テスラ、発展し続けるEVの旗手

それはアメリカという枠を飛び越え、広くEV(電気自動車)の代名詞として理解されている。シリコンバレー発の新興メーカーでありながら、すっかり自動車の新世代を指南する存在として認知されつつあるピュアEVメーカーのテスラ。同社のフラッグシップであるモデルSは、優れたEVであるという事実に留まらず、将来の完全自動運転を見据えた機能を内包した先見性の塊である。

室内の静粛性はロールス・ロイス級とも言える

テスラ・モデルS 100Dが加速していく最中の無音を何と表現したら良いのだろうか。

ロールス・ロイスの走行時の静粛性には「車内に響くのはキンツレ(車内時計)の音だけ」という有名な賛辞があるが、テスラのそれは異次元のレベルにある。ミシリとも言わないボディの剛性と、体をシートに押し付け続ける圧倒的なトルクの開放。

化石燃料を燃やして走るクルマとは異なる走りの質感が、エコロジーやエコノミーに留まらないEVの存在価値を無言のうちに訴えかけてくる。

テスラはアメリカ、シリコンバレー発のEV専業メーカーで、現在はフラッグシップ・セダンとなるモデルS、ガルウィング型のリアドアが特徴的なSUVのモデルXをラインナップする他、話題のミドルサイズ・セダンであるモデル3をリリースしたばかり。

自動車立国とも呼ばれる我が国でもEVは次世代自動車のメインとなるスタイルと言われ、すでに発売されているモデルも少なくない。だがテスラのそれは原初からEVであるというだけに留まらず、洗練された世界観を提唱しているという点において隔世の感がある。

モデルSの全長は4979m。メルセデスでいえばEクラスと同等サイズの4ドアセダンだが、リアのトランクがハッチバック状になっているので、ヨーロッパ的に表現するならば5ドアハッチバックということになる。

スタイリングは滑らかで室内は広々としているが、それでもEVを想像させるような先進的な部分はパッと見では窺い知ることができない。 ところが実際にドライバーズシートについてみると、いくつもの「?」が思い浮かびはじめる。

まずキーを指す穴がないし、スマートキーだとしてもスタートボタンに相当するものがない。実はテスラ・モデルSを発進させるには、ステアリングコラムから伸びるシフトセレクターでD(ドライブ)を選ぶだけで事足りるのである。

i Padのようなクルマ

室内で強い存在感を放つのは、センターコンソールに陣取った17インチのタッチスクリーンである。全てのテスラ車はこの巨大なi Padのようなモニターにナビやオーディオのみならず、車高の選択や運転モードのカスタマイズ、走行データの確認車輛設定、灯火類のオンオフ、回生ブレーキの強弱とバッテリー充電、テールゲートや給電口の開閉などあらゆる操作系が集約されている。

名実ともに「i Padのようなクルマ」という表現が似合うテスラ・モデルSなのだが、実際にソフトウェアをワイヤレス・アップデートすることで新たな機能が追加されていくという点ではデジタル・ガシェットに近い。

これまでも充電予約や衝突軽減ブレーキ、オートパイロット、スマホで車外から駐車を行えるサモンといった機能が追加されており、現在のソフトウェアはバージョン8.1まで進化しているのである。

テスラ・モデルSの本国デビューは2011年、日本市場では2014年からデリバリーされているのだが、これらのアップデートのお陰もあってEVの先進的な感覚は失われていない。またアメリカ車という観念を持って観察していった場合にも大雑把な雰囲気はなく、知的な見た目と滑らかな操作性、走りが入り混じったフランス車的な匂いすら漂う。

ちなみにモデルSという車名の後に追加される100Dというグレード名は、100という数字が100kWhのバッテリーを搭載していることを意味し、末尾のDはデュアルモーター、つまり車輛の前後にモーターを備えた4輪駆動モデルであることを示している。

