0-400-0km/h走行で世界最速の41.96秒を記録。ブガッティ「シロン」

1500馬力を誇るブガッティ・シロンが静止状態から400km/hに加速し、停止するまでのタイムアタックを敢行。41.96秒の世界最高記録を樹立した。この記録は検査・試験・認証・証明を行う世界的機関SGSのSGS-TUV Saarの監督下で行われ、正式に世界記録として認定されている。今回のアタックはF1モナコGPの覇者であり、インディ500を2回、デイトナ24時間レースを3回制したコロンビア人ドライバーのファン・パブロ・モントーヤがステアリングを握った。

テストが行われたのは今年8月。ブガッティ社からアタックドライバーに指名されたモントーヤはふたつ返事で快諾した。テストトラックに置かれたマシンのシートに収まると、トップスピードキーを入れ、トップスピードモードをアクティブに変更。これによりシロンは380km/h以上の走行が可能となる。モントーヤは左足をしっかりとブレーキペダルに固定し、ファーストギアに入れたローンチコントロールをアクティブに切り替えた。すると、スピードメーター横のデジタルディスプレイが指令を受信し、1500馬力が一気に目を覚ます。スロットルを踏み込むと、驚異的な加速でスピードを上げるシロン。この加速を可能にした低回転時の莫大なトルクは、ブガッティがこのマシンのために開発した2段階ターボチャージングシステムによるもの。スタート時からターボラグを感じることなく最大限に加速するため、シロンは最初に4つあるうちのふたつのターボチャージャーを稼働。約3800回転から4つのターボチャージャーがフル稼働する。

わずか32.6秒、距離にして2621mでシロンは400km/hに到達。驚愕の反応スピードでモントーヤはブレーキを踏み込む。0.8秒でブレーキ制御が働き、同時に幅1.50mのリヤウィングが49度に立ち上がる。このエアブレーキにより、シロンは効率よく減速。400km/hからのフルブレーキでクルマとドライバーに掛かる負荷は スペースシャトル打ち上げ時の感覚に近い約2Gに達するという。F1マシンを操るだけのフィジカルを持つ、モントーヤだからこそ耐えられたのだと言えるだろう。そして、 シロンが停止するまでにかかった時間はわずか9.3秒、距離は491mだった。 GPSに基づく計測システムを使用し、計測されたタイムは41.96秒。シロンが加速から停止までに必要とした距離は3112m。 これは前身のブガッティ・ヴェイロン16.4よりも、さらに速いことを意味する。

ブガッティ オートモビルズS.A.S.xのウォルフガング・デュルハイマー社長は、「0-400-0km/hのタイムをコンピューターでシミュレーションするだけでなく、我々は実際のマシンで走行した初めての自動車ブランドだ。他社は理論だけを展開しているが、ブガッティは現実に立証した。我々のカスタマーは“ベスト・オブ・ベスト”を求めている。この記録により、シロンが世界一のスーパースポーツだと印象付けられるはずだ」と、記録達成への喜びを語った。

アタックを担当したモントーヤは、スーパースポーツなのに一般的なロードカーと変わらずドライブできることに感激したという。「初めてシロンを運転する時、『落ち着け!どれだけじゃじゃ馬かわからないぞ』って思っていたんだ。スロットルを開くと、ターボチャージャーが動き出すのが聞こえ始めて、トルクがかかるのを感じた。シロンは息を飲むほど速い。素晴らしく安定していてコンスタントに加速する。それなのにブレーキングは驚くほど緩やかでね。このプロジェクトに参加できて本当に光栄だよ」今回の走行で、モントーヤはレーシングスーツやヘルメット、首や頭部をサポートする安全装備のHANSを、あえて身に着けなかった。「もちろんシロンはスーパースポーツだ。ドライブには最新の注意を払う必要がある。でも、同時に安心感や信頼も与えてくれるクルマなんだ。このチャレンジをするのに面倒な準備なんて必要なかった。本当に簡単だったよ。ただ乗って、走り出せばいい。シロンと一緒に過ごした2日間は本当にリラックスできたし、楽しかった」

「0-400-0km/h走行記録」はブガッティが目指す、2018年の世界最高速度記録への第一歩であり、昨年ワールドデビューを果たしたシロンにひとつの大きな勲章を与えることになった。ブガッティは2010年にヴェイロン16.4で記録した、431.072km/hを超える新しい世界記録に挑戦する予定だ。また、9月14日から24日に開催されていたフランクフルト・モーターショーの会場では、世界記録を樹立したシロンが一般にも公開された。シロンは500台の生産を予定しており、すでに300台のオーダーを受けている。

bruder.golfdigest.co.jp

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