現代では、スポーティな走りを存分に楽しめる“ピュアスポーツカー”と呼ぶべきクルマは数えるほどしかない。その筆頭ともいえるアルピーヌ「A110」に、魅力的な新グレード「A110 GT」が追加された。実際には、A110シリーズ全体がマイナーチェンジをした一連の変更の中で、ラグジュアリーな仕立ての中間グレード「A110リネージ」がA110 GTへと生まれ変わったのだ。 今回のマイナーチェンジのトピックはふたつある。ひとつめは、A110 GTを含むハイパワー版エンジンの最高出力が292psから300psに引き上げられたこと。もうひとつは、インフォテイメントシステムがアップルカープレイやアンドロイドオートに対応したことである。 マイナーチェンジに関係なく、A110シリーズにはそれぞれ2種類のシャシー設定とエンジンスペックが存在している。シャシーは標準の「シャシーアルピーヌ」と、少し硬めのスプリングでサーキットもカバーする「シャシースポール」。エンジンは、1.8リッター4気筒ターボで、ベーシックな252psと高出力な300ps版が用意されている。
以前はこれらの組み合わせにセオリーが存在していた。シャシーアルピーヌはベーシックエンジン。一方のシャシースポールには高出力エンジンというかたちで振り分けられていたが、今回のA110 GTでは、そのセオリーが破られている。しなやかなシャシーアルピーヌと、最強の300psエンジンというこれまでにないマッチングになっているのである。 また、A110 GTはシリーズで唯一、リクライニング可能なシートを装備するなど、比較的ラグジュアリーな仕立てが施された。このクルマのキャラクターは、その名の通りGT(グランドツーリング)にある。ラグジュアリー+ハイパワーエンジンの組み合わせは、果たしてどのような化学反応をもたらすのか? 山道でステアリングを握った第一印象は「軽い!」だった。これは、4年ほど前にデビューしたばかりのA110で感じたものと同じだが、新鮮さは相変わらずだ。
一方コーナーからの立ち上がりは、300psエンジンのおかげでリアタイヤに荷重がしっかりと掛かる感覚が増して、明らかにパワフルな印象だが、それでもアルピーヌというブランドの核とも言うべき軽快感は少しも薄れていない。 これまで高出力エンジンはフロント215mm、リア245mm幅という太めのタイヤと組み合わされていた。ところがA110 GTのタイヤは、前後ともベーシックサイズ(フロント205mm、リア235mm)のまま。太いタイヤはグリップ力こそ高まるが、同時に抵抗も増えてしまうので、サーキットのような場所に持ち込まない限りメリットは少ない。 300psユニットを得て十分なパワーを備えながら、ハンドリングはこれまでのアルピーヌらしく、すっきりとして軽快。そんなA110 GTならではのキャラクター作りには、タイヤサイズも貢献しているのである。
ワインディングはすこぶる軽快で楽しいA110 GTだが、本来の目的であるロングツーリングを速やかに、より楽しく、しかも柔らかめのサスペンションで快適にこなすことができる。ピュアスポーツカーでありながら、ストイック過ぎない。そんな独特なポジショニングこそA110 GTの魅力なのだ。 引き締まって見えるボディには、フロントに100リットル、リアに96リットルという実用的なラゲッジルームを備えている。それでもキャディバッグは助手席に寝かせるしかないので、現実的にはひとりでゴルフ場を目指すためのクルマといえる。だがA110 GTは、そんなデメリットを補って余りある「ドライブする魅力」にあふれた一台だと思う。 SUVとアルピーヌの2台持ち(!?)こそ、クルマ好きゴルファーの理想的なラインアップかもしれない。
アルピーヌ A110 GT 車両本体価格: 893万円(税込)
- ボディサイズ | 全長 4205 X 全幅 1800 X 全高 1250 mm
- ホイールベース | 2420 mm
- 車両重量 | 1120 Kg
- エンジン | 直列4気筒 DOHC ターボ
- 排気量 | 1798 cc
- 変速機 | 7速 AT(7DCT)
- 最高出力 | 300 ps(221 kW) / 6300 rpm
- 最大トルク | 300 N・m / 2400 rpm
- 最高速度 | 250 km/h
- 0-100 km/h | 4.2 秒
Text : Takuo Yoshida
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