旅する写心 〜New World Symphony

一昨年に開場100周年を迎えた鳴尾ゴルフ倶楽部は
今年1月からグリーンの全面改修工事を行っている。
古くなった排水溝の修理、
年を重ねるうちに小さくなってしまうグリーンの回復。
そしてグリーンの芝を「ナルオターフ」に替える。
ナルオターフ? その発見は偶然だった。

数年前からグリーンの中に
色が違う異質な芝が混じるようになった。
「もしかしたら新種の芝かも」と思い
鳥取県の芝生産組合に調査・培養を依頼。
その後の鑑定の結果、
日本固有の高麗芝のDNAを持つ新種と判明。
葉幅が細くて柔らかい上、密度が高いという
グリーンに適した高麗芝だとわかった。

オーガスタナショナルGCが
バミューダ芝からベント芝に替えたのは1981年。
その頃から日本でもベント芝が大流行。
それまで日本の気候に適した高麗芝が使われてきたが
グリーンの高速化を追求するようになり
西洋芝に張り替えるコースがほとんどとなった。

しかし、近年の世界的な地球温暖化により、
高温多湿に強い高麗芝に再び光が当たり始めた。
高麗芝の弱点であるスピードを克服し、
なめらかな転がりのナルオターフ。
グリーンキーパーの上村さんは
「四季を二度越えないとわからない部分も多い」と慎重だが
グリーンの仕上がりには手応えを感じている。

100年が経つ歴史の重みを感じながら
伝統を守りながらも
新しいことにチャレンジしていく姿勢が重要だ。
再オープンは10月1日。
鳴尾ゴルフ倶楽部は新たな100年に向けて歩み始めた。

宮本 卓Taku Miyamoto

1957年、和歌山県生まれ。神奈川大学を経てアサヒゴルフ写真部入社。84年に独立し、フリーのゴルフカメラマンになる。87年より海外に活動の拠点を移し、メジャー大会取材だけでも100試合を数える。世界のゴルフ場の撮影にも力を入れており、2002年からPebble Beach Golf Links、2010年よりRiviera Country Club、2013年より我孫子ゴルフ倶楽部でそれぞれライセンス・フォトグラファーを務める。また、写真集に「美しきゴルフコースへの旅」「Dream of Riviera」、作家・伊集院静氏との共著で「夢のゴルフコースへ」シリーズ(小学館文庫)などがある。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員。

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