周りを見渡せば簡単に正確な時刻が分かる時代だからこそ、腕時計を愛することに価値がある。腕時計はステイタスの対象であり、センスや人間性、趣味などが明確に表れる。今回紹介したいのは「大径ケースのドレスウォッチ」だ。優雅で大胆な大人のゴルファーには、小ぶりでおとなしい三針時計は似合わない。それを選ぶのは20年後でも充分だし、まだまだ自分を主張したいと思うのが本音だろう。シンプルで大径ケースのドレスウォッチは、伝統と革新を楽しめる腕時計であり、ゴルフ場へと向かう移動時間を楽しむ相棒としても最適である。
時計上級者は伝統と革新を遊ぶ
14世紀ごろから始まったとされる機械式時計の歴史だが、伝統を守りつつも時代の流れと共に大きさやデザイン、素材を変化させ革新を続けることで何百年も受け継がれてきた。機械式時計における王道は、シンプルなケースを持つ三針のドレスウォッチであることに異論はないだろう。シンプルな腕時計はシャツの袖口にスマートに収まるため、ビジネスシーンでは最高峰の時計として重用されている。しかしながらケースが小ぶりだと、あまりにも端正になりすぎて少々物足りなさを感じるのも事実だ。
そこで注目したいのがクラシックな王道三針ウォッチでケース径が40㎜以上という大径モデルたちだ。 この時計が生まれたのはごく最近のことで、腕時計をステイタスとして楽しみ自分のスタイルを表現するアイテムとして考える層が増え、端正にまとまったドレスウォッチが大径ケース化しアピール力を高め始めた。だからこそブルーダーは大径ドレスウォッチというトレンドを先取りしたい。それは一見するとシンプルなデザインを持つ正統派だが、大きいことでしっかりと目立つアクセサリー効果もありオンもオフも対応してくれる。つまり王道路線の伝統と現代的な革新を完璧に融合させた時計といえるからだ。これならシックなジャケットスタイルはもちろんのこと、カジュアルなニットスタイルでも適度に主張してくれるし腕元に存在感が生まれるので使い勝手がいい。しかも三針のドレスウォッチという価値は、決して廃れることはない。つまり一生モノの価値がある腕時計を楽しめるということになる。これは長い目で見ても意義のある買い物になるだろう。
華やかさを楽しむ
絶妙なサイズ感
時計市場において40mm以上というサイズは決して大きくはないが、それはあくまでもスポーツウォッチの場合だけ。依然としてドレスウォッチは小径がメインである。だからこそ大径のドレスウォッチには特別な魅力があり手首の上に端正に収まっているが、存在感があり目を惹き付ける華やかさがあるのだ。スーツはもちろんのこと、ニットなどカジュアルダウンしたコーディネートにも似合う。しかもケース径が大きい分、視認性にも優れているのでゴルフ場へとスポーツカーを走らせる際もしっかり時間をチェックできる実用性も嬉しい。
大きくなって見やすくなった伝統美
1755年に創業したジュネーブ屈指の名門時計ブランド「ヴァシュロン・コンスタンタン」は、歴史を感じさせるドレスウォッチを得意としているが、だからといって古典に落ち着くことはない。英語で“遺産”という意味を持つ「パトリモニー」コレクションは、優美にカーブするラウンドケースが特徴。老舗らしい優雅さがあるが、これが42㎜という大径サイズになると途端に雰囲気が変わる。ドレッシーながら、どことなく華がある時計に仕上るのだ。しかも大きく広がったダイヤルは外周部分をカーブさせるボンベ式を採用しており、美しい陰影を作り出すのも、大型したメリットといえるだろう。カレンダーは設けずスモールセコンドのみという割り切りは、王道ドレスウォッチらしい構成。しかしそこにケースサイズでモダンさを加える巧みなテクニックに、老舗の上手さを感じずにはいられない。
ケースサイド:ケースの厚みは7.65㎜なのでエレガントな雰囲気は残したまま、大径化することで優雅にカーブするケースフォルムがさらに際立つ。
ムーブメント:搭載するのは自社製のCal.4400 AS。大きなプレートに施したコード・ド・ジュネーブ仕上げは必見。ジュネーブに伝わる伝統的な技術を使っていることを証明する「ジュネーブ・シール」を取得している。
別格の薄さが生み出す
タイトな着こなし
スーツスタイルは、とにかくサイズが命。体に合ったジャケットやシャツを着ていなければ意味がない。こうなると大径ドレスウォッチは、その大きさが少々不利になるが「ピアジェ」を選べば問題ない。極薄ケースを作り続けてきたピアジェは、シャツの袖口との相性は完璧であり、大径ケースであってもすんなりと袖口に潜り込んでくれるので、スーツスタイルを崩すことなく旬な腕元が完成するのだ。