都内から100Km圏内であれば航続距離に不安なし

EVと相対して誰もが真っ先に気に掛けるのは航続走行距離ではないだろうか。ちなみに100Dの場合はフル充電の状態で594kmを走行できるという。

ちなみにこれは時速100km/h、気温20°、エアコンオフという状態のデータであり、テスラのウェブサイトでは走行条件を変えた場合の航続走行距離をシュミレーションすることができる。

ゴルファーの使用条件に当てはめてみると、自宅に設置した専用充電器によって満充電の状態にした際の500km台という数字は、日帰りゴルフで往復する距離としても充分なものといえる。

しかも訪ねるカントリークラブや高速道路のサービスエリア等に充電設備が備わっていれば、航続走行距離に対する不安は完全になくなるはずだ。

一方、ラゲッジスペースは外観から想像するよりもはるかに広い。まず、開口部と床面積ともにたっぷりとしたリアスペースは4:6でリアシートバックを分割可倒することができるが、それに頼らなくても4本のゴルフバッグを積み込むことができる。さらに、フロント部分にもボストンバッグを4つ以上積み込めるスペースが確保されている。

セダン・タイプのクルマで4人分のゴルフ道具を余裕で搭載できるモデルは実は多くはないので、これはゴルファーズ・エクスプレスとしてのモデルSの優れた資質といえるだろう。

冒頭でテスラ・モデルSのドライブフィールを「無音」と表現したが、実際に走らせた際の第一印象として強く記憶されるのは独特の加速感だろう。

エンジン回転の高まりに比例してパワー感が高まるガソリン・エンジンとは違い、モデルS100Dのモーター駆動はスロットルペダルの踏みはじめから最大トルクが発揮され、4輪駆動によって猛然と加速する。だから、これまでのイメージでラフにスロットルを扱うと面食らうことになる。

それも当然で、モデルS100Dに搭載されるモーターの総計出力は400ps以上になるが、全域によるパワー開放によって体感出力は600psを軽く超えている。

BRUDER 編集がオススメするポイント

だがEV世界の旗手たるテスラの走行性能において、化石燃料を燃焼して走るライバルたちと比べた場合のアドバンテージは、エンハンスドオートパイロット(自動運転)機能にある。

ステアリングコラムに備わるレバーを2度引いてオートパイロットを作動させると、8台のサラウンドカメラと12個の超音波センサーによって目的地に向けた自動運転が開始される。

オートステアリングによって車線をキープし、必要とあれば車線変更も自動で行ってくれる。

現在は「ドライビングシスト」という形式をとるこの先進のオートクルーズ機能は安全な移動を約束してくれるが、オーナーにとって嬉しいのは今後のアップデートによって将来法規的に許可が下りるであろう完全自動運転もカバーしているという点だろう。

最後にテスラというEVベンチャーを、アメリカを代表する自動車メーカーにまで成長させたイーロン・マスクという男について記しておくべきだろう。

大学時代から起業しネットの世界で成功していた技術者、投資家の彼は、テスラに投資しCEOとなる以前から宇宙輸送を可能にするロケットを製造するスペースX社を運営するなどスケールの大きな人物だったのである。

長らくビッグ3と呼ばれる3大自動車メーカーによって支配されていたアメリカの自動車世界を覆すテスラの躍進は、EVの先進性だけでは到底不可能であり、イーロン・マスクの人並外れたバイタリティーによって下支えされていることは明らかである。

我々はポルシェ博士やエンツォ・フェラーリが会社を率いていた当初の勢いをライブで感じることはできない。

だが、イーロン・マスクが鞭を振るうテスラがかたち創る自動車の新時代を、今目の当たりにしているのである。

TESLA Model S100D
メーカー希望小売価格:12,038,000円(税込)

  • ボディサイズ | 全長4,979 全幅1,950 全高1,370mm
  • ホイールベース | 2,960mm

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問い合わせ先

テスラフリーダイヤル:0120-982-428https://www.tesla.com/jp/

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