新型「レンジローバー」の秀逸なデザインと極上の乗り心地

フルサイズのラグジュアリーSUVにおいて究極の一台を挙げるとしたら、2021年10月にフルモデルチェンジした6代目「レンジローバー」を候補に推したい。今回はディーゼルエンジンの「オートバイオグラフィーD300」に試乗して、そう感じた理由を紹介しようと思う。

新型レンジローバーには、これまでと同じく「スタンダード」と「ロング」という2種類のホイールベースが用意されている。パワーユニットは4.4リッター・V8ガソリンエンジンと、3.0リッター・直6ディーゼルMHEV(マイルドハイブリット)の他、2種類のガソリン直6 PHEV搭載モデルの受注もはじまっている。

今回の試乗で、新型レンジローバーをひも解く鍵を1つずつ発見できた。まずはエクステリアだ。歴代のレンジローバーはいかにも英国王室御用達の伝統的な高級車という重厚感を特徴とし、デザインの新鮮さで勝負するようなモデルではなかった。その点、新型は伝統なシルエットの中に先進性を加えたスタイリングが注目を集める一台に仕上がっていた。

フロントマスクこそ先代とあまり大きく変わっていないものの、ボディサイドはドアハンドルや窓まわりのゴムすら気配を潜めるフラッシュサーフェイス(車体表面の凹凸をなくす)が徹底されている。一方リアエンドは、上下に開く伝統的なテールゲートは踏襲されているが、赤く光るランプ類全てが黒いレンズユニットの中に隠されるなど、デザインの構成要素を減らすことで未来的な表情を身につけていた。

ワインディングや高速道路での “極上のフラットライド”は、ラグジュアリーSUVの常識を塗り替えると感じた。新型レンジローバーは当然のように電子制御エアサスペンションを装備しており、車高や乗り心地が細かくコントロールされている。さらに、電動スタビライザーや後輪操舵といった、ここ数年でメジャーになりはじめたテクノロジーが脇を固めている。だが重要なのは最新の機構を満載していることではなく、その秀逸なドライブフィールの中に、ハイテク由来の不自然さが全く感じられない点だ。

車重は2600kg近く、全高は1900mm弱ある。にもかかわらずワインディングではキレイにロールが抑え込まれ、ドライビングモードに関わらずしっとりとしていて乗り心地が良く、後輪操舵によって小回りも利く。その上質な走りからはプラットフォームを完全に刷新した効果がはっきりと感じられた。

今回試乗したD300は新型レンジローバーのパワートレーンの中では最もリーズナブルな位置づけとなる。とはいえ、最新のディーゼルMHEVは低回転からトルクフルで、アイドリングストップからの再始動も非常に静かに行われるので全く不満はなかった。

走りの質感はパワートレーンよりもシャシー側の完成度によって決定づけられていると感じた。今回試乗したオートバイオグラフィーD300でも、ラグジュアリーSUVの最高峰らしさは十二分に感じられるということを強調しておきたい。

ランドローバー レンジローバー オートバイオグラフィーD300   車両本体価格: 2031万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 5065 X 全幅 2005 X 全高 1870 mm
  • ホイールベース | 2995 mm
  • 車両重量 | 2580 kg
  • エンジン | 直列6気筒 ターボ MHEV
  • 排気量 | 2993 cc
  • 変速機 | 8速 AT
  • 最高出力 | 300 ps(221 kW) / 4000 rpm
  • 最大トルク | 650 N・m / 1500 - 2500 rpm
  • 最高速度 | 218 km/h
  • 0-100 km/h | 6.8 秒

Text : Takuo Yoshida

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