西の海に沈む太陽を見ながら
私は育った。
もう帰らないといけないのに
いつまでもジーッと眺めていた。
茜色は刻々と深みを増していく。
ゴルフコースの写真を撮るようになって
そのようなシチュエーションのホールを
ずっと探していたのかもしれない。
もうコースにはプレーヤーも
メンテナンスの人もいない。
支配人には少し遅くなるかもしれないと言って
撮影用のカートを借りた。
昼間のうちに大体の目星はつけていた。
西側が海で、
ピンフラッグの向こう側は何もない
デイゴコースの2番。
今まさにドラマが始まろうとしている。
幼い頃に見た和歌山の海を想い、
春に見たRoyal Liverpoolでの風や、
秋に訪れたPebble Beachの波の音、
いろいろなことがフラッシュバックした。
やっと世の中が動き出したこの夏。
久しぶりに日焼けした自分に驚く。
夏の終わりのハーモニー。
宮本 卓Taku Miyamoto
1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。