大径化によって際立つ個性
長年ムーブメント製造工房としてスイス時計業界を支えてきたピアジェは、1943年から自社ブランドの時計の製造を開始する。その際に武器としたのが“極薄ムーブメント”だった。ムーブメントが薄ければ、デザインに凝ってもエレガントさを失わないからだ。ピアジェが1957年に生み出したCal.「9P」は手巻き式ながら厚みが2㎜、そして1960年に完成したCal.12Pは、自動巻き式ながら厚みは2.3㎜しかない。このムーブメントを武器に、ピアジェは時計界の名門へとのし上がっていくのだった。その伝統は今でも丁寧に受け継いでおり、極薄ウォッチコレクション「アルティプラノ」はドレスウォッチの極みとして愛されている。そして極薄ムーブメントゆえにエレガントさが失われないという強みは、大径サイズであるほど効果を発揮する。ここに紹介するモデルはケース径が43㎜もあるのだが、ピアジェらしいエレガンスは残している。腕元に華やかさを連れてくる、とても特別な時計である。
ケースサイド:ムーブメントの厚みは2.35㎜しかなく、ケース全体も厚みも5.25㎜に抑えた。これだけの薄さを稼ぐために、ダイヤルを三段式にして、秒針、分針、時針のスペースを確保している。さらにラグの形状にも工夫を凝らし、腕馴染みを高めている。極薄ウォッチを作ってきたピアジェらしいディテールだ。
ムーブメント:搭載する自社ムーブメントCal.1208Pは、初代極薄自動巻きムーブメントの伝統であるマイクロローターを採用することで、厚みを2.35㎜に抑えている。しかも実用性も考慮して連続駆動時間は約44時間を確保。仕上げも美しく、ついつい眺めたくなる。
レクタングルケースの個性が
旬なアイテムを引き立てる
時計デザインの王道は懐中時計の時代から連綿と受け継がれるラウンドケースで、今でも市場の8割を占めている。しかし腕時計の時代に入ってから誕生した、レクタングル(長方形)ケースの人気も高い。レクタングルケースの魅力は、それ一発でこなれた腕元が出来上がるということ。つまりセンスを表現できるのだ。それゆえコーデュロイやオーバーサイズコートなど、トレンド感あるアイテムとも好相性。王道の中にも自分らしさを加えたいのなら、是非とも挑戦したいジャンルである。
伝統と技巧を秘めた優雅なレクタングルケース
1833年に創業したジャガー・ルクルトは、これまでに1250種を超えるムーブメントを開発してきた、スイス時計業界屈指の技巧派ブランド。そんな彼らの代表作が、1931年に誕生したレクタングルウォッチの傑作「レベルソ」だ。これはイギリス人将校が「ポロ競技中に風防が割れない時計が欲しい」というオーダーを受けて開発されたもので、ケースを横にスライドさせて反転させることができる。しかもデザインは、20世紀初頭のパリで人気を博した、アールデコというデザイン様式をベースとしており、普遍的な魅力がある。その為85年以上に渡って同じスタイルが守られ、今でも別格の人気を誇っている。レベルソには様々なバリエーションがあるが、時計好きであれば、ジャガー・ルクルトの技巧を堪能できる“デュオ”モデルがいいだろう。両面に時刻表示を備えており、ケースを反転させるだけでホームタイムとローカルタイムの使い分けができるだけでなく、ダイヤルの色も異なるためファッションに応じた使い分けも可能である。
ケースサイド:ケース本体と反転する部分の二重構造になっているため厚くなる。といっても9.2㎜に抑えているのは見事だ。ちなみに裏側の第二時間帯表示の針を動かす場合は、ケースをスライドさせると上部に現れるレバーを使用する。
ムーブメント:自社性のCal.854A/2を搭載。一つのムーブメントで両側の時分針を動かすとという高度な設計になっており、時計技術のレベルの高さをアピールしている。裏側のブルーダイヤルには、クルー・ド・パリ仕上げを施しており、6時位置には24時間表示も加わる。
- Text : Tetsuo Shinoda
- Photographer : Mitsugu Sakai【REP ONE】
- Direction : Keiichi Moritani
問い合わせ先
ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL.0120-63-1755http://www.vacheron-constantin.com/
ピアジェ
TEL.0120-73-1874http://www.piaget.jp/
ジャガー・ルクルト
TEL.0120-79-1833http://www.jaeger-lecoultre.com/