100年に一度の大変革期を象徴するBMW「4シリーズ」

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BMW「4シリーズ」の最高性能版であるBMW「M440i xDrive クーペ」は、古典的なクルマの楽しさと、未来のクルマの可能性が共存している、実に興味深いモデルだった。 外観は、エレガントなクーペのスタイル。発表時に話題となった縦長のフロントグリルは、1930年代のBMW「303」や第二次大戦後のBMW「501」といった、歴史的な名車を連想させる。

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エクステリアがクラシカルな雰囲気であるのに対して、インテリアはデジタルの世界だ。液晶のメーターパネルは速度やエンジン回転のほか、さまざまな情報を呼び出すことが可能で、たとえば目の前にカーナビの地図を配置することもできる。 また、操作系をタッチパネルに集約することでスイッチ類が大幅に削減され、インテリアはすっきりとモダンになった。

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スターターボタンを押して3.0リッターの直列6気筒ターボエンジンを始動すると、重低音の効いた排気音が響く。最高出力387psだから速いことは間違いない。けれども走り出して抱く感想は、繊細なエンジン、というものだ。

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回転フィールが感動するほどに滑らかで、BMWの直6エンジンが“シルキー シックス”、つまり絹のような手ざわりだと称賛されてきたことが納得できる。レスポンスも抜群で、右足の親指の付け根にちょこっと力を入れるだけで、敏感に反応する。だからガバッとアクセルペダルを踏み込むより、丁寧に扱ってエンジンの表情の変化を楽しみたくなる。 電動化の時代であるけれど、エンジンっていいな、と思えるし、これが内燃機関の完成型ではないかとも思う。

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これだけのパワーが与えられたスポーティモデルだと、足まわりが固められているのが常識だった。けれども技術の進歩とともに、フェラーリもポルシェも、鋭いハンドリングと快適な乗り心地を両立するようになっている。 BMWもそうしたトレンドの例に漏れず、市街地や高速道路を流している限り、乗り心地の硬さや粗さをまったく感じさせない。4本のサスペンションがしなやかに伸び縮みして、路面からのショックを吸収してくれる。

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ただし、スポーツモードをセレクトすると、事態は一変する。 まずエンジンは高回転をキープするようになり、排気音もバラバラという音が混じったワイルドな音質に変化する。シームレスに変速していた8段ATも、シフトが素早くなるのと引き換えに、多少のシフトショックを伝えるようになる。足まわりもビシッと引き締まり、クルマ全体がレーシングカーのような雰囲気をまとう。優雅に走っていた最新のプレミアムカーがいきなり野蛮なスポーツカーに変身する振り幅の大きさが、このクルマの特徴だ。

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BMWのMモデルについて説明を加えると、“M”を冠するモデルにはふたつの種類がある。ひとつは「M3」や「M4」などのMハイ パフォーマンスモデルで、「公道も走れるレーシングマシン」という位置づけだ。一方、今回試乗したM440iは、「サーキットも走れる高性能車」であるMパフォーマンス モデルにカテゴライズされる。たしかに、スポーツモードに入れたときの切れ味の鋭さは、サーキットに連れて行きたくなるタイプのものだった。

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サーキットやワインディングロードでへとへとになるまで走ったら、帰り道でこのクルマはまた別の顔を見せてくれる。 前を走るクルマに追従して、ハンドルから手を離せるハンズオフ走行も可能なのだ。コーナーに合わせて自動でハンドルを操舵する様は滑らかで、安心して任せることができる。現状ではまだ運転の主体はドライバーだけれど、自動運転に近づいていることは間違いない。

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ちなみに音声認識はほぼ完璧で、「こんにちは!」と呼びかけると、「ご用件をどうぞ」と答えてくれる。聞きたい曲の名前をあげると、すぐに耳に覚えのあるイントロが流れてきた。クラシックなクーペの美しさと未来的なインターフェイス。駆け抜ける歓びを浴びるほど楽しめるスポーツカーの魅力と、半自動運転の安楽さ。一台の中に、現在、過去、未来のクルマの歴史が詰まっているという、100年に一度の大変革期を象徴するモデルだ。

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BMW M440i xDrive クーペ   車両本体価格:10,380,000円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4775 X 全幅 1850 X 全高 1395 mm
  • ホイールベース | 2850 mm
  • 車両重量 | 1840 Kg
  • エンジン | 直列6気筒 DOHC ガソリン
  • 排気量 | 2997 cc
  • 変速機  |8速 AT
  • 最高出力 | 387 ps(285 kW)/ 5800 rpm
  • 最大トルク | 500 N・m / 1800 - 5000 rpm
  • 最高速度 | 250 Km / h
  • 0 - 100 km/h| 4.5 秒

 

  • Text : Takeshi Sato

お問い合わせ先

  • BMW カスタマー・インタラクション・センター:0120-269-437

    www.bmw.co.jp
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