0120-922-662http://www.volvocars.com/jp